第2話 行き倒れの危機?

 表示された画面を見て頭抱えた


白地に薄い青線で描写された地形に赤い線で描き込まれた建造物、それは良いとして

建物の名前が埋め尽くされるような大量の青い点と吹き出しバルーンが数百と表示されて動き回っている。


「……こんなにNPCが居るのか……」

これだと情報探し出すどころじゃない、余計な項目は取り除く


「NPC表示オフ、施設の位置と名前表示だけ頼む」

銀行、修理屋、武器屋、防具屋、雑貨屋、戦闘職スキル屋、魔職スキル屋……

これらはやってたゲームと同じ位置にあるから内容は多分同じだろうと予測

だが、普通のゲームでは有ってもおかしくないが俺の予想外の施設が有った。


「宿屋」と「冒険者協会」の建物だ。


俺のやってたゲームはHP、MPは自動回復で「お座り回復」と呼ばれ

移動や戦闘状態でなければわずかながら回復し、時間を惜しめばポーションやエーテルなど回復アイテムを使用すればずっと狩りをやりつづける事が可能な仕様であっ゜た。

だがステータスに「空腹」と表示があると言う事は食事を取らないと状態異常を起こす事を意味してるのだろう、同じように宿屋に泊まらずフィールドで狩りを続けると「眠気」や「睡眠不足」が生じる。


「冒険者協会」はファンタジーでよくある冒険者ギルドだろう

クエストの受注とそれを果たした報酬の受け取り

定番の設定であるが、俺のやってたゲームとの相違点である。


(今のうちに確認しておかないと拙い事になる)


マップで現在位置を確認する。


俺の居る場所は地図の北東部分、背後の東屋あずまやは『精霊のほこら


その前を流れる小川は南に流れて大きな沼となり、その中に大小の島々とそれらを結ぶ木造の橋、島には戦闘職や魔職のスキルショップや防具・武具ショップが配置

沼をグルっとめぐる周回道に沿って生産職用施設やレシピ屋が多数建ち並んでいる

まずは腹ごしらえの為に食堂を探すか、ここだと宿屋に含まれているだろう。


俺は道化師ジェスターPDを外して本来の魔道士の格好で歩き始めた。


*******************************


 宿屋には体感で十数分で辿り着いたが、ここで重要な問題点が明らかになった。


以前やってたゲームの中ではモンスター倒せば得られるポイントが金銭代わりで買い物できたのだが、ここではそれらは「お金」として通用して無いのだ。


宿屋の一階に有る酒場兼食堂で食事を注文しようとして前払いで「貨幣決済」を求められた、ゲーム内で使用してたカード決済しようとしたが。


「そのカードは当店では使用できません」


カード残高は1M<メガ>、つまり100万は表示されているのだが使用不可


どうしよう、「海外旅行でカード有るのに飢え死に」とふた昔前の冗談みたいなイメージが脳裏を横切る。


ついでに貨幣の種類を聞いておく

銅貨・銀貨・金貨が一般に流通する貨幣で、たまに宝石が貨幣代わりの決済に使用されてるらしい。

交換レートは銅貨100枚=銀貨1枚、銀貨50枚=金貨1枚

パンと野菜スープの食事で銅貨5枚、それに炙り肉がついて銅貨10枚


いまいちピンと来ないが肉体労働後の食事と考えると肉付食事で500円と考えるべきか、すると銅貨1枚50円、銀貨1枚5000円、金貨1枚25000円


……現代日本の物価で考えても仕方ないのだが、多分この時パニくってたのだろう。

この世界の貨幣を手に入れるには冒険者で稼ぐのが一番と協会のある場所へ向かう


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 考えれば当たり前の話だが「登録料」を失念していた

冒険者登録にかかる必要経費が銀貨2枚、あー、どうしよう。


その時脳裏に初心者クエスト受けた時のひとつが思い浮かんだ


「はらぺこ盗賊クエ」だ


空腹で行き倒れになりかかったNPCキャラに話し掛けると発生するクエストで

フィールドモンスターを倒したドロップアイテムに「いのしし肉」「山くらげ肉」と出て、それを渡せばOKと言う楽なクエストだった。


「うむ、これが当面のサバイバルルートだ」


俺はこの村から出るポータルサークルに向かい、歩き出した。



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