第17話 チシャ 1
「だれ?」
入学式から一カ月ほど経った休日の朝、目覚めのお知らせのよろしくディスプレイがルートの解放を報せてきた。
『チシャのルートが解放されました』
チシャって誰だよ。ここ一カ月、好感度が分かってる三人としか交流してないから、心当たりがない。まぁいいや、ルート解放ならそのうち楓か俺に出会いイベントが発生するだろ。
そう片付けて、もう少しゆっくりするために二度寝しようとすると。
「うわぁ!」
蓮の叫び声と共にガラスが割れる音が聞こえてきた。飛び起きて蓮の元へ行くと、ケモ耳を生やした見知らぬ少年が立っていた。
「蓮、大丈夫か?」
「真琴……」
「真琴!」
ケガしてないか蓮の元に寄って確認しようとすると、ケモ耳の少年が抱き着いてきた。
「なっ、離れろ!」
「なんでにゃ!僕は真琴のコイビトなのに!」
「はぁ!?」
「恋人……?真琴、僕に黙って恋人ってどういうこと?なんでそんな奴と付き合ってるの?」
まるで浮気をしていた恋人を問い詰めるような圧に、内心冷や汗が止まらない。俺は蓮の恋人でもこいつの恋人でもないのに、なんでこんな思いをしないといけないんだ!つーかお前誰だよ!
突然現れた少年について聞きたいことが山ほどあるが、それよりもまずは蓮を落ち着かせないと。
蓮は割れたガラスの破片を握ろうとしていたので、手を握って阻止する。
「れ、蓮、危ないからガラスは持つな」
「邪魔しないで。すぐに終わらせるから離して」
「蓮がケガしたら嫌なんだよ!」
口ではカッコいいことを言ったが、本当は手が滑ったりとか何らかの拍子に巻き込まれてバッドエンド一直線を避けたいだけ。好感度はちゃんと高いから心配はいらないだろうけど、念には念をだ。本当はこんな乙女ゲーのヒロインに言うよなセリフ、男に使いたくなかった……。
「真琴が心配するならしない……」
「ありがとう蓮」
そう言って頭を撫でてやると、少しだけ嬉しそうにした。
「あーいいなー!僕にもそれやってよ」
少年は抱きついたまま、ぐりぐりと頭を擦り付けてくる。その姿がいつもご飯をあげているあのネコと被って、手を伸ばそうとするが蓮に阻止されてしまう。
「真琴ー」
甘えた声で名前を呼ばれる。撫でてあげてもいいけど、君はいったい誰なんだ?
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