第20話 閑話 4

sideチシャ


 人間は嫌い。


 嘘つきで、残酷で、弱いと決めて踏みにじってくるから嫌い。


 嫌いでこんなマズいもの食べたくなかったけど、魔力をたくさん持ってたから食べた。


 どこかで聞いたおとぎ話。たくさんの人間を食べたネコは願いをなんでも叶えてもらえる。そんな話。

 願いはなかったけど、魔力を蓄えておけば飲まず食わずでも生きていけたから食べた。


 そうやって生きてきたある日、若い人間がたくさん集まる学校に迷い込んだ。若い人間は甘い声で鳴くだけで美味しいご飯をくれるから好きだった。たまにあてが外れてイジメられたけど、それでも大人よりはマシ。

 生きるためにしばらく滞在することに決めた。

 人間が多すぎる所は追い出されてしまうと思い、人があまりやって来なさそうな場所を選んで機会を待っていた時、真琴に出会った。

 最初は都合の人間に出会えて幸運だ、ぐらいにしか思っていなかった。この人間も他のやつらと同じように、いつか俺を忘れてこなくなると思っていた。でもそうはならなかった。

 真琴はちゃんと約束を守って会いに来てくれた。会えない日はちゃんと教えてくれた。初めてのことに俺は嬉しくなって、いつの日からかもっと傍にいたいと思うようになった。

 俺はどうすれば真琴の特別になれるのか考えた。たくさん考えて考えた結果。


「今まで蓄えていた魔力を使って人間にして欲しい」


 願いを口にした瞬間、俺の身体を光が包んで毛だらけだった手足は、つるつるの人間のものになった。魔力が足りないせいで耳だけは人間になれなかったけど、この方が可愛い気がしたので構わなかった。


「そうだ、どうせなら一人称も可愛げがあるものにしよう」


 人間は可愛いものが好きだから。どうせ言葉を交わすなら可愛いと思われたいし、警戒心は低く持ってもらいたい。


「決めた。今からは僕って言おう、その方が可愛い」


 これからどう動くか考えながら、僕は走って愛する真琴の元へと向かった。

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