第24話 煉獄を歩む者
インベントリに仕舞ってあった
フィールドでエリアボスモンスターとして登場するときの名は『
地下魔城を攻略始めのプレイヤーがこぞって捕獲に走った高い物理防御力と耐久力持つ前衛タイプの捕獲可能ボスである。
紫色の魔法光は属性が【霊ゴースト】で上級=レベル55になると
武具精霊はアンデットとは少し異なりヒールなど聖魔法をかけてもダメージは受けない、物理戦闘に適して居て魔法による攻撃に対しやや苦手としているが、この辺りのフィールドにこいつを倒せるほどの魔法を使ってくるモンスターは出てこない、したがって安心して盾代わりとして使用できる、気をつけるのは燃費切れくらいだ。
ゲームではプレイヤーのアバターよりふた回り大きいグラフィックで描かれていたが、こうやってアバター視点で改めて見るとデカイ……
兜が無いので肩までの高さで言えば180cm以上は有る、文字通り壁と言う感じ。今は戦闘時召喚ではないので両足を軽く開いて「待機姿勢」であるが逆手にした剣先を地面に向けて両手で
本来兜のある辺りと、腋やひじの間接部分など
得物である剣は肉厚で幅広の両手持ち剣、刃の部分が150cmはあるそれは「ツヴァイヘンダー」と呼ばれ、熱と雷魔法に対する耐性持ちで、所どころ溶岩の満ち溢れる灼熱マップ『煉獄』にふさわしいしろものである。
使役契約を結ぶには単に倒すのではなく、残りHPをギリギリ__ライフゲージ残り1パーセント__まで削り、あと一撃で倒せる、となったときに契約の石を投げ
もちろん、フロアボスだからこその難度で雑魚モンスターなら4~5回チャレンジすれば使役獣として捕まえられる仕様である。
「……すごいですね、こんな強そうな使役獣を見たのは初めてです」
使役獣を出している間は使役者のMPの自動回復は遅れるため、親密度を上げる狙いでわざと安全地帯で放置するケースを除き、戦闘召喚時以外で外に出す事は少ない。
だから他人の使役獣を見るのはモンスター狩りでのマスターを支援する姿を目撃するのが大半だ。
外に出し続けて時間が経てば使役獣も腹をすかせ、満腹度が30を切れば『空腹』となり、空腹状態の次に満腹度ゼロの『飢餓状態』に突入する。
『飢餓』のペナルティーとしてその状態で5分経過すると親密度は1つ減る。
親密度を上げるには外に出した状態で10分経過で1つ上がるが、満腹状態から空腹状態そして飢餓状態になるのはゲーム時では約2時間だったかな……
「こいつの名は『
そう言えばゲームではアイコンクリックだけでえさをやった事になるのだが画面の中に入った事となる現状ではペットの食事はどんなふうなのだろう? 缶切りは無かったがイージーオープン(パッカンとあける奴)ではなかったな。
俺からデカ缶詰を受け取った
缶の上面を9割ほど押し切ったところで人差し指爪先でクイッと引き上げ……顔面があると仮定した空間にポイッと缶をシュート、青白い炎が鎧の襟から立ち上り、缶は空中で消えた。
「……これが使役獣の食事……初めて見ました」
うん、ゲームでは
手元のステータス表示で『村崎』の満腹度が50まで回復していたので缶詰をもう3個追加して満タンの100にしておく、ゲームよりだいぶ回復量多いのはありがたい。
「ムラサキ、体調のぐあいはどうだ?」
使役獣は空腹度はともかくとして疲労度スタミナは表示されない隠しパラメーターになっていると聞く。
HPやMPはペット専用ポーションかプレイヤーの魔法で回復できるが疲労度回復手段はゲームでは非開示なのでペットの行動でおおよその具合を推測する感じだった。
そのペットの行動は封印石から出して『自由行動』を選択して観察する事で
あるじのまわりをうろうろ歩いている場合は疲労度低くてあるじと遊びたい状態、じっとしている時はニュートラル、座り込んでいたら疲労度マックスと言った感じである。まぁゲームではそんなに見る機会はあまり無かったが。
ペットがファンシー系、たとえばウサギや
