第8話 誠実な人のジンクス
「佐々木ー! その記事の山田総研の人にヒアリングお願いできるか?」
「嫌です!!!」
あまりにも大きな声に周囲が引いている。
「あっ、あの、すいません、これは別の方に」
「なんだ、訳ありか?」
「あぁ、まあ、色々ありまして」
プロメテウス火山ばりに真っ赤になって先に戻る。
この男の顔を見ると運気が下がる。
また相変わらず中身のないことをペラペラペラペラと偉そうに宣っている。
そんなネガティヴな思考が渦巻き、
私はゾンビにでもなったように腐臭を撒き散らせはじめる。
代打か中継ぎ投手のつもりだった。
何でこんな奴に振り回されねばならんのだ。
毒づいているとLINEが来る。
「ハマさん、記事載ってたね」
苛立ちから口の中の歯という歯を舌で舐め回してしまう奇行をして、
ハッと仕事中だと慌てる。
落ち着くために廊下に出ると、すうっと呼吸が通る感覚があった。
「来週土日は空いてる? 古墳見に行こうよ」
何だか最近は調子が良い。
彼とは話が合うし、一緒にいてほっとできる。
ハマの後輩って言うのは気に入らないけれど。
お誘いだけ打って、レポートをまとめる。
事務仕事は本当に向いていない。
給料が良くて転勤が無いからーー。
それだけではエネルギーが有り余る。
彼は、どこか懐かしいオーラを持っている。
そう、陸上部で800mと1500mをやっていた人は信用できる。
それは私のジンクスみたいなものだ。
昔からそれだけは確信している。
ーー絶対に誠実なんだから。
今度こそ、誠実な人を選ぶんだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます