精霊大陸紀行
@plekios
第1話 目覚めれば異世界
気がつけば木々が生い茂る森の中、小川のほとりの朽ちかけた木造家屋の前に居た。
ここが日本、いや地球じゃないのは確かだ。
人の背丈ほどのでかいキノコがごろごろと生え、
犬ほどのサイズのカエルが浅瀬で歌ってる……
だがそれらは「見たことの無い風景」ではない
6年ほどやってたネットゲームで見慣れた場所だ
だが、記憶に有る風景は俯瞰で見てきた奴で
FPS(第一人称視点)でやってた記憶は無い
移動酔いで気分が悪くなるからそれらのゲームは避けてきたのだから。
つかモニター越しじゃなく、頭上から雫がほほに掛かるこの冷たさ
「リアルぽい」なんてもんじゃなくリアルそのものに感じた。
いわゆる「召喚」なのだろうか?
まず身体の具合を確認する
手足や体のあちこちを触ってみる、痛みや痺れは無い、これは良いとして
寝る前は灰色のトレーナーに黒のジャージだったか
今俺がつけている衣服は、青と黒のチェック柄のズボンとチョッキ、袖は同じ配色のストライプ
帽子を被っていたのを手で外して見てみる
服と同じ色と柄でつややかで柔らかくそれでいて丈夫そうな生地だ
肌触りは文句無しである、が
それが二本角のチェック柄……いわゆるジェスター(宮廷道化師)のそれなのだ。
ゲームのアバターの衣装として職業隠すPD(ペーパードール)としてよく着けてた奴か
現代日本では着る機会はまず無いがこの世界ではどうなのだろう、すこし微妙な気がする
キーボードもマウスも無い今の状況だが、思いついたので確認してみるか
「ステータス」と声に出してみる
すると手を伸ばした先ほどの空間に磨りガラスのような四角い小窓が浮かび、数値が記されている、音声対応ゲームはやったこと無いがなかなか便利な機能だ。
【Bell=Katze】
LV120 63.64% Race human Job Wiz
HP 2448/4800 AT 920 DF 340
MP 4330/7500 MA 1890 MD 850
SP 025/ 100 HT 78 AV 60
Condition 『hungry』
レベル1で放り出されてなかった事に安心したがコンディションとSPの数値に眉をひそめる
ゲームしてた時に無かった項目だ、「hungry」は空腹と言う意味だ
…………もしかして餓死とかあるのか、ヤバイ。
「インベントリ・オープン」と小声で命令
ステイタス画面のそばに新たな小窓が開く、ゲームで見慣れたアイテム類はそのままだ
ポーション類はたっぷり有るが食い物と言える奴が無い、拙いな
とりあえずヒールポーションの
封を開けて飲むとオレンジジュースのような味だ。
HPが3048まで数字が上昇、(回復値は600か)心にメモしておく
SPの変化はプラス5で30、「空腹」は大して満たされないと見るべきか。
どこかで食料手に入れる必要有るかなと思い
「マップオープン」と命令したら
『「World」or「Area」?』と答えてきやがった
「腹減ってんだ、近所に食い物扱ってる店ないのか」と立腹して質問したら
『Pardon?』
(「one more please」じゃなく「Pardon」と返事してきたか、なかなか洒落っ気のあるプログラムじゃねぇか)
「日本語でOK」とつい友人との会話調で独り言つぶやくと
『あい わかったアルね、「近辺地域表示」選択でよろしいアルか?』
「…………」
ちょっと意表突かれてしまった、
いや、たしかに日本語で返事してるが、なぜに「謎の中国人風」なんだ
まぁいい、これなら目的の施設を探すのも手っ取り早いだろ。
「この地域の施設名およびNPC名を表示してくれ」
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