ストーリー114、115

ストーリー114:バンズ別の提案


登場人物

ルイス、ガルシア、ラムル、バンズ、ポートル、(ジャン、カウル、ピコ、ピク、フライ台詞無し)


 エンジャー郊外のガルシア邸近くの斜面に、カーラントを着陸させ全ての面々がリビングに。


 ガルシア「ちょっと狭いから、Ann達は壁の側で待機しててね。皆んなは荷物を倉庫に入れたら座ってちょうだい。今お茶の支度をするわ。ルイス、手を貸してね。」


 倉庫から出て来るラムル、バンズ、ポートル。


 テーブルに来てそれぞれ座った。


 ガルシアとルイスも戻る。


 ガルシア「まずはひと休みしましょうか。」

バンズ「早速なんだけど提案が……。」


 カップを手にしていた面々は既に会議体制だ。どうやら気の合うメンバーらしい……。


 バンズ「アタイ……、アタイ、ミクラットのカスタマイズが済んだら、また地球に行きたいんだ。」

ガルシア「あれから3ヶ月?地球のこよみでは1年近く時間が過ぎているわ。何の危険も無いの?私はまたルイスの死にそうな顔を見たくないわ。バンズ。」

ルイス「ガルシア?それは連絡が取れれば、私は構わないと思ってるわ。でも地球は遠過ぎるでしょ?リターナに遊びにちょっと行くのと訳が違うわよ?」

ラムル「バンズが渡した物が気になってるとか?」

バンズ「それもあるけど、ルイスさんの心配するその連絡の事。……地球と通信するにはどうしたら出来るかって考えてみた。あの時グランは連絡が取れないかと言っていた。……地球と通信するには、中継ポイントに軌道修正を自動でやる衛星をいくつも用意すれば間違いないんだ。でもアタイ達じゃ無理の無理。」

ポートル「バンズの考えた結論はどうなの?」

バンズ「地球に行っている間だけ、船が代わりに通信の中継ポイントにするっていう結論。ステルスが有れば実験するだけなら地球に悟られなそうだし。」

ガルシア「うーん上陸するわけじゃないし……。悪くないけど、船が足りないわ。……ここからミクラットを使ってやっと通信出来たのは、ノアーナと地球の1/3位の場所だったでしょ?中継ポイントは2ヶ所、いえ3ヶ所は必要じゃないかと感じるわね。」

ポートル「船で中継するとして、バンズは船持ってないから、私のマーデクトに、ラムルのカーラント、カスタマイズ後のガルシアさんのミクラット……。それでノアーナと地球付近の船はどうするの?」

バンズ「それは……。思い当たらないでも無いんだけど……。」

ラムル「対策軍の船はいっぱいあるわよ〜〜〜。借りちゃう?」

ルイス「ラムル、無茶言わないの!」

ラムル「冗談よ母上。……1度の通信だったら行って話しても同じよ。継続してやり取りするのが目的でしょバンズ。」

バンズ「そう出来たら考え事も無くなる。」

ガルシア「それで、バンズは、渡したウロムナ金属のその後が知りたいの?」

バンズ「ええ。それでまずは通信試験だけでもと……。それで……。その……。」

ポートル「なんだかバンズらしくないのね。実行すると決まった訳じゃ無し。あくまで提案でしょ?」

バンズ「アイツ……。グランのことさ。軍の重責を背負って侵略者に立ち向かってる。グランは片目を失ってるんだ。……あのままの地球の技術力じゃ近いうちにやられちゃうよ。……アイツらの人型のデータを整理してて分かったんだ。地球の人型相手なら、ノアーナのフローターに武器を付けて戦える程度でしかない……。」

ルイス「グランの重責、軍の責任者だから?……ブロントと同じ立場だわね。ノアーナの軍は今の技術力が有って会敵対策軍として成立してるんだものね。バンズは地球の軍人の手助けをしたいと考えてるのかしら?」

