ストーリー116~119
ストーリー116: 30%の不明な物質
登場人物
グラン、タロン
ラボラトリー・レンブラントの地下3階、ラボフロアーにあるタロン=ダグラスのデスク。
金属片を手にグランへ直通電話をしている。
タロン「グラン?俺、タロンだが。例の金属片の組成成分の30%程含まれている物は、どうやら地球には無い物のようだ。他の成分は鉄、ステンレス、タングステン……。地球では使わない合成なのだが残りの不明な物が全ての鍵だろうという皆んなの結論に至ったんだがな。」
グランoff「強度実験はどうだい?」
タロン「タングステンやステンレスなど比べ物にならない強度だよ。ここの実験装置では確認出来ない程だ。」
グランoff「よほどの強度を持つ訳か……。」
タロン「HMが使うレーザービームの50%の強さまでは実験で跳ね返すのが分かった。十分それ以上の強さにも耐えそうだ。こんな金属はここでは作れない。作り出せても加工すら出来ないシロモノだな。」
グランoff「今後はどう対処するか、だな。」
タロン「月や火星のサンプルが有る。成分を照合確認するよ。どこから来たか分からない隕石で照合しても無駄だからな。」
グランoff「時間が掛かりそうだ。開発局から引き継いで行う事が有ったら、レンブラントに廻すと思うがそれは機密の度合いを判断してからにする。また連絡待ってるよタロン。」
タロン「月や火星以外のサンプルとも照合するよ。じゃ、また。」
レンブラントで取り掛かった金属片(ノアーナのウロムナ金属)の解析は不明な物質のまま作業が継続された。
ディゾルプ。
ストーリー117:手詰まり
登場人物
タロン、ラボ研究員A、グラン
レンブラント地下3階。ラボフロアーでは、不明な物質の解明に全力を注いでいた。
タロン「近い星から当たってみたが、条件に合う物質は無し……。」
研究員A「所長、火星の衛星フォボス、ダイモス、それにガリレオ衛星からも発見出来ませんでした。過去に探査機から採取した小惑星とも一致する物質は無いとの報告が。……この先は未開の惑星からの資料採取しての照合しか方法が無いと思われますが……。」
タロン「ご苦労。一旦、開発局の支援作業に移行。……小惑星にも一致しない成分か……。木星や土星の輪から網ですくって来いとでも言うのか!くそっ!……製造金属の30%も必要となったら星一個運んできた方が早いんじゃないのか……。」
連邦軍総督室。グランのデスク。
直通で電話が入った。レンブラントからであった。
グラン「私だ、タロンか?」
タロンoff「グラン、限界だ。照合出来る資料は全て一致しなかった。ガリレオ衛星の資料まで照合した。それでも発見出来なかったよ。木星、土星にある輪からの採取でもして照合してみるかだな。照合出来る資料が無さすぎる。これ以上は……。」
グラン「キースはどうした?ヤツは何と言っている?」
タロンoff「あぁ、天文マニアは太陽系外惑星を当たるしか方法はないんじゃないかと言っていた。HMでも系外までは無理だ。」
グラン「そうか……。それから、水星近くで発見された物体の詳細は分かったのか?」
タロンoff「当たっているよ。月より小さな物体で詳細画像が得られないのが正直なところ。別チームで当たっている。」
グラン「別件になるが、最近になって、軍に不明瞭な通信電波が時折入ってくるようになった。侵略目的の生命体からかも知れん。HMには装備強化を進めたいところだが、金属片ではシールドにもならん。作れることを期待していたのだが……。」
タロンoff「残念だが良い知らせは無いよグラン。だが、レンブラントでも出来る限りを尽くしているよ。」
グラン「あぁ。また連絡を。」
直通電話を切ると、
グラン独り言off「思い当たる所在はノアーナのみ……か。それともノアーナと惑星齢の近い星なら見つかるのか……。いやその探査は地球では出来ないな。……太陽系外惑星、もしくは系外の小惑星や衛星。……彼女達の
立ち上がり窓辺に立つグラン。
同じくグランoff「ノアーナとの星間協定……。地球史上初の歴史。未知の体験になる……か。……雲を掴むような話だと罵倒されるだろうか?気が違ったのかと思われるだろうか……。不明瞭な通信の主が高度文明の侵略者だとしたらここが危ない……。もう守る事も出来なくなるのか……。」
ディゾルプ。
ストーリー118:想像は実現へ
登場人物
