第8話 出会い 3

 なぜか揉めた朝食を終え、無事に遅刻することなく教室に着いた。しかしここに来るまでも……今も蓮の不機嫌は増すばかり。飛田は引くことを知らないのか、蓮の不機嫌もお構いなしに今も絡んでいる。さすがコミュ力お化け。

 目の前で繰り広げられている攻防を眺めるふりをしながら、ディスプレイに表示されている好感度一覧を見る。


『本郷蓮【120】飛田爽【100】三浦渚【100】』


 開いたり閉じたりしても変わらない数字。蓮からの好感度はまだ分からないでもないけど、飛田と三浦からのは意味不明すぎる。今朝知り合ったのにいきなり楓より高いっておかしい。それに二人は楓とはまだ出会ってないみたいだし……。そもそもなんでいきなり【100】なんだ。

 うんうんと唸りながら考えていると、チュートリアルメッセージらしきものが表示される。俺の頭を読んだのかコノヤロー。思考を読まれた感じは気持ち悪いが、教えてくれるのは助かる。


『隠しモードのヒロインは二人です。メインヒロインである真希楓と、サブヒロインである真希真琴。どちらかが出会った攻略対象の好感度を上げないと真希真琴の未来はありません』


 おいこらシステムよ、なぜ男の俺がヒロインなんだ。


『開発者の趣味です』


 最悪だなおい。まぁそこはいい、俺が出会った場合でも好感度が見えるのはそういうことか。開発者の趣味なのは全く理解できないが分かった。しかしそうなるとかなり面倒だな。俺の場合もカウントされるなら出会いが二倍になって、気を配る範囲が広がってしまう。


「めんどくさ……」


 チクショウ、なんで貴重な学園生活を男との交流に使わねばならんのだ。俺も女の子とキャッキャウフフしたい。可能ならばハーレムを築いてみたい。なにが悲しくて逆ハーレムを目指さねばならんのだ。


『頑張ってください(笑)』


 こっ、このシステムめ!他人事だと思って笑いやがって!つーかなんで突然人間味を出してくるんだ!さっきまで無機質な感じだっただろうがお前!

 突然の自我の芽生えに腹が立つが、一先ず置いといて気になることを質問してみるか。Heyシステム、好感度の最高値は?


『【100】です』


 やっぱりそうか……そこはゲームの時と一緒なんだな……ん?ちょっと待てよ、なら蓮の好感度はどういうことだ?【100】を越えてるぞ。おい、どういうことだシステム。


『あーなんかのバグじゃないっすかね。まぁでも、高くて問題はないでしょうから、気にしなくていいと思います』


 こいつ急になれなれしいな。ムカつくけど気にしたら負けな気がするから無視しよう。さて、知りたかったことが分かっただけで収穫は充分にあったな。またなにか気になることができたら聞こう。

 システムとの会話を終わらせると、ちょうど教室に担任が入ってきた。ありがたいことに担任は攻略対象ではない。すでに教室に二人もいるのにこれ以上増えるのは面倒だ。できる限り攻略対象は最低限に収めたい。あっちもこっちも右往左往したくない。


「ふぁ……ん?」


 あくびをかみ殺していると、隣の席から紙が飛んできた。そちらを見ると飛田が悪戯っぽく笑っていた。


「飛田?」

「しー」


 飛田は人差し指を口に当てると、紙開くようにジェスチャーしてきた。その通りに開くと。


『飛行授業ペアになろ』


 飛行授業……ああ、ホウキで飛ぶやつか。やっと魔法の世界らしいものが出てきたな。それにペアで受けるなら知り合いの方が気楽でいいな。蓮はペアの候補……って俺が気にすることじゃないな。まだ友達できてないっぽいから、これを機会に俺以外の友達を作った方がいい。

 小さくちった紙に返事を書いて飛田に返すと、キラキラの笑みを向けてくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る