第57話 第二回イベント当日 終了後

「――5、4、3、2、1! ……はいっ、これにて第二回イベントは終了です! いやぁ、ジークさん! 今回も見応えたっぷりでしたね!」

「はい! 見ていて凄く楽しかったです!」

「ですね! 特に終盤の……っと、早速結果発表の準備ができたようです! 優勝を手にしたのは一体どのギルドなのでしょうか! それでは、結果を見ていきましょう!」


 勅使河原が言い終えた瞬間、スタジオに壮大なファンファーレが流れ出す。

 それが終了すると、放送画面にギルド名とイベントに参加したメンバーの名前、獲得したメダルの枚数が書かれたスライドが映された。


「最も多くのメダルを集め、優勝に輝いたギルドは【リバラルティア帝国】! 総獲得メダル数は105枚。8名での参加なので、平均して13枚ものメダルを集めたことになります! 【リバラルティア帝国】の皆さん、本当におめでとうございます!」

「おめでとうございます!」


 スライドが切り替わり、放送画面に別のギルド名とメンバー名が映される。


「――そして! 第二位は総獲得メダル数82枚! 平均6枚のメダルを獲得した【はぴねすとろんぐ】! 優勝には一歩届きませんでしたが、大健闘でした! 準優勝、おめでとうございます!」


 再びスライドが切り替わる。


「第三位は総獲得メダル数70枚! 平均5枚のメダルを集めた【アグレアーブル】です! こちらも優勝を逃してしまいましたが、展開次第では十分に優勝の可能性もありました! 次回のイベントに期待ですね! トップ3入り、おめでとうございます!」

「以降の順位は別途、ゲーム内のお知らせやSNSなどで発表させて頂きます! 参加して頂いた選手の皆様、お疲れ様でした!」

「お疲れ様でした! それでは、これから優勝ギルド【リバラルティア帝国】の皆さんに賞品の授与とインタビューを行います! 少々準備がありますので、視聴者の皆様はそのまましばらくお待ちください!」


 勅使河原がカメラに向かって頭を下げたのを見て、勇も同じようにしていると、


「――はい、オッケーでーす!!」


 ほどなくして、木村の声が耳に届いた。


「ふぅ。多井田君、ひとまずお疲れ様!」

「はい、お疲れ様でした!」

「いやぁ、今回も解説よかったよ! それと途中、フォローしてくれて本当にありがとう! おかげで助かったよ」


(フォロー……ああ、ルシファー君とガイア君の時のことだな)