グラン、回想のタロン、通信有識者、有識者A、HM技術者、タロン、キース
総督室。グランは日も暮れようというのにまだ窓辺に立っていた。
ストーリー73の一部回想。
タロン「地上の大気や地球地場で鮮明画像を捉えられない。だからいくつもの宇宙望遠鏡を静止軌道に置いてるのさ。技術部の最先端技術だぜ。HMに望遠鏡持たせて宇宙に飛んでもらったらいい画像が手に入るかもな。」
タロン「HMに望遠鏡持たせて宇宙に飛んでもらったらいい画像が手に入るかもな。」
回想終わり、窓辺のグラン、
グランoff「不明瞭の通信解析、衛星軌道上でHMで出来ないか⁉︎……1度会議をしよう…。」
連邦軍会議室。通信関係の有識者、HM技術者、レンブラントのタロン所長とキースも召集された。
グラン「最近多発している不明瞭通信について。通信関係の有識者代表としての見解の発言をお願いする。」
通信有識者「地上、衛星を使っての解析は現状が限界です。宇宙望遠鏡に匹敵する規模の通信衛星が必要です。」
グラン「現状の通信衛星では解析不可能と?」
通信有識者「残念ですがそうお答えするしかありません。」
グラン「……私からの提案を1つ。HMを衛星軌道より外まで向かわせ、通信のやって来る方向で傍受出来ないものか?通信衛星に似た装備を作りHMを使う。レンブラントのお二人に意見を。」
タロン「それは大きさによっては可能かと。」
キース「地球最大の通信衛星でもHMと連結してなら楽に向かえるかと感じます。」
グラン「有識者諸君の意見が有ればお聞きしたい。」
有識者A「費用の面では既存通信衛星を利用するのは賛成できますが、HMの行動範囲の限界がどこまでなのか……。」
グラン「HM技術者代表の意見を乞う。」
HM技術者「デリケートな操作にはHMは向いていません。専用のHMの建造が必要だと考えます。」
グラン「費用、新規HM建造期間。かな?誰か名案は?」
タロン「現状、HMは最新の技術を集め開発局が作った物。この最新のタイプのHMに合わせて通信モジュールの設計建造の方が低コスト、短期間で実現出来るかと。」
グラン「今回の不明瞭通信、解明せねばと危惧している。早急の手配が必要であるのだ。新タイプのHM用通信モジュールの建造の提案、反対の者は?」
参加者の誰も意義を唱える者は無かった。
グラン「皆さんの考えの一致と見てよろしいか?。期間は早い方がいい。直ぐにでも取り掛かるようお願いしたい。」
ディゾルプ。
別のとある時節、連邦軍総督室。
グラン「やあ、タロン。先日の軍会議、お前とキースの飲み会が無ければ出せない提案だった。助かったよ。」
タロンoff「あの後キースはしたり顔だったんだぜ。またアイツを飲みに誘ってやってくれ。」
グラン「ところで、通信モジュールの方は進んでるのか?」
タロンoff「ああ。レンブラントで設計図を起こした。開発局が取り掛かってくれているよ。HMで大気圏離脱の為のシールドも併せて作っているところだよ。まもなくグランには知らせが届くはずだから、もう少し待っていてくれ。」
グラン「通信が来る方向は確認出来たそうだ。HMでどこまで向かうかは検討してもらっている。HMの操縦者は、副官に行なってもらおうと思う。」
タロンoff「レインズが操縦か。それは安心して任せられそうだなグラン。」
ドック内に格納中のヒューマノイド=アーマーの姿の画over-up。
ストーリー119: 1番弟子
登場人物
バンズ、ルイス、コクピットのピコ(台詞なし)
ガルシア邸を飛び立ち、ビブレス=ガルに向かう途中。フローター内でのバンズとルイスの会話である。
バンズ「ルイスさん、少し聞いても良いですか?」
ルイス「何かしら?私で良ければ聞くわ。」
バンズ「アタイのじいちゃんの事……。長官やルイスさん、何か知ってる事が有れば聞かせてください。」
ルイス「ロワート=グロビア博士の事?……。私はまだブロントと知り合う前の話だったから詳しく分からないのよ。博士号を取った時の話は聞いてるけど、2人はカウルのカスタマイズからの繋がりで、その後設計等色々依頼していたそうだけど……。」
バンズ「カウルは人型のカスタマイズを受けてるけど、長官の考えはご存知無いですか?」
ルイス「ラムルがカウルの事を知ったから、今なら何か聞けるかも知れないわ。でも彼の立場上、軽はずみな考えは持たないと思うのよ。彼個人としての考えなら話せるだろうけどね。……バンズは博士の事、知りたいの?」