バンズ「グランは、アタイやポートルに武器を向けなかった。武器を使うのは反逆軍と侵略者から地球の人々を守るためだからって言ってた。今の地球ではそれが正しい事なんだろうとアタイなりに理解した。争いなんだけど、守る物があって行動してる。アタイは軍人に手助けとは少し違うんだと思ってる。……だからグランの行動に協力したくてさ……。」

ガルシア「言って伝えるのも、図に書いて伝えるのも容易たやすいわ。でも、作り出せなきゃ夢物語よ。……ノアーナと地球、全く同じ惑星ではないわ。同じ岩石惑星ってザックリ考えてはダメなのよ。ノアーナでは普通でも地球では未知。しかも進化に差が有り過ぎる。」

ポートル「私は今の地球では同じ物、作れないと思う。」

バンズ「ウロムナ金属はノアーナじゃ普通に使ってる……けど?」

ガルシア「あら?バンズは詳しくなかったの?……ウロムナ金属はウロムナ鉱石とノアラート鉱石で作るのよ。ノアラート鉱石30%を最低含有率として合成するのがウロムナ金属。」

バンズ「そうだったんだ……。じゃあウロムナ鉱石とノアラート鉱石のどちらかでも無かったら作り出せないって事かぁ……。」

ガルシア「いえ。特殊な金属はノアラート鉱石の方。」

ラムル「地球には無いかも知れないわよね。どうしても地球人では作り出せないってのなら……教えるしかないのかしら。」

ルイス「地球に置いてきて1年位?……組成分析位は済んでるでしょう。それで未知の素材が発見されて……。もしかしたら近くの衛星や惑星に探しに行くんでしょうね……。ラムルの言うように、仮に教えたとしても無理ね。別の惑星から採掘する技術力も追いついていないでしょう。」


 ガルシアは空になったポットに紅茶を入れ、戻ってきてテーブルに置くと、


 ガルシア「グラン1人では到底出来る筈ないわ。今頃はチームを作って取り組んでるでしょうね。グランが最高責任者としての立場なら、最高機密としてのチームで研究してることでしょう。ここの私達しか地球を知らないのと同じ。最初は数名でしか取り組めない。反逆軍って厄介者もいる訳だから、開発までなんて到底無理。」

バンズ「アタイ達では状況は先へ進まない……か。」

ルイス「ノアーナが他所よそ惑星ほしと交流を持たない立場でいる限りは無理というより不可能なのよ。バンズの気持ちはよく分かるわ。通信の話も、とてもいい提案よね。ここの私達だけの計画ならね。……ノアーナの立場を変えない限り、やる事全てノアーナ法に触れてしまうのよ。」

ガルシア「現状、私はバンズ寄りよ。私達だけの計画なら問題無いと思うの。……正直な気持ち、私はノアーナのRJ計画はいいと思う。でもこれはノアーナ星の自己満足に過ぎないと思ってるの。しかも無責任な計画と実行よ。RJ計画を続けるのであれば、その後の事も含めての計画でなきゃ、私は納得出来ないわ。」

ルイス「皆んなよりも若い頃から、ガルシアはそう感じてきたわ。私も同じ。ラムルにはその事も言わずに育ててきた。……ねぇ皆んな、ガルシアの話を思い出して。……ノアーナも地球も全く同じでは無いって事。それは惑星ほしが違うんだもの当たり前の話。たまたま地球人って、見た目はノアーナ人と変わらない。でも違うところが分かってきたでしょ?惑星ほし自体も同じなのよ。……私もバンズの気持ち、応援したいわ。……でも今は私達で出来る範囲にしておくべきね。で、バンズはまず通信手段を考えている。のよね?」

バンズ「……アイツに協力したかったから……。」


 ラムル「そこで問題が出来ちゃったわ。ウロムナ金属の事。ウロムナ鉱石とノアラート鉱石の事。ダイム金属の事も有るけど、ダイムはノアーナの話だから後回し。組成成分、地球では何が足りないかしら……。」

