第31話
どこまでも真っ白な世界。ただこの世界に白という色の概念があるのであればの話だが。
その白以外に全く色のない世界で1人の女性が佇んでいる。
その女性は美しいと表現できる。しかし姿形は人族のそれであるが、どこか神々しく神秘的な雰囲気を持っており、姿以外は人族ではない事がわかる。
そんな女性が自分の足元を見ながら憂いた表情をしている。
「ついに理から外れた者が動き出しましたか‥。システムから逸脱した者。彼を止める術はありませんね。たとえ世界が滅びたとしても‥」
「落とした一雫が芽吹いて阻止せぬ限りは‥」
彼女の表現は変わらぬままであったが、声だけが少し、ほんの少しだけ希望を持ったような気がした。
目的地まで進む中、マルコイは隣にいるアキーエに話しかける。
「アキーエあのさ。さっきの俺たちの指揮をとる人見てどう思った?」
「ん?ノベルタさんの事?どうって別に何も思わないわよ。Cランクでトップクラスの実力をもってるパーティでしょ。何回か王都で見たわよ。」
俺はアキーエの言葉に驚愕する。
「何回か会っただと?俺は覚えてないぞ。あんなの一回会ったら絶対忘れないはずだ。」
「ん〜マルコイは会ってないのかしら?私とミミウも話こそしてないけど、何回か会ったことあるわよ。」
ミミウも頷いている。
「お前会ったのにあの頭の事何も思わなかったのか?男も女もおっさんもキノコだぞ!」
アキーエは呆れた顔をする。
「別にパーティの決め事なんだろうからいいじゃない。確かにあの頭にするのは嫌だけどね‥」
先頭辺りを歩くクレイジーマッシュを見ながらアキーエは呟く。
「だろうだろう。しかも明らかに毒キノコじゃないかっ!」
「ふふっ。」
笑い声が聞こえアキーエを見る。
「ありがとうマルコイ。わたしたちが緊張しているからほぐしてくれているんでしょ。大丈夫お陰で緊張も解れたし、それに守ってくれるんでしょ。」
アキーエがこちらを見ながら笑いかけてくる。思わず見惚れてしまうくらい綺麗な笑顔だった。
「そっか。なら大丈夫だな。アキーエもミミウも絶対俺が守るから心配するな。」
するとミミウが大きな盾に手をかける。
「守るのはタンクのミミウの役目ですぅ。2人とも安心して戦っていいですよ!」
「そうだな!ミミウありがとう。じゃあ気を引き締めて行くぞ。」
「うん!」「はいですぅ!」
うん。2人とも気合が入っていい状態みたいだ。
とてもじゃないけどさっきの話は本気で思って話してましたとか言える雰囲気じゃないから、俺の胸にそっとしまっておこう。
しばらく進んでいると先頭集団が止まったような気配がした。
しばらくするとノベルタから指示が出る。
「この平野でモンスターを迎え撃つ!モンスターは変わらず王都に進んできている。あと1時間もすれば見えてくるはずだ。各自武器の点検や回復薬の確認を行ってくれ!」
実際に戦いが迫ってくると気持ちが高揚してきた。緊張なのか武者震いなのか、剣を点検している手が震える。
大規模戦闘は経験がないので、想像していなかった事が起こる可能性もある。
絶対に仲間と共に無事に王都に戻る。それが今回の緊急依頼の目標だな。
「おう!マルコイまた会ったな。」
声がした方を向くとスキンヘッドの厳ついおっさんがいた。ガッツォさんだ。
この人昼間に外で会うと眩しいな‥
何がとは言わないが‥
「武器の確認は終わったのか?」
「今確認中ですよ。」
するとガッツォはまだ見えないモンスターの方を見つめる。
「モンスターの数はこっちの倍以上だ。正直死ぬ奴も出るだろうな。」
「そうですね。でも俺は死ぬつもりないですよ。自分の命も仲間の命も守り抜きます。」
「そうだな。生きて王都で飲もうや。だから王都は俺達の手で守るぞ。」
はは。異世界で言うフラグって奴っぽいけど、ガッツォさんが言うとカッコいいな。
頭眩しいけど‥
ガッツォと話をしていると、平野の奥から黒い影が見えてくる。
影は徐々に大きくなり、それがモンスターの大群とわかるまでそれ程時間はかからなかった。
「モンスターを確認した!それぞれ戦闘の準備にかかれっ!」
ノベルタさんの声が聞こえてきた。
「さてアキーエ、ミミウ準備はいいか?必ず生きて戻るぞ。」
「うん。」「はい!」
さ〜て、ガッツォさんのフラグを盛大にブチ折りに行きましょうかね!
あ、あそこにガッツォさんがいる。
眩しいな‥
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