ストーリー110~113

ストーリー110: バンズのドック最大討論!(その2)


登場人物

ラムル、バンズ、ポートル、ルイス、ガルシア、フライ、 (カウル、ピク、ジャン、ピコ、台詞無し)



 メインルームのテーブルを囲んで討論会の真っ最中


 ガルシア「あなた達は地球人と会って話もした。見た目はノアーナ人と似ている。でも、違うのよ。何もかも……。例えばー……そうね、時間の経過はどうだったの?」

ラムル「地球の自転がノアーナの3倍以上。」

ガルシア「そこから何がノアーナ人と違っているか分かるわね?」

ポートル「それぞれの惑星ほしに合わせて進化してきたのだから、それは分かるわ。」

ガルシア「ノアーナ人より3倍以上経過を早く感じながら地球人は進化し、過ごしてきたって事よね。」

ポートル「グランに会った時は私達と同世代の様に見えたけど、私達より先に彼は他界するんだわ……。」

ガルシア「簡単に考えるとそうなるわ。時間の基礎はノアーナも地球も同じ。宇宙全体が一緒の同じ時間を過ごしてるわ。それが、それぞれの惑星毎に考えちゃうと時間経過はバラバラになる。時間の基礎は宇宙全体が一緒なのよ。」

ルイス「時間の経過。目で確認できる様に、人は惑星ほしの自転に合わせた物差しが考えられたのよ。それが時計よね。経過を知る為の物差し。大きさや重さも惑星ほし毎に独自の物差しが有るわ。……あ、これは昔のガルシアの受け売り。」

ポートル「例えばだけど……。見た目は私達と同じなのに、こーんなに小ちゃかったり、こーんなに大きかったりする人も存在するものなのかしら?」

ガルシア「有り得ないとは言わないわ。それでも、多分それぞれ物差しを持って過ごしているはずよ。」


 フライがポートルの横に来た。


 フライ「ポートル様?そろそろお腹が空いてきたのではないでしょうか?」

ポートル「へ?……さーてーはー!ピコ!フライに余計なデータを同期しないでよぅ。もーっ」


 厳しい顔つきで討論していたが、ポートルの言葉で笑顔が戻った面々であった。


 バンズ「ややこしい話をよく理解出来ましたね。お利口さん、ポートル。あとはウチらの姫様が無茶な提案をしないうちに、そろそろ外で支度をしませんか?ガルシアさん。」


ルイス、ガルシア「そうしましょ。」

ポートル「やったーバーベキュー!」


 ムスッとするラムル、でも直ぐ笑顔に戻った。


 Fade-out。



ストーリー111:今後の計画⁉︎

登場人物

ラムル、バンズ、ポートル、ルイス、ガルシア、(ジャン、ピコ、フライ台詞無し)



 バンズ邸庭先。邸宅ではあるが1階建。

 バンズはたまに寝泊まりする程度にしか利用しない場所だ。庭は奥のドックに向かって広い庭になっている。


 ポートル期待のバーベキューが始まった。


 離れた所で3体のAnn(ジャン、ピコ、フライ)が照明係を担当している画。


 ラムルは神妙な顔で、ロワート博士についてブロントから聞いた事をバンズに話していた。もちろん、地下にあるであろうもう一つのドックの話はしていない。横では話を聞きながらルイスが相槌を打っている。


 ポートルは宇宙そらについてガルシアから講義を受けている様だ


 画面はそれぞれの画に。


 バンズ「ルイスさんはじいちゃんの事はご存知でしたか?ケイドにパーツを使ったりとかありました?」

ルイス「それが当時はロワート博士の事は知らなかったの。……でも、ケイドを作った技術者が言ってた。推進装置はその世界じゃ有名な人が設計したって。……だからケイドの推進装置や機関は博士の設計だったかも知れないわね。」

