第90話
「もう!ノギスったら何なのあの態度!ごめんなさいマルコイさん。ほんっとに子供っぽいんだから。多分マルコイさんが高ランク冒険者だから嫉妬してるんだと思います。後できつく言っておきますね。」
ふっふっふ。
残念だったなノギス君。
君の気持ちは全くナーシスには伝わっていないぞ。
恋に必要なのは、かけ引きなんだよ。
俺はスキル【異世界の知識】によって異世界の恋愛事情にまで精通しているのだ。
なので俺くらいの恋愛マスターになると、相手がどんな思いを持っているかすぐにわかるってものだ。
はっ!
ど、どこかでアキーエがせせら笑っているような気がするっ!
俺がキョロキョロと周りを窺っていると何故かにこにこしながらナーシスが近づいてくる。
「今日はこれからサミュウさんの所に行くんですか?」
「ああ。少し仕事をする予定だからな。」
「そうなんですね。あっ!そう言えばアリアが用事があるって言ってたので、お暇な時にでも顔を出してあげてください。」
アリアの用事?素材の採取だろうか‥
「わかった。近い内に寄ってみるよ。」
「ありがとうございます。それじゃよろしく頼みますね。」
パーティメンバーが先に行った様で、話し足りなさそうにはしていたがナーシスは追いかけて行った。
ナーシスは最近よく笑うようになったな。
最初は謝ってばかりだったけど。
あと笑い方がとても優しくなった。
誰かに恋でもしているのかな‥?
むっ!
アキーエのため息が聞こえたような‥
その後サミュウさんの所に寄ってダマスカス鋼のインゴットを作製した。
最近サミュウさんは刃先だけではなく、他の職人とも協力して軽鎧の作製にチャレンジしているようだ。
ダマスカス鋼を全面に使った鎧は作製が難しいようで、結果軽鎧になったみたいな事を言っていた。
完成したら買わせてもらうようお願いしたら、試作品にはなるけど無料提供してくれるらしい。
無料って素晴らしいよね。
キリーエも時々来ているそうで、商品に関してはもの凄い売れ行きで受注が追いつかないとか。
これほどまでに売れたのはダマスカス製品の品質の良さは勿論のこと、キリーエの商人としての能力の高さがあるからだろう。
ただサミュウさん曰く、時々商品を見ながら「‥‥材料費については安価で人件費はマルコイさんがこのくらいで、サミュウさんが‥純利益が‥うひひひひひ‥」
とか聞こえてくるので少し怖いと言っていた。
そこは生暖かい目で見ていてもらおう‥
サミュウさんの手伝いも終わり宿に帰る途中、市場に寄る事にした。
時々面白いものが置いてあったりするからな。
しかし今日は食材などはいつもと変わらず目新しい物はないようだ。
帰路に就こうとした時にある店の商品が目に入る。
疲れたとには酸っぱいものを!粉末ありと書かれた看板があった。
もしかしてミミウと約束した品物かもしれないと思い店に立ち寄る。
「お?お兄さん一つどうだい?うちは疲労回復の魔法の粉を売ってるんだ。」
響きが怪しい‥
「疲れている時は酸っぱい物を摂ると回復するだろう。しかし酸っぱい果実なんて荷物になるから持っていけない。そんな時にこの粉なら場所を取らずにたくさん持っていけるぜ!どうだい?」
「一つもらおうかな。」
俺の予想が正しければスキル【異世界の知識】にあるあの材料だと思うが‥
試してみないとわからないな。
そう思い商品を多めに買うことにした。
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