第8話 歓迎会
新たにリズを加えた俺たちは、ブルメジャ第二宇宙港を発つと、根城にしているコンフリに向かって超光速航法で飛んでいた。
ビスコッティが設定したフライトプランで航行し、数秒後亜光速航行で通常の空間に戻ると……そこは戦場だった。
「あ、あれ?」
ビスコッティが慌ててフライトデータを確認しはじめた。
「あれではない。どこだ、ここは」
おれはデブリ対策用のシールドを全開にして、万一の被弾に備えたが、所詮は宇宙ゴミを排除するための装備なので、心許なかった。
「リズ、履歴書を読んだが結界魔法と攻撃魔法が得意だそうだな。念のため、結界を展開しておいてくれ」
「わ、分かった……」
正面のスクリーンに青白い光りが展開され、俺は満足して頷いた。
「分かりました。現在地は、パルサー王国とプレセア王国の間でぶつかっている、モロに戦闘区域です。早く離脱しましょう!!」
パステルが声を上げた。
「なるほどな、コンフリとは反対方向だ。ビスコッティ、正しい航法データを入力してくれ。間違っても、どこかの恒星に突っ込むなよ」
「分かっています……出来ました。加速します」
ビスコッティの手がスロットルレバーに伸び、俺たちは再び超光速飛行に入った。
オートモードで数秒間でコンフリが見える区域に出ると、俺はマニュアルモードに切り替え、名物の小惑星帯に突入した。
「リズ、邪魔な小惑星を粉砕出来るか?」
俺は笑った。
「そんなの出来るか!!」
リズが叫んだ。
「元気なのは何よりだ。さて、コンフリに着いたぞ。アイリーン、港の管制に連絡をとってくれ」
俺は笑った。
港の誘導波に従い、ビスコッティが船をいつものポートに下ろすと、同じようにここを根城にしている連中が、ポート脇でバーベキューをしていた。
「リズ。ショボいが歓迎会だ。新たな乗員が加わるとやる、ここの名物みたいなものだ。主賓はいうまでもなくリズだぞ」
「ええ、あたし!?」
リズが飛び上がった。
「バイトでもなんでも、乗員は乗員だ。手荒く揉まれてこい」
俺は笑った。
全員で船を下りると、リズがさっそく揉みくちゃにされた。
「ぎゃああ……!?」
「うむ、俺たちもやろう」
真っ先にビスコッティが服を脱がし、スコーンが毛虫を乗せ、リズが倒れたところを全員で踏みつけ、スコーンがまた背中に毛虫を乗せた。
「なにすんじゃ!!」
リスが素っ裸で放った攻撃魔法が、停泊ポッドに留まっていた別の貨物船に当たったが、弾き飛ばした。
「だから、いっただろう。揉みくちゃにされろと。まあ、手荒い歓迎だと思ってくれ」
俺は笑った。
「私もやっていいのかなぁ……」
犬姉が毛虫を踏み潰し、コンバットブーツでリズの背中をグリグリ踏んだ。
こうして、手荒い歓迎を受けたリズは、ビスコッティから服を返してもらい、ため息を吐いた。
「うむ、これで我々の仲間だ。おめでとう」
俺は笑った。
「嬉しくないわ!!」
リズが怒鳴った。
「船長、まともな歓迎会をしましょう。スコーン、毛虫の瓶はしまってって下さい」
ビスコッティが笑った。
「分かっている。いつもの店を貸し切りにしてある」
俺は笑った。
港からタクシーで十分少々の場所に、行きつけの定食屋があった。
タクシーを何台か連ねて店を訪れると、いつも通り無口な大将と、にこやかな笑みを浮かべた女将が出迎えてくれた。
「いらっしゃい、待ってたよ」
俺たちが適当にテーブルにつくと、あらかじめ指定しておいた料理が並び、それなりに豪華な食事となった。
「あっ、この煮物美味しい!!」
リズが笑みを浮かべた。
「刺身でもあればよかったのだが、ここから海までは遠くてな。魚を手に入れるのが難しかったのだ」
俺は苦笑した。
「ビスコッティ、この丸いの美味しい!!」
「私はお酒があれば……」
スコーンとビスコッティが笑った。
「まあ、なんだ。ささやかだが、これがリズの歓迎会だ。好きにやってくれ」
俺は笑ったのだった。
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