第23話 初イベント 3

 無事チシャの存在がバレることなく目的地に着いた。魔法のように神秘的なものがあふれている土地を期待していたが、連れてこられたのは普通のキャンプ場。この世界、微妙に現代感があるよな。馴染みやすいから俺は助かるけど。

そんな感想を抱いていると、いつの間にか説明が終わっていた。これから各班ごとにバラけて作業をするけど、その前にチシャの様子を確認しよう。

グループから離れて茂みに隠れる。


「チシャ」

「にゃー」

「今はネコのフリしなくていいよ。体調に変化ない?閉じこもって気分悪くなってない?」

「真琴の匂いに包まれてたからへーきだよ」

「そう、大丈夫そうなら安心した。少しだけ開けておくけど、夜まで絶対に出てきたらダメだよ」

「えー真琴のポケットに入りたい」

「危ないからダメ」

「でも……一人は嫌だよぉ」


しゅん、と悲しそうな素振りに胸を打たれる。心なしか目に涙を浮かべているようにも見えて、頷きたくなってしまう。

一人カバンの中で過ごすよりは、側にいてくれた方が俺としても安心できる。でもなんらかの拍子に離れてしまい、俺が気づかず置いていってしまったら。それを考えるだけで安易に頷くことはできなくなる。


「一人が寂しいのは分かるし、俺もチシャと離れたく……」

「真琴?」

「っ!」


やっぱり危険だと判断し、再びチシャの説得を試みていると、蓮に声をかけられる。


「そんな所でどうしたの。もしかして具合でも悪い?」


振り返れない。蓮はチシャと仲があんまりよくないからヤバい。チシャを連れてきてしまったことがバレたら、ケンカになって教師にバレる。

外見は十代でも中身はオッサンだから、この年で反省文はキツい。な、なんとかして隠さないと。


「だ、大丈夫、なんでもない。ちょっと酔ったから休憩してただけ」

「転移魔法けっこうくるよね……僕も気分悪いから休もうかな」

「えっ」


ここに居座られるのはマズい。 チシャがこの状況に気づいているのか分からないから、大人しくしてくれている保証がない。仕方ない、他の場所で説得しよう。


「なに?」

「あー……やっぱ、大丈夫みたいだからさ、俺向こうに行くわ。蓮は体調よくないならここで休んどけよ。一応俺から先生には報告しておくから。じゃあな」

「えっ、真琴?」


伸ばされた腕を避けてこの場を去る。蓮には悪いけど、今チシャが見つかるのはダメなんだ。

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