第38話 自分を振り返って④

 次の登校日である月曜日から俺は自然と人との交流を絶った。それはとても簡単なことで自分から会話に参加しなければ自然と一人になることができた。それに加えサッカー部の人たちからは距離を置かれるようになっていたので孤立するスピードも加速していった。


それでも昔からの友人や純粋に俺と話すのが好きな人たちは俺の周りから消えることはなかった。初めはこういった人たちからも離れようと思ったが、それは自分の保身を超えて彼らを傷つけることになりかねないと感じた俺はそうすることを諦め、彼らとは今まで通り仲良くすることに決めた。


その考えは正解だったようで彼らと話している時は辛さや苦しさをすべて忘れることができた。しかしその時間に楽しさを覚えることができるのかと問われると素直に首を縦に振ることができないのが事実だった。


 それからさらに俺の周りの空気は面白いことになり、どうやら俺は女子の間では下劣な人間という認識が定着しているらしい。放課後下駄箱に行ったとき、クラスの女子が俺の事について話していた。少し聞いたところ、俺は〇△さんに無理に関係を迫ったクソ野郎で、両思いだと思い込んでいたイタい人間らしい。


さらにそれがバレると周囲の女子や、女子と仲のいい男子との関係を絶った保身野郎でもあるという。事実をもとにいい感じに織り込められた嘘がちょうどいい塩梅で俺の悪役だという事実だけが強調されてあり、どうにも否定しにくかった。ここで彼女たちに向かって否定をすれば、翌日「私も関係を迫られたー」などと言われかねないので放っておく。


 一部の友人たちは俺の周りの環境が悪化した後も俺と仲良くしてくれていたがそれも三年に上がる際のクラス替えで俺と別れてしまうと自然と交流がなくなった。こういう時は仲のいい人が半分になるや、一人しか一緒じゃなかったというのはよく聞くがまさか全員と異なるクラスに配属になるとは思わなかった。


俺や俺の友人が所属する文系クラスは二つしかないので一人はいてくれるのかと思ったが奇跡的な確率を叩きだしてしまったらしい。もしくはクラス替えの際の教師から要望を聞かれた時に全員俺と一緒になることを拒んだのか。前者よりも後者のほうがあり得るのでそうとしか思えなくなる。


 三年になってからの俺は人と話すことがほとんどなくなってしまった。俺に話しかける人がいなくなったし、そもそも俺は人と話すのが鬱陶しく感じていたのかもしれない。自分の心境がいまいち理解できていない為真実はわからないが、とにかく俺は人との交流がゼロになった。俺が名前を知らないような生徒でも俺の噂は聞いたことあるらしく俺に対しては若干委縮したような眼差しと態度を向ける。


正直そこまで俺という存在に過敏に反応するのなら一度俺と接してみて嫌悪感を露骨に表してくれたほうがまだましなのだがそこまでする勇気はないようだ。このことは悲しいことばかりではなく、嬉しいことも導いてきてくれた。クラスで委員会や担当を決めるときに俺は最も仕事が少なく、なおかつその少ない仕事さえも代理で誰かがやってくれるような役職にばかり配属された。


クラスメートが俺との距離を徹底的に置きたいという旨のメッセージだということは容易に理解することができたがそのうえで俺は楽をできることを喜んだ。


 しかし、そのことがどうやら失敗だったらしく、クラスでの仕事が全くなく、クラスで仲良くする人もいない俺はとうとう学校に行くことをやめた。最初は夏休み後からこの症状が始まった。夏休みで長い間学校に登校することなく自由を謳歌し、一か月後唐突に学校に行くなど無理だ。


普通の生徒でさえ休みがちになるその時期に学校での楽しさが何もない俺が行かなくなるのは必然であった。そして三日ぐらい休んで翌日に学校に行くというのが次第に習慣となっていた。それがだんだんと五日ごと、一週間ごとになり、遂にずっと行かなくなり、引きこもるようになった。秋らしく暑い日中とは反対に夜には涼しくなる、そんな引きこもり日和に俺は不登校引きこもり生活をスタートした・・・


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今回は配分ミスでとても短くなってしまいました。すいません。

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