バンズ「じいちゃんの事で1つ解決しなきゃならない事が有って……。それを今するか、まだ早いのか……悩んでいて……。」
ルイス「バンズは博士の何が知りたいのかしら?ノアーナ1番の技術者、その辺かしら?それとも博士の手掛けた仕事の事?」
バンズ「じいちゃんが軍の仕事で忙しそうだったのは覚えてるの。今まで手掛けた仕事の事は興味有りません。カウルの刻印を見た時は嬉しかったけど、それ以外は別に。……忙しく動いていた頃の話、何か知らないかなと思って。」
ルイス「ブロントなら分かると思うわ。もしかしたらラムルとも話をしてるかも……。いいわ、バンズの為だもの、ブロントに聞いてみる。その話はしばらく待ってちょうだいね。」
バンズ「ありがとうルイスさん。」
ルイス「だから今はやる事片付けちゃいましょ。……あ、そうそう、急に用事を思い出したわ。……ビブレスでシステムボードを調達したら、少し別行動していいかしら?フローターで待ち合わせという事で構わない?それともバンズも一緒でも構わないけど?」
バンズ「ええ構いません。付き合わせてください。」
ビブレスのとあるフローター駐機場。
システムボードの調達を済ませ、貨物室に積み込んだ所。
ルイス「思ってたより重い物ね、ピコがいて助かったわね。」
バンズ「ええ。ポートルのマーデクトの時もピコに手伝ってもらったから。……じゃ、ここからはピコは中で待って……。」
ルイス「いえバンズ、ピコも一緒で。フローターで行った方が早そうだから、それでいい?」
バンズ「行き先IDは分かります?」
ルイス「それが分からないの。でも私がコクピットに座るから。」
フローターはビブレス郊外に飛んだ。
ID登録せずにマニュアル操縦だったが、それを見ていてバンズは感心している。
当然オート操縦では出来ない航行だからだ。
ルイス「まもなく着くわ、お待たせ。」
バンズ「驚きました。ルイスさんがマニュアル操縦でここまで飛ぶなんて……。」
ルイス「ラムルには出来ないわよね。これは昔のケイドのおかげかしらね。」
バンズ「ケイドって、ルイスさんの
ルイス「面倒だから私が操縦した方が早かっただけよ。あとはジックがやってくれてたし。」
バンズ「なんだかルイスさん見てるとラムルと被っちゃいますよ。ラムルはルイスさんみたいなので……。」
ルイス「それはガルシアにも言われたわ。ラムルの無茶は私譲りなのよねー。だからバンズやポートルはラムルの無茶をしっかり監視してあげてくださいね。」
オート操縦では出来ない航行であっという間に目的地に着陸。
2人とピコがフローターから歩いてくる画。
画面が変わると古い建物が見え、歩く2人とピコがフレームin。
ルイス「ここへは久しぶりだから、もう居ないかも知れないけど……。まだ居たとすれば良い話が聞けるかも。ピコは音声メモリーするといいわ。」
バンズ「ここは?」
ルイス「ロワート博士の1番弟子のクラフトルームがあったの。ケイドの技術者よ。私と同じ歳の頃だったから、ここにまだ居るのではと思って。」
オートドアのモニターをタッチするルイス。少し後ろにバンズとピコの待つ画。
モニターに応答が有った。女性が応じている。
シェルナ=アリントス「はい。どちら様ですか?」
ルイス「あ、あの。こちらはマット=アリントスさんの邸宅ではありませんか?」
シェルナ「はい。間違いありません。今そちらに。お待ちくださいね。」
まもなくシェルナが出迎えた。
シェルナ「主人に何かご用かしら?」
ルイス「ルイスと申します。ケイドの事でお礼に来たと伝えてください。」
ルイスの声に思い当たったのか、シェルナの横にマット=アリントスがやって来た。ノアーナのスーツにマントを羽織っている。
マット「ルイス?かな?」
ルイス「お久しぶり、マット。ケイドの事では色々ありがとう。」
シェルナ「あなた、ここではなんですからリビングへ。」
マット「ああ、どうぞ奥へ。お連れの娘さんとAnnも入って。」
アリントス邸リビングに通されたルイス、バンズ、ピコ。
シェルナ「ルイス=カーレイさんでしたか。主人からはよく話を聞いています。そちらは?」
ルイス「私の娘ではないんです。今日は買い物でビブレスに来たので。それでここを思い出したものですから……。」
ピクの様な給仕するAnnがテーブルにいる。ピクより背が高い。
マット「我が家は皆コーヒー党でお茶が無いが構わないかな?」