「いえいえ、そんな。勅使河原さんには色々と助けてもらってますし、お互い様ですよ!」

「ははは、ありがとう。それなら、そういうことにさせてもらおうかな!」

「はい! ぜひ――」

「お待たせしました! では、こちらを!」


 駆け寄ってきた木村が、勅使河原と勇にヘッドギアを手渡してきた。

 前回同様、これは事前に木村から持ってくるように言われ、二人がそれぞれ持参した私物だ。


「うん、ありがとう!」

「ありがとうございます!」

「はい! それでは準備ができ次第、お願いします!」

「うん。それじゃあ、多井田君。早速始めようか」

「はい!」


 勇と勅使河原はヘッドギアを装着し、ドリームファンタジーの世界に旅立った。



 ☆



 ログインすると、そこは先ほどまで画面で見ていた草原のエリアだった。

 少し先には、輪になって会話を楽しんでいる複数のプレイヤーの姿がある。


「大変お待たせ致しました! これから第二回イベントの優勝ギルド、【リバラルティア帝国】の皆さんにインタビューを行います!」


 勅使河原は目の前に浮かぶカメラに向かってそう言うと、彼らのほうへ歩いていく。

 その後を勇も追うように歩いていると、彼らもこちらに気付いたようで、笑顔を浮かべながら駆け寄ってきた。


「【リバラルティア帝国】の皆さん、優勝おめでとうございます!」

「おめでとうございます!」

「「「「ありがとうございます!」」」」

「早速インタビューを始めさせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」

「「「「はいっ!」」」」

「ありがとうございます! では、ギルドを代表してカイザー選手、うさぴょん選手、ロイ選手にお答え頂ければと思います。今の率直なお気持ちはいかがでしょうか?」

「素直に嬉しいです! 前回は優勝を逃してしまったので、今回は何としてでも優勝したいと思っていたので!」

「カイザー様のお力になれて本当によかったです!」

「もう最高の気分だぜ!」


 三人は本当に嬉しそうな顔で答えた。

 それを見ている他のメンバーも同じ気持ちのようで、満面の笑みを浮かべている。


「なるほど、ありがとうございます! では、次はイベントの内容について触れさせて頂ければと思います。えー、では、メノー選手! ズバリ今回の勝因とは?」

「はい! それはやっぱりカイザーさんがいたことですね! 状況を見ながらみんなに的確に指示を出して、僕達を引っ張ってくれたので!」

「なるほど! 確かにカイザー選手の統率力や判断力はお見事でした!」

「ありがとうございます! まあ、一応プロゲーマーなので!」


 褒め言葉に対し、カイザーは冗談めいた口調で答える。

 それによって小さな笑いが起こった後、カイザーは優しい笑みを浮かべ、そのまま話を続けた。


「でも、いくら的確な指示であっても、みんなが聞いてくれなければ意味がない。……優勝できたのは、僕のことを信じてくれたみんなのおかげです!」


 その言葉に、他のギルドメンバーはもちろん、勇と勅使河原も頬を緩める。


「なるほど。あの連携力はこの信頼関係があってこそという訳ですね! いやぁ、素晴らしい! ……さて、まだまだお話しを伺いたいところですが、時間の関係もありますので、そろそろ優勝賞品の授与に入らせて頂きます! ジークさん、お願いします!」

「はい! 改めまして、優勝おめでとうございます! 優勝賞品は――」



 ☆



 およそ二時間後。

 ダイジェスト映像を見ながらの振り返りを終えた勇達は会議室に居た。


「勅使河原さん、多井田さん、改めてありがとうございました! お二人のおかげで今回のイベントも盛り上がりました!」

「ははは、そう言ってもらえてよかったよ」

「ですね! お力になれたようで何よりです!」

「ええ、それはもう! また次回のイベントもどうぞよろしくお願いいたします! あ、それと多井田さんは引き続きレクチャーのほう、お願いしますね! ……すみません、僕はそろそろ戻らないとならないのでこれで」

「あ、はい! お疲れ様です!」

「お疲れ様、木村君。仕事頑張ってね」

「ありがとうございます! では失礼致します」


 木村はそう言って、そそくさと会議室から出ていった。


「じゃあ、我々もそろそろおいとましようか」

「はい! あ、勅使河原さんは今日もこれから別の収録ですか?」


 勇が何気なく尋ねると、勅使河原は「フフン」と笑みを溢した。


「いや、今日はこれで終わりでね」

「おお、よかったですね!」

「うん。……で、多井田君。多井田君さえよかったら、これから一杯どうだい?」

「……えっ?」


 思いもよらない申し出に、勇は目を瞬かせる。


 前にゲームの中でバッタリ会い、『一緒にプレイしないか?』と誘われた時も驚いたが、それとは比べ物にならない。

 何せ、今回は飲みの誘いなのだ。驚かないほうがおかしい。


「あ、もちろん無理にとは言わないよ! もし用事があるなら――」

「ぜ、ぜひ! 僕なんかでよければ、ぜひご一緒させてください!」


 勇は勅使河原の言葉を遮り、二つ返事で誘いに応じた。 

 すると、勅使河原は嬉しそうな表情を浮かべてウインクする。


「そうか、よかった! じゃあ、行こうか!」

「はいっ!」


 その後、勇は勅使河原に連れられ、大層高そうな店へ。

 そこで美味い料理と酒に舌鼓を打ちながら、イベントの感想や近況について話し合い、楽しい時間を過ごしたのであった。

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