第7話 出会い 2
深呼吸、瞑想、頬を叩く。これらを全部やっても、目の前の文字は変わらず好感度を示している。どうしてだ、意味が分からない。
こいつとは初対面のはずだぞ。ヒロインの楓なら最初から好感度【100】でもなんらおかしくない。周回プレイの特典で攻略済みのキャラは、次のプレイでは最初から高い状態で始まる。それを駆使しないと逆ハーレムエンドを迎えられなかったから覚えている。だからこの数値は楓へのものならなんらおかしくはないのだが、なぜ俺なんだ……。
『真希楓への好感度【0】真希真琴への好感度【100】』
いくら睨んでも薄眼で見ても変わらない表記に辟易としていると、件の男である飛田爽が話しかけてくる。
「おはよう真琴。君も今から朝食?」
「おはよう……ってなんで俺の名前を知ってるんだ?」
ナチュラルに名前呼びしたけど、お前とは初対面だぞ。
「なんでって、昨日クラスで自己紹介してたろ。それにネームプレートがあるだろ」
「ああ、そっか。てか、よく覚えてたな」
俺は蓮以外のクラスメイトの名前は覚えていないぞ。かろうじて顔なら分かるかもだけど、名前はからっきしだ。
「そうか?まぁさすがに全員は覚えてないけど、真琴は隣部屋だしなんか気になったから覚えた」
「そ、そっか……」
「俺、真琴ともっと話したいし、よかったら一緒に食べないか?」
気になるの意味にどういったものが込められてるのかは怖くて聞けないが、朝食の誘いは素直に嬉しい。まだ欠片も登場してないけど、なじみのない魔法がある世界での友達はありがたい。同じクラスだし、ここは仲良くなっておかないと。
「いい……」
「ダメ」
返事は後ろから現れた蓮によって遮られてしまった。
「真琴は僕と食べるから。じゃあね」
「れっ、蓮?」
俺の返事も聞かず、蓮は手首を掴んで立ち去る。去り際に飛田を思いっきり睨んで。下手なことを言って好感度が下がるのも嫌なので、黙って蓮の後に続こうとすると。
「待てよ本郷」
飛田が蓮の肩を掴んで止めた。
「……」
「怖い顔するなよ。俺はただ君たちと仲良くしたいだけなんだ。だからさ、本郷も一緒に行こうよ」
「イヤ」
「そう言うなよ。同じクラスのよしみなんだから、仲良くしよう」
「イヤだ。興味ないし、別に仲良くしたくない」
飛田よ、後で相手するから今は見逃してくれ。蓮の不機嫌になっていくのが目に見えて分かるからさ、怖いから見逃してくれマジで。もしくは今すぐ誰かこれをどうにかしてくれ。こんなことならさっさと食堂に行けばよかった……。
二人の攻防に後悔していると、飛田の部屋から誰か出てきた。
「おい爽、さっきからなにしてるんだ」
「あっ、渚」
「ドアの前に立つな。邪魔だ」
「そうだ。渚も一緒に食べようよ」
「いいけど、そっちの人すごく嫌がっているぞ」
眠そうな顔で現れた飛田のルームメイト。寝ぐせが直っていないぼさぼさあ頭でも分かる。こいつも攻略対象だ。そう思った瞬間、またディスプレイが現れて情報を出す。
『
やっぱりな。で、好感度の方はどうなんだ?
『真希楓への好感度【0】真希真琴への好感度【100】』
「なんでだよ!」
またもおかしい表記に、つい声を出してツッコんでしまった。三人がこちらを心配する目で見ているが、俺にそれを気にする余裕はなかった。
ああもう、わけ分かんねぇし最悪だ……頭痛い……。
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