第22話 初イベント 2
翌朝、寝坊することなく集合場所に着いた。迷って遅刻してしまう心配があったが、蓮のおかげで無事たどり着けた。
でも一つだけ心残りがあり、チシャにいってきますを言えなかった。今まではおはようからおやすみまで一緒で、丸一日以上離れるなんてことなかった。だからちゃんと声をかけることができなかったのが悔やまれる。昨日の夜、チシャあんまり納得してなかったから、拗ねてどこかに隠れてるだけだと思うけど。心配だ。
「はぁ……」
「ため息吐いてどうした」
「ん?ああ、渚かおはよう」
「おはよう。昨日まで楽しそうにしてたのに、どうしたんだ?なにか気になることでもあるのか」
「チシャが……」
渚に昨夜の出来事を話す。相変わらずの無表情だけど、真剣に聞いてくれているのが伝わってくる。いつも思うけど、本当に真面目でいいやつだ。
「てことがあってね。朝姿をみないまま出てきたから心配なんだ」
「それは心配になるな。でもあいつはそんなにやわな男じゃないから、そんなに心配しなくてもいいんじゃないか」
「うーん……」
「危ない所には行かないと思うし、あいつは人間になれるから大丈夫」
「そう、だといいんだけど」
ネコの姿のときより危険は少ないのは分かってるけど、やっぱり気がかりだなぁ。
「何もないといいけど……」
「あっ」
「ん?」
めずらしく驚いた顔をした渚。その顔が気になってその視線を追うと、俺のカバンに行きついた。特に珍しいものとかじゃないんだ、けど……。
「にゃー」
「ちっ、チシャ!?えっ、なんでカバンの中に……」
「真琴と離れるのが嫌でついてきたのか」
「にゃっ!」
正解と言わんばかりの弾んだ鳴き声。ネコの姿で外にいるときは、にゃーと鳴くように教えてたのをちゃんと守ってえらい。って、関心してる場合じゃない!
ど、どうしよう……今から寮に戻って置きに行って間に合うかな?チシャは賢いから一人でも部屋に帰れるけど、離れてるから帰り道に危険があるかもしれないから置いていけないし。
「どうしよう渚……」
「どうしよって言われても。連れていくしかないんじゃないか?」
「先生にバレたら怒られるよな?」
「……協力するから、一先ずカバンに隠しておけ」
「渚……!」
渚のイケメンぷりと頼もしさに感動して、抱きつきそうになった。流石にそれはヤバいのでグッと堪えた。
「いいかチシャ、時間が無いから連れていくけどいい子にしてるんだよ」
「もちろん!」
「わっ、外ではにゃーで返事する約束だろ」
「にゃー」
「うん、いい子だね。あとは、絶対に俺から離れないでね」
「にゃっ!」
チシャの元気な返事を聞いて少し安心する。
それから出発時間まで、渚と二人で人目につかないところで過ごした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます