大解剖!節約術

知哉「お前の収入が少なすぎる。よって節約をしなければならない」


優歌「節約ってあの節約?冗談でしょ?」


知哉「知ってるなら話は早い。今は俺の収入の方が多いから従ってもらう。」


優歌「……わかったわ」


案外素直に聞いてくれた。しかし、彼女の節約は一般人にとってのプチ贅沢と同じレベルのものだった。

なので、節約術を叩き込んだ。


知哉「まず、外で喉が渇いたらどうしてる?」


優歌「そんなの簡単よ!その場で買えばいいのよ!」


知哉「それがダメなんだ。家から飲み物を持っていく方が格段に安く済む」


優歌「どうしてなの?」


知哉「外で買うとその店は利益が欲しいために高く売るんだ。だから家から持っていくと安く済むんだ」


優歌「分かったわ、家から持っていく」


こんな調子で、あと二つ程教えるとすぐに改善しようと努力していた。それほど経済状態が悪いのだ。焦ってもらわないと困る。


そして、もう一つ裏の目的も存在する。それは、優歌の性格が変わって丸くなる事だ。どうしてそれを期待できるのかというと、あいつの尖った性格は生活に不自由なく、ワガママを言える環境だからだと思っている。

貧乏で、周りに頼らなくてはいけない状況だと、自然と優しくなると踏んでいる。


期待して一ヶ月、何も変わらなかった。あいつの性格は生活環境とかではなく、生まれつきのものだということが分かった。性格が良ければモテるはずなのに。


優歌「その野菜まけなさいよ!こんだけ買ってるんだから」


店員「お嬢さんには敵わないなー。いいよ!おまけだ」


こうなる度にあいつの代わりに誤っている。それでも煙たがられたりしていないだけ凄い。何かそういう素質があいつにはあるのか?


そうしてこの狭い部屋には優歌が"まけて貰った"商品で溢れかえっていた。


優歌「見なさい!これだけあれば困らないわ!」


知哉「確かに凄い。でもこれは間違ってる」


優歌「何が間違っているのよ?食費には困らないわ」


知哉「それはそうだが、これを一つ残らず使う事ができるとは言いきれない。恐らく廃棄するものもでる。それは無駄なんだ。節約にはならない」


優歌「それもそうね……。そうだ!料理にしてみんなに分けてあげるのはどう?」


根は優しいのだろう。それでなくてはそんなアイデアはでない。ただ、初めての事だから深く考えられないだけなんだ。


その日の夜は、あいつが大勢の人を集めて「今日は私の奢りよ!好きなだけ食べなさい!」と言って料理を振舞っていた。その中にはあいつの犠牲者になった店員も見かけた。


優歌「あんたの言ってた"節約"分かった気がするわ」


知哉「分かってくれたならいいんだ。そして何かする時は一旦考えてから実行した方が良い」


優歌「分かってるわよ!そのくらい」


優歌(どうしてこんなにドキドキするの?あいつの事は気にもかけてなかったのに)


知哉(それでも少し生活がきついな。あの仕事やらせてみるか…)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る