第39話
「俺たち王都を離れようと思ってます。」
その後しばらくの沈黙が流れる。
「また急ですね。何か用事が出来たのですか?」
サベントさんは少し眉を顰めて聞いてくる。
「単純に強くなるためですよ。魔族と戦って自分の実力を思い知らされました。」
「王都では強くなれないと?」
「そうは言いません。しかし今までモンスター相手に戦ってスキルを磨いてきましたが、相手が魔族となると話が違ってきます。対モンスターの強さではなく、対魔族の強さが必要になると思います。だから対人戦での強さを得るために獣人国に行きます。」
「なるほどですね。」
サベントは諦めたかのように溜息をつく。
「わかりました。本来冒険者は自由な稼業ですからね。私が引き止める事は元々できませんから。」
「すいません。」
「でもマルコイさんは一つ私に借りがありましたよね?」
サベントさんは笑顔が張り付いたいつもの顔でこちらを見る。
「そ、そうでしたね‥」
美人の作り笑いは怖いとしか言いようがない‥
「ふふ。そうですね、もしマルコイさんが秘密を話す気になった時は、私に1番に教えて下さい。それで貸し借りなしにします。」
そう言うとサベントさん先程までの作り笑いじゃなく、花が咲くような素敵な笑顔をしていた。
ふぅ、何をさせられるかと思ったけど、それくらいなら大丈夫だ。
ただ王都に戻ってくる事は約束させられたみたいな感じだな。
しかし作り笑いじゃなくて、本当に笑ってるサベントさんは初めて見たかも。
エルフだし長命だから、ずいぶん歳上なんだろうけど、とても可愛らしい印象を受けた。
アキーエから脛蹴りも受けた‥
応接室を退出しギルドから出ようとするとバーントから声がかかる。
「おうマルコイ!Cランク昇格おめでとう!まさかこんなに早くCランクになるとは思わなかったぜ。」
「ありがとうバーントさん。一応バーントさんにも報告しとく。俺たち近々王都を離れようと思ってる。」
突然の俺の報告に目を丸くするバーント。
「‥‥そうか。問題児だったが、いなくなると思うと寂しくなるな。」
「心配するな。さっき置き土産で受付に美人を入れてもらうようにサベントさんに直談判してきたから。」
「そんなお土産いらないよっ!おじさんは受付の仕事譲らないよっ!おじさんは死ぬ時は受付の机に突っ伏して死ぬんだからっ!」
いろいろあったけど、王都を守れて本当によかった。
でも次も守れるって保証はない。
もっと強く、それこそスキル【勇者】に頼る事なく魔族を倒せるようになりたい。
「よしっ!今日は俺が奢るから飲みに行くぞ!」
バーントさんが鼻の穴を膨らませて言ってきた。
「いいのか?」
「任せろ。こう見えてそこそこ稼いでるからな。」
俺はパーティの食いしん坊さんを見てみた。
すでにヨダレが滴っていた。
「じゃあお言葉に甘えて。」
うちの食いしん坊さんは相変わらずの食べっぷりだった。
会計の時に涙目だったバーントさんが印象的だった‥
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