第3話 システム

『真希楓への好感度【100】真希真琴への好感度【-50】』


 すっげー嫌われてる。

 好感度が可視化できた場合、人は嫌われていると怒りが湧いたりショックを受けることはないようだ。ディスプレイの文字を最初から信じたわけではない。だが現在進行形でゴミを見る目を向けられていたら、誰だって信じる。

 今だってほら。


「蓮くんおはよ」

「おはよう楓」


 一応俺も幼なじみなのに無視。間違いかと思ったが、ヤツは楓だけに笑って話しかけている。その上二人にしか分からない話題で盛り上がっている。

 これで好感度のことは信じた。しかし問題はどうしてこんなにも嫌われてるのかってことだ。普通に気になる。

 そんなことを思った瞬間、ディスプレイにまた文字が書き出される。


『本郷蓮と真希真琴の仲は出会った時から悪い。真希真琴は真希楓に近づく男は全て害虫と見なし嫌がらせをしていた結果、今にいたる』


 ブラコンここに極まれりだな。そりゃゴミを見るような目で見られるわ。しかし嫌がらせの分からないが、嫌いなヒロインの兄がいても話しかけ度胸があるのは、さすがメインヒーローだな。

 乙女ゲーのヒロイン凄いな。なんて呑気に思いながら後を着いて歩いてると、ディスプレイにチュートリアルの文字が浮かんできた。遅くね?


『隠しモードではプレイヤー自身がキャラになって行動と選択をします。真希真琴は死亡フラグしかありません。なのでそれらを回避してハッピーエンドを迎えてください』


 なるほど、意味が分からない。そんな俺を置いてシステムは説明を続ける。


『卒業までにヒロインが出会った攻略対象の好感度を上げてください。それ以外にバッドエンドを回避する方法はありません』


 んー別に上げなくても、ヒロインたちと関わらなければいいのでは?そんな純粋な疑問を抱いた瞬間、画面は真っ赤になり警告の文字がでかでかと表示される。


『関わらなかった場合、重大なエラーとみなされ強制終了=バッドエンド直行になります』


 丁寧な説明ありがとう。逃げ道なしとは最悪だ。それにどうしてわざわざ関わらなければいけない。嫌われてると分かってて話しかけるとかバカじゃないか。俺なら嫌いな人間には話しかけて欲しくないし、避けてもらった方が助かる。

 つーかなんでヒロインのための世界で、どうして俺が攻略対象と関わらなければならないんだ!


『……』


 そう心の中で叫んでみたが、システムはうんともすんとも言わない。言い逃げかこのやろー。

 まぁいい、この世界でやることが分かっただけ良しとしよう。うん、先ずは目の前の本郷蓮の好感度を上げることに集中しよう。

 元の世界では無職だった俺。とは言え、十年間で鍛えられた適応力と諦めの速さのおかげで、頭の切り替えはすぐに出来た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る