第91話

「おっちゃん、これって何から出来てるんだ?」


念のため確認しておく。


「作り方は秘密だが、材料は甘いイモから出来てるから口に入れていい物だ。疲れが吹っ飛ぶ酸っぱさだよ。」


やはり正解のようだな。


それじゃ後はミスリルを買った鉱石屋に行ってみるか。

ミスリルを買った時にそれっぽいのがあったしな。

ロッタスは鉱山の近くに大きな湖もあるからもしかしたらとは思っていたが、その時はもう一つの材料に当てがなかったのでよく確認もしなかった。


粉を買った店を後にして、鉱石屋に行く。

目当ての物は‥あった。


灰白色の鉱石で用途がないためなのか、かなり安価で売ってある。


「どうもお久しぶりです。」


鉱石屋の店主は挨拶をした俺を見るなり訝しげな表情をする。

しばらく俺の様子を伺っていたが、俺が1人だとわかると急に笑顔になった。


「いらっしゃいませ。今日はお一人様ですか?」


「はい今日は一人できました。」


う〜む、ここまで警戒されるとはキリーエの値段交渉がどれほどだったのか物語ってるな‥


「そうですか。それで今日は何をお探しで?」


揉み手でススっと近づいて来た。

ちょっとキリーエを呼んでみたい気もする‥


「今日はあの灰白色の鉱石を買いに来ました。」


店主は俺が指差した方を見ると明らかに落胆した顔をする。


「あちらの鉱石ですか?あれは使い道がないので、お安く売ってますよ。室内に飾るくらいしか出来ませんし。大量に買ってくれるならさらにお安くしますよ。」


相当売れないんだろうな。

値札もかなり安いが、使い道ないけど大量に買うならさらに安くするよって‥

しかしその方が助かるな。

今後キリーエ次第では大量に買う事になるかもしれないし。


「今回は少しでいいです。でも多分また来る時は大量に買うかもしれないので、その時はよろしくお願いしますね。」


店主はまた買いに来るとは思っていないのだろう、残念そうな表情をしている。


ミミウとキリーエ次第ではもっと買うと思うけど、その時はキリーエも来ると思うので商品の確保と気持ちの覚悟をしてくれるよう祈っておこう。


材料を買った後に宿に戻り、宿から許可を得て庭で作業を行う。


湿った薪の上で先程買った鉱石を熱する。

熱した事でパラパラと崩れるようになった粉を乾燥させ不純物を取り除く。


アキーエが戻って来たので、念のため判別をしてもらうと予想通り『トロナ鉱石』だった。


作った粉を少量冷水に入れてかき混ぜる。

粉が溶けたところで疲れが取れる魔法の酸っぱい粉を入れる。

すると水の中に気泡ができ始める。


炭酸水の出来上がりだ。

少しハチミツを入れて飲みやすくしてみるか。


さて、後はミミウが帰ってく‥


「これ飲んでもいいんですぅ?」




「‥‥!」


死ぬ程びっくりした!

声にならない叫びを上げてしまった。


ミミウさん‥

食べ物絡みだと恐ろしい程の技能を発揮しますな‥


「今度は飲み物なのね!ホットケーキと一緒に売り出したら売れそうやね!」




「うわっ!」


また死ぬ程びっくりしたっ!

情けないけど今度は声もあげてしまった。


「ど、どうぞ。」


びっくりし過ぎてそれしか言えなかった‥

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