「system all green. I'm all Ready , Order please sir 『吾ワレ体調万全ナリ。イツデモ下知ヲ 』」
機械音声マシンボイスぽい返事が返ってきた、そりゃ首無し騎士だから普通の声じゃないと思ってたけど
どこのロボット兵かと思うような返事でなおかつ二重音声なのは困る。
「ん、今度から会話は英語省略でw」
『委細承知シタ』
うん、たぶん翻訳機能のせいだろうけどサムライ口調になるのは名前のせいだろうか……
「今回の呼び出しはお前の空腹度の解消と俺のフレンドにお前を紹介するだけだから、挨拶したら送還するので後でゆっくり休んでおけ」
その後「村崎」は大剣を右手で脇に立て、左手で拳を作り胸に当てて
『オノオノガタ、ハツニオ眼通リニカカリシ村崎デゴザル、是ヨリ末永クオ付キ合イ宜シク願イタテマツリ候ソウロウ』
恭しく挨拶してくれたのはあるじとしてちょっと誇らしかったけど、西洋甲冑姿でサムライ口調だったのはムズ痒い気分だった。
使役獣を封印石に戻してジョブスキルを手に入れるのは明日にするか、太陽もやや傾いてそろそろ日暮れも近い事だし、そう告げてロバート達と別れて宿を探す事にする、やはり最初にこの世界に来た時の『猫のひげ亭』にしよう、あそこの魚料理は煮魚・焼き魚・から揚げと色々楽しめそうだし数日連泊しても良い宿だ。
実は宿代節約でゲーム時代に手に入れてたホームを実体化しようと試みたのだがシステムメッセージで『土地を手に入れないとホームは置けない』と出たのでそこらへんも協会で聞いて見るか、ゲーム内通貨で手に入る最小機能の『ミニハウス』だが何度かのアップデートで生産設備を置く事も出来るようになっている、もしジョブスキルの入れ替え制約が解放されたなら拠点として申し分ない。
ホームの機能を使用するには『設置』を選択して実体化する必要があるが『家具配置モード』にすれば半透明のシルエットで家具を置いたり倉庫に戻したり出来る。
家具には『魔力値』が設定され、その総量と室内の清潔度によって機能の制限が解除される仕組みとなっている。
ゲームの開始当初は課金により家具を買って設置する仕様だったが、数回のバージョンアップでプレイヤーの作れる家具もしょぼいものから見た目の豪華な魔力値の高い家具などの製造レシピが公開されることでギルメンの生産職に採取や狩りでドロップした材料とゲーム内通貨渡すことでハウスの格で決められた数の上限置くのがデフォだった時期も有ったが……
それもギルドが戦争イベントで分解して行った事で機能しなくなった
戦争となれば投入する資材がしゃれにならない量になり、生産職が数時間採取した資材100や200が数分で熔ける有様だったからな。
運営会社が代わり戦争イベントで失うデスペナルティ「一回の死亡で5%の経験値ロスト」という仕様を「戦争イベント中に限りデスペナルティ無し」に変更したが時既に遅し。
生産職ギルメンがログインしなくなったギルドは次第に戦争イベントに参加しなくなった、それはまだ競争原理がはたらいた、と言える
それなら資材収拾に弱いギルドにも領地獲得ができる可能性があるが
その同盟関係を良しとしないギルドが出てきた。
そのギルドがやった事は他国所属フレンドに手回しをし、自国トップギルドに粘着攻撃を行わせ、戦争イベント外でも生産職放置キャラにまでMPKを仕掛けた
戦争イベント外でのキャラ死亡のデスペナは5%ロスとのままだったので高レベル生産職ほどダメージは大きい。
「同じ国の領地は奪えない」
A国トップギルドが所有してた領地がB国C国連合に落とされた跡、B・Cいずれかの領地とワールドアナウンスされるタイムラグにA国二位ギルドが
もちろんそんな事すればネット掲示板で叩かれるのは必須だが
そんなことする奴は匿名掲示板で叩かれる事など屁にも思わない。
運営が
そういう
まさに『煉獄』である
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