ポートル「地球には何が足りてないのか、分かればいいのになー。それって、通信出来れば直ぐ分かるんだけどね。」

ガルシア「地球と往復するのは可能だと分かっている。相互に通信出来れば話が早く展開できる。通信で聞く事も伝える事も出来る。作る物の問題は解決するには難しい……地球にとってのメリットは多そうね。当然、計画の実行中の危険も考えなきゃならないわ。」

ルイス「さぁ皆んな、バンズの提案に賛成出来る人は挙手を!」


 バンズを含めて皆んな手を挙げた。


 Fade-out。



ストーリー115:ミクラットカスタマイズ開始


登場人物

ルイス、ガルシア、ラムル、バンズ、ポートル、(ジャン、カウル、ピコ、ピク、フライ台詞無し)



 ガルシア邸リビングで早速持ち上がったバンズの提案だったが、反対する者はなく別の機会の話に持ち越された。


 ガルシア「さて、バンズの案件は保留として、そろそろミクラットの準備に取り掛かりましょうか。」


 5人とAnn達はドックに向かった。


 ガルシアが全ての電源を入れて戻ってくる。


 メインルームのモニターテーブル中央にソディナが上がってきた。


 ルイス「ガルシア。私はジックのところで直接聞いてみるわ。バンズ、一緒に話を聞いててくれる?」

バンズ「ええ、ご一緒しますね。」


 ガルシア「さてと。ラムルとポートルは座って待ってて。」


 ラムルとポートルは人数分に足りないシートを持ってきて座った。


 ガルシア「ソディナ?私よ。今日は大事なお知らせ。このミクラットからあなたとジックを切り離そうと思うの。切り離してミクラットを飛べるようにする為に何が必要かしら?……大丈夫。ジックの事は心配無いわ。ルイスが来てるの。今ジックと話してるわ。」

ソディナ「ガルシア様、私を元に?ですか?」

ガルシア「あら驚いた?これは今日ここに集まった皆んなで決めたのよ。少しは喜んでくれなきゃ。……モニターテーブルの太いケーブル2本を元の所に差し込めば、ソディナだけで出来るのかしら?」

ソディナ「電源用ハーネスを最後に取り外しますが、それはガルシア様にやってもらわねばなりませんが、他は私でも出来ます。」

ガルシア「分かった。念の為、船の主電源を落としてしまうから待っててちょうだい。」


 一方で、ジックの前のルイスとバンズ。


 ルイス「ジック、こんにちは。今日は大事なお知らせよ。ミクラットからあなたとソディナを切り離す事になったわ。ここに皆んな来てる。切り離し作業であなたが出来る事と出来ない事を教えて。」

ジック「ルイス様?ミクラットはどうなるんでしょうか?……」

ルイス「……ケイドは解体されてしまったけど、ミクラットは大丈夫心配しないで。飛べるようにカスタマイズするんだから。」

ジック「分かりました。ではまず、主電源を落とした後、私の左右2対のケーブルを推進機関の制御盤の元の位置に差し込んでください。主電源を入れ直したらあとは自分で出来ます。それから最後にもう一度主電源を落とし、私の電源ハーネスを外せば完了です。」


