第89話

闘技会は約一ヶ月後に開催予定との事だった。

そのため、それまでの時間は討伐依頼と自由時間の半々とした。

俺がサミュウさんの所にダマスカス鋼の作製に行ったりアリアの店に行ったり忙しくしていたため、皆が気を遣ってくれたのだ。

今日もサミュウさんの作業場にお邪魔して作業をする予定だ。

ちなみにサミュウさんの商品はキリーエに大部分をおろす事になったそうだ。

商品を作るのは一流だが、お店の経営は元々些か不安があったようで今回の件でお店には最低限の品を置いて、作製作業をメインでやっていくそうだ。

実は今回の件も俺が持って来た話のため、売上の何割かがパーティ資金に入っているそうで俺のやる気も爆上がりだ。


商品はホット商会が扱う事になっており、キリーエが首都を離れても運営できるようにしているそうだ。

流石キリーエ。


サミュウさんの作業場に向かっていると、向こう側から見知った顔がやってくる。

ナーシスだった。


「マルコイさんっ!お久しぶりです。」


ナーシスとはアリアと共にご飯などを食べに行くような関係になっていた。

ナーシスもだが、アリアの話も面白くて俺のちょっとした息抜きになっている。


「ナーシス久しぶりだな。今日はパーティで活動してるのか。」


俺は駆け寄って来たナーシスの後ろから歩いてくる男女に目を向けて尋ねる。


「はい。私のパーティメンバーで、Cランクパーティの『狂乱の剣』の皆さんです。」


おいおい‥

随分と物騒なパーティ名だな。


「みんな、この人が私がお世話になってるBランク冒険者のマルコイさんです。」


「あ、この人か〜。ナーシス、意外とイケメンじゃない!」


薄い茶色髪をした猫みたいな女の子が嬉しい事を言ってくれる。


「少し眠そうだけど。」


それ以外に俺の表現はないのか‥

今度から目をいっぱいいっぱい開けておこう。


パーティメンバーを見ていると1人こちらを睨みつけるような目で見ている男の子がいる。

多分ナーシスと同じ歳くらいなんだろうけど、さっきまでは普通だったのにナーシスが俺の事を紹介したとたんに目つきが鋭くなったな。

確か会うのは2度目のはずたが‥


「あんたがマルコイさんか。確かにドラゴン退治でも目立ってな。ナーシスが随分とお世話になってるようで。あんた闘技会に出るんだろ?俺も出るからよろしく頼むな。」


彼はそう告げると、そのまま先に進んでいった。


「ボコボコにしてやる‥」


何か物騒な事を言っているな。


なるほど彼がCランクでギルドから推薦される冒険者か。

しかしなぜここまで好戦的なんだろう?

恨まれるような事をした覚えがないのだが‥


すると先程の猫っぽい女の子がこちらに寄ってくる。


「あいつノギスって言うんだけど、実はナーシスに惚れてるんだよね。でもナーシスがあなたの話ばったりするから。それで闘技会にあなたが出るって聞いて、参加するって決めたみたい。」


なるほど。

これは負けれません。

ナーシスの事は妹みたいに思ってるから、お兄さんとしては相応しいかどうか見極める必要があるからな。


「あいつがナーシスに惚れてるのはナーシス以外は知ってるんだけどね。あと、あいつ見かけより強いから気をつけた方がいいよ。」


確かに希少スキルって言ってたもんな。

少し楽しみだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る