第13話エメット家の使用人たち

 当然、ペギーと執事のロバート、もうひとりの女中ネイシー、たったの三人ではあるが使用人の全員が驚き、慌てふためいた。王家と普段、何の関わりもないエメット家である。見当もつかない手紙の中身に、面付き合わせて考えるも、埒があくはずもなく、だからと言って、当主に無断で手紙を開けるわけにもいかない。肝心の当主はふらりと出掛けたまま、いつ帰ってくるかわからないため、現状を打破する助けにはならない。勅命を放置することもできず、もし急ぎの命なら、遅れたことで何らかのお咎めがあるかもしれない。


 普段、領地とやり取りをしている白髪のロバートがごくりと唾を鳴らした。




「仕方ない。ここは当主のデクスター様ではなく、ご領地にいるバイロン様に届けて、開けてもらおう」




 三十後半の白髪が混ざり始めたネイシーも賛同の声をあげる。




「そうですね。それが今できる一番の解決策ですしね――」




「そうと決まれば、明日の朝一番に、手紙を出さなければ。わたしが一筆書き上げるから、ペギー、これが入る封筒を用意してくれないか」




 ペギーは鷹揚に頷く。




「わかりました。そしたら手紙はわたしが出しに行きましょう。大事な手紙ですからね、道中、何があっても掴んで離さないよう心掛けます」




「頼んだ」




 三人がこうして悩んで出した答えも、翌朝には徒労に終わった。


 当主のデクスターが朝帰りで家に帰ってきたのだ。


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