 ルイスはバンズを見て、

バンズ「分かりました、ルイスさん。」

ルイス「じゃ、ジック。ちょっと待ってて。……Ann達は分かれて通信役をしてもらいましょ。」

バンズ「ピコー、カウルー。機関室に来てー。」


 しばらくするとピコとカウルが入って来た。


 バンズ「ピコ、メインルームのジャンと通信。」


 メインルームのジャン。


 ジャン「バンズ様から通信。繋ぎます。」

ガルシア「通信役ね。ありがとうジャン。……バンズ?ジックの話は聞いた?」

バンズoff「はい。2回主電源を落とすわけですね。ピコとカウルは通信とサポートで呼びました。」

ガルシア「さすがバンズね。じゃ、主電源を落とすわ。」


 画面暗くしてディゾルプ。


 1回目では太いケーブル運びを手分けして、Annがそれぞれサポートし、完了した。


 2回目の主電源を落としたミクラット機関室。


 ピコは通信役、カウルは照明役。


 バンズ「ハーネスを抜いて……っと。ルイスさん、終わりです。」

ルイス「ええ、終わったわね。」

バンズ「ガルシアさん、こっちは完了。終わったら主電源入れてください。」

ガルシアoff「了解。……ポートル?どうかしら?……OK?。終わったわね。じゃ電源入れるわー。」


 再びミクラットに電源が入った。


 ピコの側のバンズ、

バンズ「ガルシアさん、最後に外したハーネスは、ジックとソディナ用の電源ハーネスなので、船側を抜いたらOKです。もう不要のハーネスになります。」

ガルシアoff「了解バンズ。……ポートルどう?それは不要になるらしいわ。……でも……これで手順は良いとして……これで終わりだったかしら……。」


 メインルームにルイスとバンズが入って来た。


 ルイス「ガルシア、まだ終わりじゃないみたいよ。」

バンズ「推進機関の制御盤のシステムボードが入ってないのですが、ガルシアさん、それは?」

ガルシア「……それが……まさか今日になって、Ann達を切り離すなんて考えもしなかったから、当時既に処分してしまったの……。」

ポートル「じゃあミクラットは飛べないじゃない。」

バンズ「アタイも見て思った。マーデクトと同じで、システムボードがメインルームと推進機関の2ヶ所に有るタイプなんだよ。」

ルイス「年代物だものね。仕方ないわ。」

バンズ「それから、ジックとソディナの再起動もまだ出来ない。っていうか新しいボードにデータを移すまで再起動しない方がいい。新しいデータの整理で負荷が掛かって可哀想だから。……データ移行するまで半日は必要だね。メインルームのシステムボードは最新の物に差し替える。推進機関のシステムボードはなかなか手に入らないかも……。」

ガルシア「ビブレスで探さなきゃならないって事ね。」

バンズ「そうなります。」

ポートル「マーデクトもバンズが数日間掛けてたから、ミクラットも同じ位掛かりそう?」

ラムル「上手く手分けできないの?」

ガルシア「ビブレスでメインルーム用と推進機関用ボード調達ね。これはバンズに任せたいわ。私のフローター使って構わないけどどう?」

バンズ「はい、じゃあビブレスにはアタイとピコで向かいます。」

ガルシア「ミクラットでやる事は……。最新のボード用にハーネスの交換が必要だからその準備。機関室では何か気が付いた事は有る?バンズ?」

バンズ「ボードに合わせてハーネスを作る場合も出てくる。機関室のスペースが広いから、欲を言えば量子エネルギーの増設。オーバーホール。後部専用の外部カメラやサーモグラフィーに解析系機器、両サイドに部屋を作っちゃうってのも有り。」

ガルシア「バンズ。そこまでしなくても良いのよ。Ann達が切り離された。ミクラットが飛べる様になった。……これで十分。バンズの希望は覚えておくわ。徐々に思い当たる所から調達して、その時はまた皆んなに手伝ってもらうわ。」

ポートル「じゃあ私は日暮れまでにバーベキューの支度―。」

ラムル「はぁー。ガルシアさんと初めて楽しくバーベキューしたのが病みつきになったみたいねポートル。……じゃ私も手伝うー。」

ルイス「バンズ、私もビブレスに付き合わせてもらえないかしら?……ガルシアと同じ様に、私にもあまり気を使わないで構わないのよ。」

バンズ「では、お願いしますね。ルイスさん。」

ガルシア「それじゃ、ビブレス班は向かってね。残った私達はミクラットの準備が終わり次第ポートルの提案に従いましょ。」


 ディゾルプ。

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