太陽と麦わら帽子

夕立

第1話 夏休みの始まり

 昨日、七月二十日に修業式を終えた僕は、学生の特権とも言うべき、長期休暇すなわち夏休みを迎えた。


 ーーーーミーン、ミン、ミン、ミン、ミーン


 蝉の鳴き声と茹だるような暑さ、夏休みという独特の時間も相まって、課題に対する意欲をすっかり削がれた僕は、近所の公園を散歩していた。


 太陽は僕の頭上高くに上り、お昼の十二時を告げるアラームを時計が歌い上げる。


 幼、少年期には世界の半分程を占めていた公園は、久方ぶりに訪れると、随分と小さくなったように感じた。


 今、僕は青春真っ只中の高校二年生。といっても、あまり目立つことが得意でない僕は

胸が熱くなるような部活も、甘酸っぱい恋にも無縁な、どこにでもいる男子校生な訳だが。


 ーーーーブワッ!


 取り留めのないことを考えていると、急に風が押し寄せてきた。


 ランニングコースが設備され、大人達が日中、走り回っている程度には広いこの公園には、ちょっとした丘になっているところがある。


 その上を歩いていると、時折、風が吹き上げてくる。


 芝生を揺らしながら駆け抜ける風に目を細めていると、何処からか、麦わら帽子が飛んでくるのが見えた。その、さらに向こうからは走ってくる少女がいる。


 ーーそういえば、あの時もこんなことがあったな。


 不意に、脳裏に甦った記憶に意識を傾けながら、飛んでくる麦わら帽子に手を伸ばした。

 

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