第28話 外出(と書いてデートイベントと読む)1
研修旅行に関する反省文と課題、を終えた翌週末。あの夜の約束通り、俺は蓮と学園の外に遊びに来ている。
「真琴、そっちじゃなくてこっちのホーム」
「ホントだ。これじゃあ逆に行っちゃう」
「方向音痴なんだから先に行かないで。僕が前を歩くから真琴は付いてきて」
「ごめん……あ、人多いし手を繋いだ方がはぐれずに済むんじゃないか?」
休日で人が多い上に、今から行く水族館も週末レジャーを楽しみに来る人が多いはずだ。そんな中で付いていくだけでは絶対にはぐれる。言いきれる。だから手を繋いで少しでもリスクを回避した方がいい。
そんな名案を思いついたのに、蓮は顔を真っ赤にして怒る。
「ばっ、ばか!そんなこと出来るか!」
「でも俺の方向音痴酷いし……」
「酷いのは嫌になるくらい分かってる!お前も自覚してるならはぐれない努力をしろ!」
「だからそのために手を……」
「うるさい!いいから黙ってついてこい!」
そう言って蓮はどんどん先を歩いていく。説得できる隙もなさそうなので、諦めて必死に付いていく。
ううっ、肝試しの時は全然嫌がってなかったのに……やっぱ俺嫌われてるな。あの時は怖いから仕方なく握ってくれただけで、本当は嫌だったんだろうな。……やっぱ、友達だと思ってるのは俺だけか。
だったらなんでわざわざ出かけているのか。それを考えられるほどの余裕は今の俺にはない。
「……この電車乗るよ」
「あ、うん」
怒らせてしまったので、冷たい対応をされて気まずくなるかと思っていた。でも蓮はちゃんと誘導してくれる。
その優しさにまた調子に乗ってしまいそうになるが、グッと堪えて黙ったまま電車に揺られる。
水族館を見て回った後のお昼の相談とかしたいけど、スマホをいじって忙しそうだから無理かな。また変なことを言って怒らせたくないし、俺も黙って外でも眺めてよう。
楽しくなるはずの外出。それをぶち壊してしまったのは俺。ここにいるのがもし、俺じゃなくて楓だったら、蓮は電車の中も楽しかったのかな。
……今日、かなり楽しみにしてたのにな。
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