第11話 精霊の祠
『精霊の祠』
森の都グリンワルドをはじめウッドワース王国では精霊を祖先に持つと信じられている。多くの神々が地上を人と共に過ごしていた太古、神の姿は一つではなかった。
それは獣の姿であり、巨樹であり、荘厳な山であり、深淵にたゆたう影であった。
幾星霜の年月、人と交わり地に広がる間に力が薄まり、いつしか彼らは「妖精」「妖怪」と「ひと」から軽んじられる存在にまで
自然を支配する対象とみなす者の多い「
各人の姿の元となる獣神だけではなく、大地に生きる数多の草木・人や獣を見守り育む
そして
その還って行く所を「
いわば力のある精霊が「神」であるが、固定されたものではなく入れ替わりが有るのが特徴である。肉体を持って生まれ落ちた「現世」で己の魂を磨けば「常世」に戻ったとき現世に影響を与える精霊に自分がなる事が出来る
もちろん、生きた者に善き者か居れば悪しき者が居るように死した魂が悪しき方向に進む事も有る。その場合は「御霊」とか「崇り神」と恐れられる存在となる
そして「常世」の神々は時として現世の者達をかの地へ連れ去る事があり(いわゆる「神隠し」)、その逆も有る
かの地から来た者は人々に幸を与えれば「
戦乱・災厄の原因となれば「
過去、神隠しに遭った者が現世に戻った場所、そこが現世と常世の結節点とみなされ神聖な場所として
それが「
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『精霊の祠から現れた者』
その意味するものは何か……現世の異国で神隠しに遭った者が戻ってきたのがたまたまグリンワルドであっただけなら問題は小さいと言える。
常世の存在がその者を戻す際、そこが適地で有ると判断して帰しただけであると言えるからだ
だが常世の存在が自分でこの場所を選んだ=異世界の存在そのものが何らかの意図で来た、とした場合それが善きものなら幸いだが、悪しきものの場合は冒険者協会だけでは手に余る。
「……まいったな……。」
冒険者ロバートに労いの言葉をかけて帰宅させた後、協会重鎮だけが残った小会議室でサンガ支部長はひとりごちた。
「祭祀長が『なぜ儂を呼ばなんだ』と喚くのが目に見える……。」
「まぁ、あやつならそう言うのぅ、最近仕事無くて暇してたし、ホッホッホ」
王国祭祀長を従兄弟に持つキリー魔導部長は面白そうに笑う
別に
その書類仕事も行政部門に比べれば微々たるものなのは否定できないが
「アウレアの協会本部に報告せねばならないが、『精霊の祠』が絡んでるとなるとあちらの『神殿』の連中がちょっかい出してくるのはほぼ確実だろうな。」
「まぁ、ここぞとばかりに
隠すという選択肢は無い、「誰がどこから来たか」はぼやかす事は可能だが
持ち込まれたアーティファクトが問題となる、「持ち込んだ者は誰か」と聞かれるのは間違い無い
市井の武器屋に持ち込まれたものなら誤魔化しようがあるが、協会に直接持ち込まれ、鑑定部門にまわされたものは記録に残るのである。
支部での簡易鑑定で「現時点で四ヶ国いずれでも製造不能」「最低でレベル80以上」と出た。
まだ買い取りはして無いので協会の所有物になっては居ないが、その処遇を巡って隠匿行為をしたとなれば協会に対する背任行為と指弾される
取れる手段とすれば「緊急報告」ではなく通常報告の形で時間稼ぎする程度である
それも一週間か10日が精一杯であろう。
いずれにせよ情報が足りない
受付部の話では明日、
月影湖のクエストを発注する事とする、その際ロバート達を同行させ、離れて協会の監視者も後を付けさせることにしよう
当面の方針が決まったところで解散する
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付記)
グリンワルドからアウレアまでは
ウッドワース首都グリンワルド南ゲートを出て
「樹魔の森」ーー「キノコの森」北西ゲートーー「翡翠渓谷」を通過し(ここまでウッドワース領)渓谷西ゲート◆国境地帯◆南水晶湖西東ゲート(ここからホーリーランド領)ーー「陽光草原」ーー「ウィート平原」を経てアウレア東門に至る、
およそ500kmの道程で徒歩で健脚の冒険者なら10日弱、騎乗動物持ちなら3日ほどかかる
四ヶ国を結ぶ街道のうちの「南部街道」と呼ばれる道筋
水晶湖は北と南の2エリアがあり湖南がウッドワース・ホーリーライト結ぶライン
湖北は機械人の国メタリギアとホーリーライト結ぶ中央街道へと繋がる
中央街道は40年前の異界侵攻時の激戦地で廃墟・岩石沙漠・流砂砂漠が連続する荒野と化している
距離は長くなるがホーリーライトとメタリギア間の通行はグリンワルド経由の南部街道-東部回廊が比較的安全である
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