第10話 大縄跳びチャレンジは続く
仲良くなったクラスメートたちと、せっかくなら楽しい時間を過ごしたいと思った俺は、皆に大縄跳びで遊ぼうと提案をした。そして、その提案は歓迎された。
「じゃあ、いくよ?」
「おっけー」
「いつでも、だいじょうぶ」
「いこう!」
目標回数を決めて、どこまで続けて失敗せず跳び続けられるかというチャレンジ。最初は、50回を目標にして跳んだ。その目標は、その日のうちに達成した。
「やったー!」
「つぎは、もっととべるよ!」
「じゃあ、次の目標は100回を目指してみようか」
「「「わかった!」」」
次の目標回数が100回になって、何度か失敗はした。けれど、3日目には目標を達成することが出来ていた。
「もっと、もっと!」
「まだまた、いけるよ!」
「よし、やろう!」
そして次の目標回数は、倍の200回に。この回数でも順調に跳ぶことが出来た。1週間ぐらいで達成。
けれど300回の目標は、なかなか壁が高かった。
「あぁー」
「つかれたー」
「だめだぁ……」
「ちょっと、休憩しようか!」
250回を跳んだ頃には、皆の体力が尽きてヘロヘロになっていた。そのぐらいの回数に達したところで、失敗する。小学一年生には無茶な回数なのかもしれない。
特に、綱の回し手は体力消耗が激しくてキツかった。俺は何とか耐えたけれども、もう一人の彼が無理だった。仕方ないことである。大綱を回し続けるのは、大人でも厳しそうなぐらい疲れる。数分間休まずに回し続けられる彼は、とんでもない体力の持ち主だと思う。ガッツもある。そして、限界もある。
「そっちは、大丈夫かい?」
「ハァ、ハァ……、なんとか、がんばるッ!」
「よし、頑張れ!」
だけど、頑張ろうとしている。本当に無理そうなら止めるけれど、まだやれそうな気力があった。小学1年生なのに、根性がすごい。
彼のように、皆が頑張って目標の回数を目指して大縄跳びを繰り返す。
「255、256、25……ッ!」
「「「にひゃくごじゅごー、ハッ、にひゃく、ハッ、ごじゅーろく、ッ!」」」
「あ」
縄に足が引っかかって、縄の回転が止まる。その瞬間、大縄を跳んでいた者たちが一斉に地面へ倒れ込んだ。この辺りが、皆の限界のようだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、ッ!」
「つかれたぁ! ハァッ、ハァッ……ッ」
「ご、ごめんなさい! はぁ、はぁ、はぁ、さっきのあし、ぼくです」
「ドンマイ、ドンマイだよ! ハァハァハァ」
足が引っかかってしまった子は、申し訳無さそうに謝る。周りの皆が、大丈夫だと彼を慰める。大縄を跳び続けて、荒くなった呼吸を整えながら。
「皆、よく頑張った。でも今日は、もう休もうか」
「えー」
「もっと、できるよ」
「おれ、まだままたイケるぜ」
「だめ。皆が思っている以上に体は疲れているから、シッカリ休もうね」
「「「はーい」」」
やる気を見せる子どもたち。だけど、これ以上はダメと言ってしっかり休ませる。無理をさせて、体を痛めたら大変だから。その見極めは、特に注意していた。
縄を片付けてから、皆でストレッチをする。疲れを後に残さないよう入念に、体をほぐしておく。
「いーち、にー、さん、しー」
「「「いーち、にー、さん、しー」」」
図書室で借りた本から学んだ知識と、俺が今までの経験から得た体に関する知識をミックスして考案した、新しいストレッチ。それを、子どもたちと一緒に行う。
こんな感じで、大縄跳びチャレンジは続いていた。
俺たちの大縄跳びチャレンジは、小学校内で噂になった。実は、50メートル走の時から話題になっていたようだけど、気にせずに楽しむ。
遠くから見守る先生たちと、興味津々な生徒たちの視線を肌に感じながら。
俺達が大縄跳びを始めると、ギャラリーが集まるようになった。小学生が大縄跳びしているだけなのに、他の学年の子たちまで見に来ていた。
「288、289、……ッ!」
「「「にひゃくはちじゅう、はち、にひゃく、ハッ、はちじゅう、きゅ、ッ!」」」
「「「あー、おしい……」」」
失敗して、ギャラリーの生徒たちが落胆の声を漏らす。ただ俺たちは、周りの声は気にしなかった。
「ドンマイ、ドンマイ! 目標回数まで、あと10回の惜しいところまで来てる! これは、俺たちなら次は絶対に跳べると思うよ!」
「おー!」
「やろう!」
「がんばる!」
その日は、あと1回ぐらいチャレンジして終わらないと。大縄跳びに参加している皆の体力が限界のようだ。
「いくぞー!」
「「「うん!」」」
俺は、皆を鼓舞する。良い感じで集中しているようだ。ギャラリーの生徒たちも、固唾を呑んで見守ってくれている。期待する眼差しだった。
「がんばれー!」
「がんばって!」
「おうえんしてる!」
掛け声とギャラリーの声が聞こえる中で、挑戦がスタートした。順調に、50回、100回、200回のカウントを通過。あとは、300回の目標を目指すだけ。
「201、202、203」
「「「にひゃくいち、ハァ、にひゃくに、ハァ、にひゃくさんッ!」」」
ここまで、かなり順調だった。いつもと比べて、皆の体力がまだ残っている様子。まだ余裕を持って跳べている。だけど、ここで油断をしちゃダメだ。気を引き締めて確実に、大縄を跳んでいく。そして。
「298、299、300!」
「「「ハァ、ハァッ、にひゃく、きゅうじゅうきゅう! さん、びゃくッ!!」」」
「おー! 跳んだ!」
「凄い!」
ギャラリーたちの歓声が体に当たる。だけど俺たちはまだ、止まっていない。
「301、302、303……!」
「「「さん、びゃく、いち! ハァ、ハァ、さんびゃく、に……ッ!」」」
「「「おぉぉぉぉ!」」」
300回の壁を超えた後も、失敗するまで跳び続けた。そして、313回まで跳ぶことが出来た。
「やったー!」
「すごい!」
「おれたち、すごいよ!」
「皆、よく頑張った!」
目標を達成したことで、何かご褒美を貰えるというわけじゃない。でも俺たちは、とても満足していた。自分たちで決めた目標に、皆で力を合わせて達成できたという満足感を得ていた。
そんな俺たちの挑戦した結果というのが、学外まで伝わっていったそうだ。
そしてなんと、地方のテレビ局が大縄跳びチャレンジについてインタビューしたいという申込みがあったと、担任の先生から俺たちに伝えられた。
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