第7話

村の外、人気がいないような場所に着いた。すぐそばには森があり、ここからときどきモンスターが出てくる。

とはいえ、ランク的にはEランクである。



この世界のモンスターにはギルド独自ではあるが、ランクがつけてある。

ランクE:ランクEの冒険者が1対1で倒せるレベル


ランクD:ランクEの冒険者が4人以上のパーティー若しくはランクD の冒険者が1対1で倒せるレベル


ランクC: ランクDの冒険者が4人以上のパーティー若しくはランクCの冒険者が1対1で倒せるレベル


ランクB: ランクCの冒険者が4人以上のパーティー若しくはランクBの冒険者が1対1で倒せるレベル


ランクA以上となると冒険者が1対1で倒せるレベルではなくなる。


ランクAはランクAパーティーでの推奨で、ランクSに至っては討伐許可をギルドに申請しなくてはいけない。

これは単純に高ランクパーティーを無駄死にさせないための制度になる。



この村ではランクE以上のモンスターは発見されておらずスライム若しくはランクEの中でも中ランクであるゴブリンが出る程度である。

ゴブリンも集団で現れるとランクが上がるが、幸いにもこの村では2匹以上で行動しているところは発見されていない。



森の方で草をかき分けるような音がしたため、音がした方を向くとスライムが2匹が草むらより出てくるのが確認できた。


流動的な身体で地面を這うような動きでこちらに向かってくる。



「じゃあお手本でアキーエの【属性魔法:火】を見せてくれ。」

「わかったわ。よ〜く見ててね。」


アキーエが魔力を練ると杖の前に直径30センチ程の火の玉が現れる。

「あれ?この間より大きくな‥」「火球!」

30センチの火の玉はそのままマルコイの近くまで来ていた一匹のスライムに当たる。


爆発音に熱風‥


「あら?少し威力が高かったかな‥」


もちろんフレンドリーファイアいただきました。

こんがりと焼けたミディアムレアなマルコイ。


2度目のアフロマルコイの出来上がりである。

「おいアキーエ。」

「‥‥な〜に?」

「ちょっとこっちに来なさい。」

何も言わずに逃げ出すアキーエ。追いかけるマルコイ。


数分追いかけっこをしていたが、その様子を不思議そう?に逃げずに見ているスライムがいたので、気持ちを切り替えてマルコイが構える。


杖をアキーエから借りて、杖に魔力を込める。

するとマルコイの顔先に5センチくらいの火の玉が浮かび上がる。


「あれ?小さくない?」

「まあいい。火球!」


すると5センチ程度の小さな火の玉がスライムに進んでいく。


着弾すると、小さな破裂音が起こりスライムの半分程度が溶ける。


「ん、なんだ?威力が弱くないか?」

「込めた魔力が少ないんじゃない?」


それから何度か【属性魔法:火】を発現するが、威力が変わる事ない。



何回やっても火球の大きさも威力も変わらなかった。

「アキーエの火球も最初見せてもらった時は、もう少し小さかったよね?」

「そうね、あの時は【属性魔法:火】がLv.2だったからと思うわ。」


アキーエの言葉で俺は気づいた。いや気付かされた。

アキーエの【属性魔法:火】はレベル3なのだ。アキーエのスキルにはレベルがついている。

自分のスキルを見なおしてみる。



マルコイ

スキル【模倣Lv.1】

模倣スキル【属性魔法:火】【判別】



「ちなみにアキーエ、【判別】のレベルは?」

「【判別】はレベル2よ。」


なるほど。俺の火球が小さい訳がわかった。どうやら俺の模倣スキルにはレベルという基準がないらしい。

「俺の模倣したスキルにはレベルがついていない。だから【属性魔法:火】もレベル1相当の火球しか出せないんだ‥」


スキル【判別】も試してみたが、あきらかにアキーエと俺の模倣スキルの【判別】では得られる情報量に違いがあった。


アキーエの場合は薬草などでも『名称、効能』までわかったが、俺の【判別】では名前だけしかわからなかった。


スキルカードでスキルを確認して、スキル名をスキルホルダーの本人から言わせる。それだけでもハードルが高いのに、模倣したスキルはレベル1でそれ以外上がらないか‥


究極の器用貧乏じゃね?

最強の勇者じゃなくて、最強の雑用係じゃね?

俺の想い描く最強像から、また大きく後退したくね?


俺が座り込み思い悩んでいるとアキーエが声をかけてくる。


「でもスキルなしで冒険者しようって思ってた時に比べたら、珍しいスキルでも模倣できるかもしれないんだから、可能性は凄く広がったんじゃない?」


そうか、そう思うとささくれ立った心が落ち着いてきた。


「アキーエはいい女だな。」

「な、な、な、なに言ってるのよ!そ、そ、そんな私は最初からいい女よ!何よ突然‥‥」


顔を真っ赤にして

「ほら、立ちなさいよ。」

そう言って手を差し出してくる。


アキーエの手を取り立ち上がり、その細い身体を抱きしめる。


「本当にありがとう。俺の気持ちを助けてくれて。」

「な、な、なにを‥」


そしていい匂いのするアキーエをクンカクンカする。


身体に衝撃が走る。アキーエとの身体の隙間は数センチ程度だか、その隙間でぼでーを入れてきた。

ま、まさかアキーエがワンインチパンチまで会得しているとは‥


「あっ!」

「どうしたのよ、変態?」


男なら褒め言葉を浴びながら自分の思い付いた事をアキーエに告げる。


「高スキルになったスキルはどうかな?【腕力】が系統進化した【剛腕】とか、【剣士】が系統進化した【剣鬼】とか?それだったら何を模倣するのか試してみないか?」 


「そうね、でも当てはあるの?」

「もちろん!」


マルコイ達は再度ギルドに向かうのだった。

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