第12話 飛田 爽 3
飛田のケガは思っていたよりも酷くなかった。血まみれだったから入院する程かと思ったけど、切りどころが悪くて出血が多かっただけらしい。
曖昧な言い方なのは人づてに聞いたから。俺は飛田の分まで先生にこってり絞られたので、放課後の今、ようやく様子を伺えるようになった。
「飛田、大丈夫?」
「真琴!俺はへーきだよ。真琴の方こそケガはない?俺が無茶したばかりにゴメンね」
言葉通りに見えるけど、貼られた絆創膏の多さに申し訳なさが募る。調子に乗らずにちゃんと止めるべきだった。身体は高校生でも中身は大人なんだから、しっかりしないといけなかった。
「本当か?無理してないか?」
「してないよ。かすり傷なのに先生たち大げさすぎ」
笑ってピースをしてるけど、貼られた絆創膏の多さが気になる。
「……本当にごめん……あの、俺に出来ることがあれば怪我が治るまでなんでもする」
「なんでも?」
「うん、身の回りのことでもそれ以外の事でもなんでもするから」
「そう、なんでもか……じゃあ」
「ダメ」
突然蓮が現れた。かと思うと、俺を引きずってどこかへ連れていこうとする。
「ま、待て、蓮!まだ話が終わってない!」
「知らない。すり傷なんだから真琴がなにかする必要は無いでしょ」
「あはは、真琴のことになると本郷は必死だね」
「うるさい。行くよ真琴」
「ちょっ、力強いって!」
「ごめん飛田!今度必ずお詫びする!」
「別にいいよ!でも、そんなにしたいなら名前で呼んで」
ニッ、と人のいい笑みで告げられる。それにほんの少しだけ心を奪われかけたのかどうかは分からないけど、呼びたくなってしまった。
「分かった、爽!」
「またね、真琴」
「……帰るよ真琴」
「分かったって!引っ張るなよ蓮」
「じゃあこれならいいでしょ」
そう言って蓮は俺の腕に絡みついてくる。まるで恋人のようなくっつき方に、ちょっとゾワッとする。さすかにこのまま帰るのは嫌なので離そうとするが、圧がすごいので諦めた。
なんで俺に執着するんだよ……。
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