第12話王家の紋章
家に帰り着くと、少年の格好をしたクリスティーナに、ペギーは仰天した。
クリスティーナはもう堂々とこの格好でいようと決めた。自分は王子の従者に認められたのだから。ペギーにその説明をせねばならない。
クリスティーナのそんな決心も知らず、ペギーは抜け落ちんばかりに目を見開くと、体を小刻みに震わせた。
「その格好は一体なんですか! クリスティーナ様は女の子なんですよ!! おわかりですか!? なんてみっともない! おかしな噂が流れたら、評判を落とすのはクリスティーナ様なんですよ! ああ!! これではお嫁になるなんて、夢のまた夢ですよ」
ペギーががっくりと肩を降ろしたところで、クリスティーナは追い打ちをかけた。
「平気よ。お嫁になんていかないもの。だって、わたし――」
ペギーは勢いよく眉を怒らせ、クリスティーナを遮った。
「まあ、なんてことを! もうお話になりません! 散々口を酸っぱくしてもおわかりにならないようですから、自分の何が悪かったのか、次にわたしが部屋を訪れるまで、じっくりおひとりで、お考えになるといいでしょう。わかるまで、部屋から出てはなりません!」
ペギーは無理矢理部屋まで追い立てると、クリスティーナを閉じ込め、ばたんと勢いよく扉を閉めた。廊下を踏み鳴らす音が遠ざかっていく。
クリスティーナはもう何を言われても、自分の考えを改める気はなかった。
その日、ペギーを更に驚愕させる二度目の出来事がおこった。
王宮より使者がやってきたのだ。その手には王宮からの書状を携えていた。封蝋は勅命を意味する赤々とした王家の紋章だったのである――。
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