第38話
魔族との戦いで強くなれたのは、模倣していたスキル【勇者】が発現した事によるものだ。
それはわかる。しかし何故急に発現したのか‥
「スキル【勇者】は魔族に対してのみだとは思うけど、魔族と敵対してる時は急激に全ての力が上がるスキルだった。」
「これについてはスキル効果として説明できるんだ。多分伝承に残っている過去の勇者とかは、このスキル【勇者】のレベルが上がる事で魔族だけではなく、魔王とも戦う事ができたんじゃないかな。でも俺が模倣したスキル【勇者】は今の模倣スキルのレベルでは発現できなかったんだ。でも魔族にやられて動けなくなった時に、頭に模倣スキルを使った時の声が聞こえたんだ。『著しい身体能力低下を確認しました。周囲に魔族を確認。模倣スキル【勇者】を一時的に開放します。』てね。そして発現時間は120秒。開放時間が過ぎたら動けなくなる程の疲労感と全身に痛みが走った。本来使えないスキルを無理矢理使った反動みたいだった。」
「それはマルコイを守るために発現したんでしょ。おかしな事ないんじゃない?」
アキーエが不思議そうな顔でこちらを見ている。
うん、くんかくんかしたい‥
睨まれた‥
「ただのスキルがそこまで判断するなんて聞いたことない。スキルが自分の身体の状況を把握してるって事だよ。いくら他にないスキルと言ったって、それで済ませられるレベルじゃないだろ。あまりに俺にとって都合が良すぎて気味が悪い‥」
「それこそ‥誰かの意図が絡んでるような、まるで俺が死んでもらったら困るみたいな気がしたんだよ。」
そう。まるで都合が良すぎる。死ぬところだったから、スキルに助けられた事は感謝している。
自分が得たスキルの優秀さに、感謝こそしても、なくなればいいなんて思ってはいない。
しかし今回の件についてはあまりに不可解すぎる。
「でもスキルは魂に結び付かれたものでしょ?そんな物を誰かが後からどうにか出来るもんじゃないでしょ。それこそ産まれる前からの話になるわよ。そんな事できるなんて女神様でもない限り無理だわ。」
確かにアキーエの言う通りだ。
女神でもなければスキルに細工なんて出来やしない。
もし持って生まれて来るスキルを変える事が出来るのなら、スキルで人生が決まってしまう事もないしな。
「それはそうなんだけどさ、なんか釈然としなくてね‥まぁ、でもあんな思いは2度としたくないから、検証したくてもできないんだけどね。」
自分が保持しているスキルなんだから、自分を害するような事はないと思ってはいるんだけどね。
「ほら暗い顔しないっ!せっかく強くなるためにこれからする事も決まったんだし。決起会でご飯でも食べに行きましょう!」
確かに今はわからない事を考えてても仕方ないか‥スキルレベルが上がればわかる事もあるだろうし、獣人国に行ってから考えよう。
マルコイはとりあえずミミウからびちゃびちゃになったハンカチを回収してご飯を食べに行った。
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