第15話 三浦 渚 2

「あっ」


 放課後、学年内を一人で散策しているとネコを見つけた。魔法の学校と言えどネコはいるんだな。

 ネコは人慣れしているのか、何もしなくても擦り寄ってきた。


「キミ人に慣れてるね」

「にゃー」

「ん、ご飯欲しいの?でも今なにも持ってないや」

「んにー」


 足元ですりすりと頭を擦り付けてくるネコ。人間の扱い方がよく分かっている。


「分かった。購買でなにか買ってくるから待ってて」

「にゃっ」


 頭を撫でて一旦別れを告げる。ご飯をあげるのはあんまり良くないだろうけど、ああも可愛くオネダリされては仕方ない。


 購買に向かいネコが好きそうな小魚の煮干や、ネコの使い魔用の缶詰を手に取った。使い魔用のご飯を普通のネコにあげていいのか悩んだけど、普通のネコ兼用と書かれていたので大丈夫だろう。


「ネコー……って渚?」

「あっ」


 ネコのいる場所に戻ると、渚がネコに煮干しをあげていた。ここで去るのも変なので、隣に座って話しかける。


「渚もこいつに捕まったのか?」

「ああ。その袋、真琴もか」

「そーオネダリされちゃってさ。可愛すぎるから買ってきた」

「にゃーにゃー」

「分かった分かった。あげるからちょっと待って」


 袋を猫パンチで攻撃してきたので、缶詰を開けてやる。ネコは少しも待つことなくご飯に食らいつき、美味しそうに食べている。


「お前さっき渚に煮干し貰ってたのによく食べるな。そんなにお腹すいてたのか」

「かふっ、かふっ」

「あはは、そんなガッツかなくても誰も取らないよ。な、渚」

「ああ」

「そう言えば、なんて渚はここに?」

「…………散歩」

「ん?そうか、じゃあ俺と一緒だ」


 間があったのは気になったが、マイペースなやつだから大した理由はないだろう。

 お腹いっぱいになったネコは、ノドをぐるぐる鳴らしながら甘えてくる。可愛いところを見せて、また持ってこさせる気満々なのが伝わってくる。それがこの子の手口なのは分かってるけど、こんなことをされては応えたくなってしまう。


「分かった。また持ってくるよ」

「にゃー」

「ふふっ、お前可愛いなー」

「……真琴」

「ん?……へっ」


 名前を呼ばれたので渚の方を向くと、口が触れそうなほどの至近距離にいた。あまりの近さに息を飲むと、すぐに顔は離れた。


「まつ毛、付いてた」

「あっ、ああっ、まつ毛!まつ毛か、ありがとう!」


 何考えていた。今何考えていた俺!?


「うん」

「お、俺そろそろ戻るわ!」

「うん、じゃあ、またね」

「っ!ま、またっ!」


 笑ったところなんて初めて見た。その、あまりの破壊力に、顔に集まる熱は収まってくれない。


「ああもうっ、イケメン怖い……」

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