Milla the Toddler

3-1

>  魚がまたツウと戻って下流のほうへ行きました。

> 『クラムボンはわらったよ。』

> 『わらったよ』

>  にわかにパッと明るくなり、日光の黄金は夢のように水の中に降ってきました。『やまなし(宮沢賢治)』


「これはある子ども部屋を観察した二つの映像であります」


### 1(映像①)


 白とピンクの壁紙に囲まれた部屋で、二人の女の子が楽しそうに話をしていました。


「ねえ、ミラちゃん。これを見て」


「なあに、エラちゃん」


「私ね、クリスマスにこの人形がほしいって思っているの」


「とってもかわいいね」


「だからママにサンタさんへお願いをしてもらったの」


「私はこっちの子がいい」


「そしたらママがなんて言ったと思う?」


「わかんない」


「いい子にしていたら、サンタさんがプレゼントしてくれるよ」


「すごいシュワキマセリ!」


「シュワキマセリだね。本当だね!」


――キャハハ。


――キャハハハ。


 その時でした。大きなベルの音が家中に鳴り響きました。二人は驚いて声も出せずに、小さく肩を寄せ合いました。奥の部屋から母親がいそいそと現れました。


「あら、まだ起きていたの?」


「ママ、今大きな音がなったよ」


「ええ――来客のようね」


「来客ってなあに?」


「この家に人がやってきたということ」


「人って怖いの?」


「怖くないわよ。ここでおとなしく待っていなさい」


――そう言いながら二人はギュッと抱きしめました。窓から差し込む青白い月の光が三人をぼうっと明るく照らしました。


[Music: Moon](https://www.youtube.com/watch?v=OprAIjiidMw&list=PLf_zekypDG5qBT4O0u7pO6N7__F1FPIYw&index=6)

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