推しが結婚した。
Y氏
第1話 推しが結婚した。
私には大好きな「推し」という存在がいる。なにしてても頭の片隅には推しがいるし家にいれば推し事をしたり。
好きだから推しという存在がいることはとても楽しい。見るだけで嬉しくなるしテンションも上がる。
ファンのことを一番に考えて行動してくれる推しが大好きだ。ファンサもしてくれるし配信なども結構してくれる。
推しのその存在が好きだ。顔も好きだし性格も好き。どこか欠点があってもそこがいとおしい。
自分の幸せが一番かもだけど、それ以上に推しが幸せが一番だ。推しが幸せだと私も幸せだ。
推しがいなければ生きていけないほど。生きがいになっている。好きじゃなかったときはなんとも思ってなかったけど、好きになってからいないと生きていけない。
純粋に好きだけど妄想だってしてしまう。推しが「好き」と言ってるところとか、どこかへ一緒に出かけるところとか。
特に私が妄想しているのは私と推しってことじゃない。
たとえば出かけるところなら推しと誰か女性が出かけてる。その女性は私じゃない。強いて言うなら後ろで出かけているところを撮影しているのが私だ。
だから私に向けて「好き」と言ってるところを想像しているわけではない。私と一緒に出掛けているところを想像しているわけではない。
隣は誰かで「この人」って訳じゃない。特定の人でもなければ私でもない。
スマホの通知がなった。推しがなにやら投稿したらしい。
『この度一般女性の方と入籍しましたことをご報告させて頂きます。』
手早く指を動かして投稿されたものを探していたのも投稿された文を理解して、動きが止まった。
何も考えずに『おめでとう!』と私もリプを送る。おめでとう、と心の底から言いたい。でも、引っかかる部分がある。
もう、結婚したんだ。ファンと距離がいくら近くても隣にいるのは私たちじゃない。隣にいたかった訳じゃないのに……。
「彼女とかっているんですか?」と冗談まじりに言われたときも「いません」とはっきり言っていたのに。ファンが一番だからって。嘘だったのかな。きっと私の考えは歪んでいる。でもそう考えてしまうのだ。
誰かが結婚したということはめでたいことだし、それが大好きな応援している人。もっと嬉しいことなのに。
なんでだろう。心に穴が開いた感じ。違う。嬉しいことでありおめでとうって思う。でも……。
私が隣にいたかったわけじゃない。みんなで応援したいと思ってるし、隣に誰かがいたとしてもそれは変わらないのに。
でも推しの隣にいるのはうっすらとした想像からはっきりと現実になった。一般女性って、誰かも分からないけど誰かになった。
特定の人じゃなかった。今は特定の誰かだ。
私は推しの隣に誰かいるのが嫌だ。私でも。私は推しの隣に誰もいてほしくなかったんだと思う。
こんな状況でも推しの幸せが一番と笑って言えるんだろうか。自分に訊いてみても答えは見つからない。
推しが結婚した。 Y氏 @-Sigure-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。推しが結婚した。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます