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朝学校へ行くと、お調子者の男子が声をはりあげた。
「今から
ここにいる生徒、いまからしゃべるの禁止、というゲームだ。
この男子は、そうすることによって、わたしがもっと喋らない子になるのがわからないらしい。
ぷはっと吹き出す音が聞こえ、周りの生徒がつられたように笑い声を立てる。
「さすが。蛍には勝てないわ」
わたしにとどめを刺しているのが無自覚なのか、わざとなのかわからない。子供だからって、何を言っても許されると思ってる。
*
図工の時間は苦痛だ。特にアイデアが思い浮かばない時は。好きでもない人と、名前順の4人組で席につく。
わたしの苦手な「大人しい」子、
バケツにくんだ水でピチャピチャ音を立てながら、わたしの口は勝手に動いていた。無自覚だ。幼稚園の頃にも、自分が何を喋ってるのかわからないことがあった。
花実ちゃんは何も相槌を打たない。いや、打てないのかもしれない。「大人しい」子なんだから。
気がついたら、花実ちゃんがこっちを見て言った。
「あ、しゃべった」
わたしは黙る。いきなりそんなことを言われるとは思わなかったから。
「っていうと、しゃべらなくなるー!」
花実ちゃんが嬉しそうに笑った。
そのとき、わたしが喋らないようにするために、“あ、しゃべった”というセリフを言われたことを知った。
なんでよりによって「大人しい」ふりをした、花実ちゃんに言われなければならないのだろう。
花実ちゃんは、わたしが内心で馬鹿にしているのを見透かしていたのかもしれない。それでも悔しくて、そんな自分が醜くて。
わたしはこの日、人としゃべるのを諦めることにした。
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