第6話 無意識の悪戯

「こんなところに石垣があるんですね」

「そう、でも綺麗に作ることにこだわりすぎて、強度は微妙なの」

「こんなでっかい石を運ばされたら、そりゃ藩財政も大変だあ」

「おかげで私たちが江戸城を楽しめるんだけど!」

「江戸幕府のシステムって本当によく出来てますよね!」


あれはもう7年前か。

皇居でお花見した後、和田倉橋に立ち寄った写真が手元にある。

みんなまだ20代で、みんな初々しさがあった。

誰もが結婚相手を探して盛んな時期ーー。

低潮していた私の男運が俄かに上がり、

突然のお誘いに頭がおかしくなっていたのだ。


「久しぶり〜ヽ(´▽`)/ 今先輩とランチ」

すべてはそのLINEから始まった。


「なにそれ、食べ過ぎじゃないw」

その手のジャブで気を引こうなんて手が効くと思うなよ、恋愛初心者めが。


不毛な駆け引きを仕掛けて来られたことが癇に障った。

ダイレクトに突然告白してくるような男性もいる中、

そんな慎重さが、私のシャドウを引き出してしまった。

苛立ちで眉間にグッと力が入る。


部署異動が叶わずに6年が過ぎていた。

自分に足りないのは豪胆さと思い切りである事は分かっていた。

もう潮時で、もう転職しかないことも分かっていた。

ーーでも、神様、あと一回のチャンスを待ちたいんです。

我慢の限界はとうに超えていた。

それはそのままプライベートに反映され、

人相はますますキツく、

人当たりもますますキツくなっていた。

ゆるふわに生きている人が許せなかった。


それでも、20代後半は結婚ラッシュ。

真剣なパートナー選びをしている旧友からお声がけをいただく。

デートに行く。

何となく会話が弾む。

仕事のストレスは異性でーー。

それが許された最後の季節に、

出会った。


神様、いるなら答えて。

なぜいつも間違った手を取ってしまうのか。

君はなぜいつも間違った球を投げてくるのか。

なぜラブコメのような予定調和が私たちに訪れないのか。

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