第32話

「魔法が使える者は準備をしろ!射程に入ったら随時放て!前衛は魔法の射線を塞ぐなよ。同士討ちになるぞ!魔法使いは放ち次第後衛に戻り各パーティで各個撃破を心がけろ。」


俺とミミウはアキーエの横に位置取り先頭近くに移動する。

そしてモンスターとの距離が500メートルを切った頃にアキーエが杖に魔力を込める。


射程が長いランス系の魔法が放たれ始める。

さまざまな色のついた属性魔法がモンスター目掛け飛んでいっている。


そしてアキーエの前に1メートル程の火の塊が2つ現れる。


「爆炎球!」


モンスターとの距離が200メートル程になった時にアキーエの魔法が放たれる。


2つの火の塊はモンスターに向かって放たれ、着弾すると爆炎となって辺りを焦がす。


離れてはいるがこちらまで熱気が伝わってくる。


爆炎に巻き込まれてかなりの数のモンスターが行動不能になった。しかしその動けなくなったモンスターを踏みつけながらものすごい数のモンスターが進んでくる。


「アキーエ一旦ミミウの後ろに。」


アキーエが下がるのを確認してモンスターの動きを確認する。


これだけの数のモンスターだ。最初の魔法はほぼ命中しているようだが、モンスターは意に介さず突き進んでくる。


そして‥


騎士団の前衛とモンスターがついに衝突した‥




騎士団とモンスターが戦い始めてすぐにマルコイの周りも乱戦となった。


マルコイたち3人は極力離れずに連携して戦っていた。


「マルコイ!右から来てるわ!」


アキーエは魔法を放ちながらこちらに向かってくるフォレストウルフ3匹に対して警戒の声を上げる。


「ミミウ!」


ミミウはフォレストウルフの前に立ち3匹にまとめてシールドバッシュを放つ。


吹っ飛んだフォレストウルフは他の冒険者がトドメをさしていたので、左から向かってくる中型のキラーベアを迎え撃つ。


「光矢!」


光の矢はキラーベアの左眼に当たりキラーベアはたたらを踏む。

懐に潜り込み腹部を斬り裂く。

腹部を庇うような姿になり頭が下がった所にミミウのウォーハンマーが命中する。


トドメをさしたキラーベアの後ろからウルフ系のモンスターがミミウに飛びかかってきた!


甲高いガラスが割れるような音を立てて、ウルフ系のモンスターが弾かれる。


すぐにモンスターにトドメをさし、ミミウの元に駆け寄る。


「ミミウ大丈夫か?」


ミミウは怪我一つない身体を見せる。


「はい。大丈夫ですぅ。」


俺たちには戦闘が始まる前に、あやめから模倣した【堅牢】をかけていた。

一度しか攻撃を弾けないようだが、中ランク程度のモンスターの攻撃なら魔法だろうが何だろうが弾いてくれるようだ。

この大規模戦闘の前にあやめのスキルを模倣できたのは僥倖だった。


「ミミウ【堅牢】をかけ直すぞ。」

「彼の者を護れ!」


ミミウの身体が淡く光る。


「よし。大抵の攻撃からは守れるみたいだけど、あまり過信して無理するなよ。」


「はいですぅ。」





戦闘開始から1時間はたっただろうか。Bクラスのモンスターに2回ほど遭遇したが、無理せずうまく誘導して騎士団に押し付け‥代わってもらった。


モンスターの数も減ってきたようだ。

しかし未だ同じくらいの数はいるようで、そこかしこで剣戟の音がする。


すると一箇所怒号が聞こえる場所があった。少しだけ余裕があったマルコイたちは声の聞こえる場所に応援に駆けつけるよう走り出した。


すると前から金属の塊のような物が転がってきた。

それが人だとわかったのは、いきなりの事で受け止めてしまったからだった。


よく見るとそれは毒キノコだった‥

いや、ノベルタさんだった‥


「キノコさん大丈夫ですかっ!」

やべっ!思わず思ってた事口から出た。


「うっ‥」

「俺はノベルタだ‥キノコじゃない‥」

「それに僕はキノコ嫌いなんだ‥間違えないでくれ‥」



いや、何言ってんのあんた。

キノコ嫌いってビックリだよ。勇者が異世界から来た事よりビックリだよ。


「それよりもヤバいやつが混じっている‥すぐに騎士団か、高ランク冒険者に伝えてくれ。やはりヤツらが絡んでいた。魔族だ‥」


その言葉を聞いたと同時に前方で爆発が起きる。


「はーっはっは!この国はこの程度のヤツしかおらんのか?モンスターと渡り合っている所を見てなかなかやるかと思いきや、弱い。弱過ぎるぞ!」


爆発の中から1人の男が出てくる。

緑の髪を靡かせた、肌黒い男だ。筋肉が盛り上がりはち切れんばかりになっている。しかしなによりも一番特徴的なのは真っ赤な眼だ。

魔族は髪や肌の色に多少の違いはあるが、総じて共通するのがあの真っ赤な眼だ。

魔族はほぼ他種族と交流することはないが、変わり者なのか、時折人族や獣人族の国に来る者がおり、その際にわかった事らしい。

そして普段は自分たちの領土からあまり出る事はないのだが、魔王が現れた時は好戦的になり他種族に戦いを挑むようになるらしい。


「弱い弱いっ!少しはマシなやつはいないのかっ!」


魔族は魔法や体術を使い、冒険者たちを翻弄している。

あ、今飛ばされたのオーウットさんじゃないかな?


「は〜、このままほっといたら被害が多くなるな‥」

「ノベルタさん。応援要請は他の奴に頼んでください。俺たちでアイツを引き受けます。でも死にたくないんで、なるべく早く応援呼ぶように言ってくださいね。」


「大丈夫なのか?相手は魔族。Bランク、もしかしたらAランク相当かもしれないんだぞ。」


「まあ時間稼ぎくらいはできるでしょ。終わったらキノコ嫌いの件、詳しく聞かせて貰いますよ。」

「アキーエ、ミミウいけるか?」


「任せて!」

「やるですよぉー!」


マルコイは2人の仲間の力強い返事に応えるよう魔族に向かって行った。

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