第16話 妖精の囁き
「珍しいわね、これフェアリー?ピクシー?」
レナとアイリスの周りをゲイルの中級妖精らしい使い魔がパタパタと飛び回っている
ロバート達男性陣は斃したばかりの天駆蛇の解体中。俺は解体して素材となった各部位を「アイテム化」してインベントリーに収めているところだ。
『天駆蛇』は予定の狩り目標じゃない大物なのでロバート達の
ちなみに協会配給の
収納して移動するだけならレベル110
「
斧と解体ナイフを小川で洗ってウェスで拭き取り鞘に収めながらロバートが言う
「わりとスムーズに行ったかな、この分だと午後で次の魔石そろうかも」
俺は水際から数メートルほど離れた地面を
狩った獲物が小型で数体程度なら火炎魔法で焼き払って御終いだが、今回俺たちは100体以上狩った上、予定外の大物(天駆蛇)も
魔物と魔獣の違いは大雑把に言って「魔素の影響受けて人に害を成す存在全体を指して『魔物』とする」それは動物や植物、霊的存在など多様だがあまり賢いモノは無い。
「
野獣から変化した魔獣までは元の性質残しててまだ対策がとりやすいが
聖別された武器とか
それらはAランク冒険者がPT組んで討伐する対象で、正直今は出会いたいとは思わない。
ゲームだと倒したモンスターは光の粒となって消え去るのだが、解体という手間が居るこの世界は少し違う。誰かが片付けるまでその場に残り続けるのだからソロじゃない団体行動だと放って置くのは気まずい
ロバートと入れ替わりに小川で手を洗う、血まみれの手で飯食うのは嫌だしな。
ベースキャンプに戻って宿屋で作ってもらった弁当を広げようとした時、燐光を放つ何かが近づいてきた。約40cmほどの人型で4枚の羽を震わせて切り株に座った俺の目の前1mほどひらひらと滞空している。
さきほどレナとアイリスに愛想振りまいていた妖精、ゲイルの使役魔<<ペット>>か
顔の大きさは親指もしくは小指の長さくらいで5~6cmとしておおよそ6.5頭身てとこかな、髪の毛は蜂蜜色やや赤味がかった黄色で、額の上の前髪の一部が朱色のメッシュ、目の形は
虹彩は黒かと思ってよく見ると
衣服は植物の葉を綴った様な裾丈の短いドレス、英国の妖精画といえば判り易いか
身体のサイズはあれより一回り大きい、リ○ちゃんとバー○ーくらいの差
などと意味不明の供述を……げふんげふん
ゲームで
だが、可愛らしさでトップランクだが連れて歩くプレイヤーは意外と少ない。
それは育成に癖があり、幼体の姿から来る先入観とは育つに連れ予想(期待)とずれが生じるためである。
それはそれで人気の種族とも言えるのだが飼い主の嗜好が……まぁ、いろいろ言われるのだ。
後衛として支援タイプで育てると完全に魔法タイプとなり、体力の低いホーリーエルフ、フェアリークイーンに育つ。
|
『アナタ ナゼタタカウノ?』
……話しかけてきた、自分の所有する使役魔はレベルアップ時に感情らしき反応を示すのだが、他人の所有する使役魔は本来飼い主以外に話しかけたりしないし感情をあらわにする事は無い。
レナやアイリスの近辺を飛んでいた時も飼い主のゲイルからそんなに離れたりしてない。あとでレナ達に「妖精と話をしたか」と確認してみる必要があるが……
気になったのでシステムからチャットウィンドウを拡大してみる
ノーマル/パーティー/ギルド/トレードの項目が有り、今回確認するのは聞こえる範囲での
意識してなくて聞き逃していた周囲の人の会話を白文字で表される、いわゆる「白チャ」だ。レナとアイリスが「かわいー」「おもしろい」と言ってたのが記録に残されていたが妖精が話していたような
俺に話しかけた妖精の言葉はピンク色で残っていた、
区分で言うと1:1の内緒話、ゲームで「ささやき/ウィスパー」と言われるモードだ
『……アナタ ヒトジャナイ シト? ソレトモ……マジン?』
いきなりなんて言う事吐きますかこいつはっ
そりゃ異世界から来た(かな)と言う疑念は自覚してますが「人外認定」されると切れますよ?
つか「マジン」は「魔人」か「魔神」の意味として「シト」ってなんだ?
最初の問い「何故戦うか」と聞かれたときは適当に答えようかと思ったが
これは何かのフラグか、下手したら厄介事に巻き込まれそうな予感。追っ払うにしても杖を振り回したり魔法撃ったら拙い事は判る、ここはキャンプ場で国の衛兵も駐屯している。
……さきほど範囲魔法の試し撃ちで注意されたばかりだし。
ぐぬぬと唸っていたらハンスとルークがこちらにやってきた、食事終わったのか、食うの早ぇぇな
「ベルさん、なに唸ってるの?」
「この妖精が『何故戦うの』と俺に聞いてきて戸惑っている」
食後で口周りをベロで舐め舐めしながらハンスが尋ねる、以前うちで飼ってた柴犬思い出すじゃないですか、あいつが喋れたらずいぶん
「そちらから話し声は聞こえませんでしたが……その妖精がそんな事を?」
ルーク、なんか顔が険しくなってますがそんなに気に障ることなの?この会話は
「ベルさん、その妖精の問いにはまだ答えてないですよね?」
「あ、あぁ、なにせ唐突だったのでまだ話して無いですが」
そう答えるとルークは右手を突き出し、人差し指と中指を伸ばして曲げた薬指と小指を親指で抑える形(兎頭)に組み
「パセリ・セージ・ローズマリィ・ターイム」と唱えながら二重丸とバッテンを宙に描く、そして五指を押し広げて妖精を睨み「邪霊よ退け」と宣言する。
ルークの剣幕に
『ジャマ サレタカラ カエルネ マタ アイマショウ』
そう囁いて飼い主の居るらしき方向へ飛び去った、なんだったんだ……
「妖精と会話するのは基本危ないのです」
知らなかったと呟いた俺に苦笑いしながらルークが話してくれた事。
それは
『店で
それは俺も知っている事柄なので驚きはしないが、その後の内容を聞いて驚いた
『自我が強い使役魔は飼い主以外の強い存在に働きかけて己を解放させるよう仕向ける個体もあるのです』
えーっと、「離婚に応じない亭主殺すため間男そそのかす」みたいなものですか、昼ドラ風に言うのも変ですが
『力とか隠された財宝が欲しいか、とか人の欲に突け込む形で囁く事もよく聞きます』
『力が欲しいか』『ボクと契約してよ』てやつですか、代償は魂とかですかね……
ちと食欲が減退したけど食わないと午後の狩りにならないのでちゃっちゃと食べますか………弁当の包みが転がって小蟹がちょっかい出してたのを蹴飛ばして拾い上げて食いましたよ、幸い齧られたのは小指の先ほど程度でしたけどね
*
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます