第21話 初イベント 1
入学して初めての研修旅行。要は攻略対象共の好感度を上げるイベント。
泊まりがけなので、荷物やら何やらを詰めて用意しているとき、それは起きた。
「ねぇねぇまことー僕も一緒に行きたい」
「生徒だけの参加だからチシャはお留守番」
「ヤダ!僕も行く」
「そう言われても……」
俺だって可能ならチシャを連れて行ってあげたい。いくら住むのを許可されていても、一人で残すのは心配だ。でも生物の連れ込みは禁止だからなぁ……。
「いーくーのー」
「おい真琴迷惑かけるなバケネコ」
腕に張り付いて駄々を捏ねるチシャを見かねたのか、蓮がベリッと剥がした。
「邪魔しないでよ」
「うるさい大人しくしろ。僕たちは明日の研修で早いんだ。そもそも邪魔してるのはお前の方だろ」
「だったら蓮は先に寝ればいいじゃん。僕はまだ真琴と話さないといけないの」
チシャがあっかんべーと舌を出す。それを見た蓮は青筋を立てて、一触即発の雰囲気になる。
二人は相性が悪いのか、ことある事に喧嘩をしている。口喧嘩で終わるならまだいい方で、手が出るといつも部屋はめちゃくちゃになってしまう。
研修前日にそれは困るので、なんとか二人を落ち着かせないと。
「蓮、心配してくれてありがとう。チシャとはもう少し話をするから蓮はもう寝て」
「でもそいつ絶対しつこいよ。真琴が困ってるなら力づくでも黙らせるよ」
「困ってないから大丈夫。心配してくれてありがとう」
「……真琴がそういうなら……おやすみ」
名残惜しそうに蓮は言ってベッド横になる。さて、あとはチシャの説得だけど、流石に眠くなってきた。横になりながら話をしよう。
「チシャ」
「なあに?」
「続きは横になりながらしよ。ほら、ベッドにおいで」
「はーい」
いつもならネコの姿になって一緒に寝るのに、今日は人のままだ。連れて行く約束をするまで、この姿でいるつもりなのだろう。
シングルベッドが狭い。
「ねぇ真琴ー僕も連れて行ってよ。一日でも離れるなんてヤダ」
「俺も連れて行ってあげたいけど、使い魔は連れて行けない決まりなんだ。だから我慢して」
「でも……」
「ご飯はいつも通り食堂で食べていいから。それにたった二日だけだから……すぐだよ」
小さい子をあやす様に背中を数回叩いてあげる。それでも不安があるのか、チシャは俺の服をギュッと掴んでいる。
「真琴の側にいるために人間になったのに……」
「うん」
「一日でも離れたくない……」
「俺も離れたくないよ」
「じゃあ!」
「でもルールだから。ごめんね」
「……」
背中を向けられてしまう。何回か名前を呼んでみたが、チシャは拗ねてこちらを向いてくれない。
ちゃんと納得をして欲しかったけど、流石にそろそろ寝ないとマズイ。
説得は朝にしようと思い、明日に備えて眠りについた。
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