第4話 勝手な勘違いは物語の華!

 ゴブリンたちの話を聞いた。

 今、オレのいる世界には4つの大陸があるらしい。

 昔は人族がその中で一番小さな大陸に閉じ込められていたのだが、【勇者】という者が現れて情勢が一変。


 魔物の大陸3つの内、2つが征服され、オレのいる大陸も今人族によって一部侵略され、国を作られたとか。


 そう言えば、国王は建国して間もないと言っていたな……そういうことか。


 魔物たちは大陸の長【魔王】と共に魔王軍を率いて【勇者】と戦うも苦戦。

 ジリジリと戦線を下げられているらしい。


「因みに、人族が4大陸を制覇したらどうなるんだ?」

「世界が滅びる。魔物たちが守ってきた自然の摂理を人族は軽々犯す。生物絶滅、森林破壊、種族差別。他の2大陸は生物の住める土地では無くなったと聞く」


 つまり、女神が言っていた「破滅に向かう世界」って人間の所為で破滅に向かっているという事か!

 そして、魔物の手助けをするために、最初に魔物の群れ『魔王軍』に直接落とされたのか!


 ちょっと、待て。もしそうなら、あの女神は説明不足過ぎるし、オレも勘違いしていた。


 てっきり、人間が魔物に侵略されていて、それから助けるストーリーだと……。


 しかし、このきもい奴らを助けるのか……?

 うーむ……。これは異世界だし、オレの世界じゃないから破滅しても……。


 『転スラ』のリリムならどうする?

 『Reイチ』のスベルならどうする?

 『ニート転生』のルーズウェルならどうする?


 ちくしょう!どの転生転移者、全員助けるじゃねーか!

 さすが主人公、イケメンだな!


 なら、オレもやらなきゃならないじゃないか!

 人間の所為で破滅に向かうって言うのなら、その破滅になる未来をぶち殺す。

 オレはスキル持ち。そのスキルは【強靭】【無敵】【最強】それと【粉砕】【玉砕】【大喝采】なのだから。


「ゴブリン、オレたち人間が悪いことをしたのはわかった。謝らせてくれ」

「なに……?」

「そして、オレはその人間の進行を止める」

「どうするつもりだ?」

「手がある」


 それは一つ。国王の言っていた言葉。

 勇者が死んでしまえば後任がいない。

 王国は魔物の攻撃に怯え、土地を追われるだろう。人類の敗北だ。人類のため、次期勇者は見つけておかなければならぬ。

 と。


 だから、【最強】のオレが【勇者】を殺し、人間の侵略を止める!


「全て、聞かれてしまったようだね、時期勇者」


 オレの出てきた茂みの方だった。

 ゆっくりと、もう悪役にしか見えない勇者が鳥の紋章を光らせて現れた。

 多分、その鎧のせいで遅れてきたのだろ!


「何故、魔物の大陸を侵略した?」

「簡単だ、魔物が弱いから、資源が多いから、虐殺が楽しいから、差別して愉悦に浸りたいから、媚びてくる知能ある魔物を裏切るのが面白いから、それ以外にももーっと楽しい事がある」


 クズじゃねーか!

 よくラスボスが言いそうな事。

 私は戦争が好きだ、と同じくらい熱く語りやがって。

 まだ、少佐の方がリズム感あってオレは好きだぞ!


「共生や協力という選択肢は無かったのか?」

「あるわけないだろ、下等生物と対等など人類の恥。貴様はそちらの肩を持つのだな、雑種」


 くそ、金ピカ英雄王みたいな事言いやがって。


「オレは、オレの見てきた価値観で言う。これは間違っている。どの作品も、協力して、認め合って、取引して、共に強くなって、発展していく。それは国も生物の関係もだ。理想郷だと言われても、目指せるものではないのか?」


「御伽噺を」


 そうだ、御伽噺だ。アニメだからな。

 でも、人がアニメを見るのはそう言うことに憧れているからじゃないか?

 異世界で冒険するのも、恋をするのも、婚約破棄するのも、スローライフを味わうのも、追放されて、見返すのも全部全部、そうなってみたい、そうやったみたいって思うから、見ているんじゃないのか?


 なら、オレに力があるのなら、その未来を掴み取ってみてもいいんじゃねーか?


「よろしい、ならば戦争だ」


 【勇者】との戦いが始まった。

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