ルイスとバンズはうなずいた。
4人に飲み物が出されると、
シェルナ「ありがとうパット。」
マット「あまりに久しぶり過ぎて、記憶を掘り出すのに……ちょっと待ってくれよ。」
ルイス「シェルナさん、奥様でよろしいのでしょうか?」
シェルナ「ええ、マットの妻のシェルナです。息子のガットは今クラフトルームですが。」
ルイス「私も娘がおりますが今日は私だけ。それからこちらはバンズ。マットに紹介しに来たの。」
バンズ「バンズ=グロビアです。始めましてマットさん、シェルナさん。ドアの前でルイスさんから聞いています。」
マット「ロワートさん……博士の……お孫……さん?」
バンズ「はい。じいちゃんはやっぱり名前で呼ばせていたようですね、アリントスさん。」
マット「バンズだね?いいんだ。俺も名前で呼んで構わないよ。」
ルイス「せっかく素晴らしい船を作ってもらったのに、私の行動のせいでケイドは解体してしまった。残念だけど許してください。」
マット「そうだったんですね。あのニュースは知ってましたから、悔いは無いですよ。設計図を残しておけばと後悔はしてますがね。」
バンズ「せ、設計図は残ってないんですか……。しかもノアーナ最速の船を作ったのに……。」
マット「ロワートさんの、あ、博士の言葉に従っただけ。……バンズは設計図を残さないのが不思議かい?」
バンズ「残しておくべき物かなと思って……。」
マット「それは結果を知れば満足、だよ。当然設計図は起こして残してはあったんだ。でもケイドの試験航行が終われば必要無いから処分しなさいと。……これも博士の指示。」
ルイス「博士の1番弟子という噂はどうだったの?」
マット「確かに俺は、ロワートさんから色んな事を学ばせてもらったよ。あの人は弟子なんて持たなかったんだ。だから噂は噂。ただし設計や技術はしっかり受け継いだつもりだよ。」
シェルナ「おかげで息子のガットが仕事を手助けしています。」
マットは羽織っていたマントから両腕をテーブルに出した。
マット「俺の両手はこの通り。……だから今は、ガットが俺の両手になってくれてるよ。……バンズ、設計図の話が出たから伝えるよ。君のおじいさん、ロワートの言葉……。」
バンズは真顔で身を乗り出した。
マット「設計図は今だけの物。”いつまでも持っていても意味が無い。いつまでも過去の設計を参考にするな!……それを超える設計図で作り上げる事が物作りの理想なんだよ。“ってね。シェルナ、部屋の写真を持ってきてくれないか?」
シェルナはマットの部屋に入る。
ルイス「まだここで過ごしていて良かったわ。バンズに紹介出来たもの。」
バンズ「嬉しいです。じいちゃんの、じいちゃんの1番弟子にお会いできて本当に光栄です。」
マット「1番弟子なんて、俺はそんな大そうな人物にはなってないよ、バンズ。」
シェルナが写真をマットの前に置いた。
マット「バンズ、これはケイドのコクピットで写した写真。ロワートさんと俺。ルイスさんに黙って試験航行した時のさ。マニュアルでも手足の様に操作が出来るケイドをロワートさんは自慢してたっけ……。」
バンズ「ケイドは2人の手掛けた船だったんですね。」
ルイス「ちょっと厳しい依頼になってしまったけど、ケイドはノアーナ最速になれたから……。」
バンズ「マットさん、その写真ちょっとお借りします。」
言うとバンズは
バンズ「ピコ、この写真。最大の鮮明度で保存お願い。」
近寄るピコ。画像保存する画。
バンズ「マットさん、ありがとうございます。」
ルイス「ここへ来て良かったわ。マット、シェルナさん、ありがとう。そろそろ帰ります。」
シェルナ「息子はまたいずれ紹介します。またいらしてくださいね。」
ルイス、バンズ「ありがとう。」
ルイス「また寄らせてもらうわ。その時は私の娘も連れて、そうしたらもう少しゆっくりします。」
上昇するフローターの画。
ルイス「ここの位置データは一応フローターにメモリー。ピコもメモリー出来た?」
ピコ「保存完了しました。」
バンズ「あれ?ルイスさん、ID入力したりして。……オートでエンジャーまで戻るんですか?ルイスさんのマニュアル操縦で帰りたかったですよぅ。」
ルイス「いいわよ。その代わりラムルには内緒よ。」
Fade-out。
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