第8話 THE CUP NOODLES MASTER①
朝イチの招集から解放され、各々の行動に戻ろうとしたとき、俺の携帯に電話がかかってきた。よく知っている番号なので出ると
「今すぐ三人で俺の家の近くのファミレスに来い。いつもの席だ。わかったな?」
と薪下から伝えられる。その後、この場から離れようとしていた二人に説明してファミレスに向かうことにした。
「遅いぞお前たち。さぁ、早く座れ」
ファミレスの中に入るのともうとっくについていたのか、退屈そうにしていた薪下がそこにはいた。電話で招集をかけられてからどこにも寄り道をせず一直線にここまで来たのに遅いと言われてしまった。だったらもうちょっと学校に近いファミレスで集合でもいいじゃないかと言いたくなるが、そう言った意見を薪下に言っても無駄であることはわかりきっているので誰も言わない。なのでみんな薪下の一言多いセリフを無視して席に着く。
「うむ、では話し合いを始めよう」
薪下のその一言から話し合い、薪下以外の三人からすれば本日二度目の会議が始まる。ちなみに薪下の高圧的な言動や相手を不機嫌にする言葉をかけてしまう癖などはあまり慣れていない相手からすると不愉快極まりないと思うが俺たちぐらいのレベルになると全く気にしない。
というのも、昔は度々口喧嘩に発展していたのだが、薪下の歯に衣着せぬ物言いに皆フルボッコにされた。その癖毎回初めに謝ってきて
「すまない。本当にすまないと思っている。だがこれは思春期に生き抜くために得た力の代償であり、永遠にその呪縛から逃れることはできない」
と説明してくれるのでこちらも薪下のその物言いを認めざるを得ない状況になってしまった。後はベクトルは違えど同じ周囲から外れた人間なので、あまり人のそういった点を気にしないため受け入れられたというのも十分にあると思う。
「呼ばれたから来たよー。どうしたのさ」
「まったく、薪下氏が先ほどの会合に参加していれば二度手間にならずに済んだものを」
不思議沢の意見に強く同情する戸口と俺。
「いや、そのことは大変申し訳なかった。体がそんな早くから動き出すことを拒絶していたんだ。だが安心してくれ、内容は全て把握している」
「参加していないのに全て把握しているとはどういうことなのですか?まさか盗聴しているのですか?」
「おう、その通りだ。だから問題ない」
「いやプロブレムしかないのですが!?」
不思議沢があまりにも大きな声で薪下にツッコむので両隣の席に座っている人がこちらを向く。でも正直今の対応は仕方ない気がする。だって明らかに薪下が異常なのだから。不思議沢が冗談で言ったであろう問いかけに肯定で返答してきたのだから。盗聴というよろしくない行いを然も当然かのごとくやっているのだから。当たり前の反応をしたら周囲から注目の的となってしまった不思議沢を俺は心の中で慰める。
「あ、あぁ・・・一応お聞きしますが盗聴器はどこに仕掛けているのですか?」
「なんだ。気になるのか?」
「当たり前でしょう。これ以上友人にプライバシーを晒すのも罪を重ねられるのも私たちは望んでおりませんから」
「そうなのか。まあ場所は簡単だ。お前らに一個ずつ渡した友人の証兼俺の予備であるカップラーメンがあるだろう。あれ実はカップラーメンの中に盗聴器が入っている。どうだ、スタイリッシュだろ」
俺はリュックの中から薪下にもらったカップラーメンを取り出す。コレは薪下と俺たちが初めて出会ったときにそれぞれ貰ったやつだ。友人の証兼薪下の予備ということで大切にしていた。もちろんカップラーメンは食品なので消費期限があるが、それが近づくたびに薪下が回収して新しいやつと交換してくれていた。
もしかしたら薪下が食べるかもしれないと思い常に持ち歩いていたそれを開けるとしっかり盗聴器が入っている。まさかカップラーメンの中が盗聴器だとは欠片も思ってもいなかったので驚きを隠せずにいる。脳の動きが遅くなりながらも友情の証(盗聴器)を机の上に置く。どうやらしっかり持ち歩いていたのは俺だけらしくほかの二人は驚きこそ見せたが友情の証(盗聴器)を机の上に出すことはなかった。なんだか薪下の言うことをすっかり信じて毎日コレを持ち運んでいた自分の馬鹿さ加減に呆れ更に脳の動きが遅くなるのを感じる。
「キョム氏のを見る限りどうやら本当のようですね・・・はぁ。そのことは置いといて本題に行きましょう」
「そーだねー。本題、なんで僕たちがここに呼ばれたかだね!」
「まぁそれも大体推測が付きますが・・・」
「うむ、お前たちの推測通りであろう。そう、私も妖怪が見たい。そして、その方法に心当たりがある」
「な、なんだって!?」
薪下の発言があまりにも衝撃的だったのでつい言葉に出してしまった。
「喜代村ー、すごい驚きようだね。でも俺も同じぐらい驚いてるかなー」
「二人と同じく私も驚いておりますが。それで薪下氏、その方法について教えていただいても?」
「はははっ、全員を驚かせるネタを持っているなんて嬉しいこと限りなし。では、教えてやろう・・・」
薪下がもったいぶらせるために生み出した間なのか、それとも無意識なのか。どちらかはわからないがその生まれた間によって俺たちの体は緊張に包まれる。そして、その眼差しは全て薪下に向かう。
「・・・・あぁ、そぉぉぉ」
「「「そぉぉぉ?」」」
この瞬間、三人の思考は全てそぉぉぉに続く言葉、もしくはそぉぉぉとはどのような方法なのかに全キャパシティを使う。そうして次に薪下が発する言葉を必死に待ちわびる。
「そぉぉぉの前に何か注文をしよう。腹が減った」
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『偽りの世界で。』第八話を読んでくださりありがとうございます。
タイトルの表記でわかる通り今回も前後編に分けているため文字数が少なくなっています。
何か評価があると嬉しいので読んでくれた方はお願いします。
次の話は少し遅らせて投稿してみようかと思います。
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