ラムル「そうだとすれば刻印もあったんでしょうね。」

バンズ「カウルの刻印で分かったけど、じいちゃんは見えない所にそれとなく打っていたと思うよ。アタイならそうするもん。」

ポートル「バンズはおじいさまの影響受けてメカニックになったんだし、バンズが刻印を使ったとしたら同じ事するかもね。」


 割って座るポートルとガルシア。


 ガルシア「私も名メカニックさんに手伝ってもらわなきゃ。……バンズ、近いうちにミクラットをカスタマイズしたいのよ。」

ルイス「バンズなら期待出来そうよ。」

ガルシア「その時は皆んなでまた来ると良いわ。そうでしょ、ルイス。」

ルイス「名案ね。手分けすれば早く終わるだろうから。」

バンズ「あのミクラットだから、ラムルもポートルも手を借りなきゃだね。直ぐには終わりそうもないから。」

ラムル「今度はカーラントで行かなきゃ。荷物も多くなるでしょ?バンズ?」

バンズ「こっちでもガルシアさんから指示されたものを用意して持ってかなきゃだから、それがいいね。」

ガルシア「それが……。それがね、私……。」

ルイス「設計が苦手なの。でしょ?」

ガルシア「そ、そうなのよ……。時間掛ければそれなりに……なんだけどね。だから加工も私のドックでして構わないわ。」

ルイス「ガルシアは設計がというより、採寸からめんどくさがっちゃうからなのよー。」

ラムル「その辺はポートルが得意だから大丈夫。」

ポートル「任せてくださいっ!」

ルイス「皆んなで分担して取り掛かれば良いわよ、ガルシア。」


 酒が無い分、堅い話に偏りがちだが、それでも食べながら飲みながらの談話は盛り上がっている様だ。


 ガルシアは皆んなを集めるような仕草をして小声で言った。


 ガルシア「例の金属、私の持ってる書籍からは何も出てこなかったの……残念だけど。」

ラムル「それはカウルも知ってて、通常配合はザクラート含有率0.001%で出来上がるって分かったから、あとは精製方法だけ。」

バンズ「それはザクラートを含んでる鉱石が見つかれば、ってのが先じゃないの?ラムル。」

ラムル「そうよね……。」


 皆んなは座り直し、


 バンズ「あとさ、地球の話なんだけど、アイツ……グランは必ず同じ物を作るって言ってたけど、どう思う?」

ポートル「渡してきたウロムナ金属の事?」

ラムル「私は、直ぐに作り出そうってのは無理だと思う。」

ポートル「私もそう思うなー。」

ガルシア「組成の中に、ノアラートを合成して初めてウロムナ金属が出来上がる。地球に同じ物質が有れば直ぐ出来るわ。」

ラムル「地球にはない物だとしたらウロムナは作れない訳?」

ルイス「ウロムナ金属は小さい物なら私達でも作れるわ。エンジャーから近いクワレス=ガルの郊外に行けば、ノアラート鉱石が採掘出来る。あとはウロムナ鉱石と溶解させればいいのよ。」

ポートル「ルイスさん、詳しいんですね。」

ガルシア「詳しくて当然よ。ケイドのパーツ作るのに泥だらけになってノアラートを掘ってきたわ。」

ルイス「自分達だけでやりたかった年頃なのよ。」

ポートル「か、活発でしたのね……。」


 チラッとラムルを見るポートル。

 ルイスもラムルをチラッと見てからポートルに、

ルイス「行動派でしょ?(小声で)親子似ちゃったのよ。」


 ラムルは居眠りを始めていた。


 ガルシア「今日はこの辺で休みましょうか。」

バンズ「後片付けは明日にしましょうガルシアさん。」

ガルシア「じゃ、お言葉に甘えて。では解散っ。」


 ディゾルプ。



ストーリー112:バンズとラムルの硬い意志


登場人物

ラムル、バンズ、ポートル、ルイス、ガルシア、ピク、(フライ、カウル、ジャン、ピコ、台詞無し)



 バーベキューパーティーの翌朝早くから、ピコ、ジャン、フライ、カウル達で庭の後片付けをしていた。


 夕べはガルシアとポートルは1階に宿泊、ルイスとラムルは帰宅していた。


 ガルシアとポートルが出て来てAnn達に声を掛けると、ドックに足を向けた。


 ポートル「皆んなおはよう。後片付けありがとう。終わったらドックへ来るのよ。」

ガルシア「おはよう、皆んな。今日もお世話になるわね。」


 Ann達が後片付けに追われている画。(Annらしくテキパキ行動している画を数カット)


 メインルームに入ってくるガルシアとポートル。同じくして、クラフトルームから荷物を持って戻ってきたバンズ。


 バンズ「これでよしっ。ちょーっと重いかなぁ……。」

ポートル「おはようバンズ。」

ガルシア「おはよう。早くからこんな荷物持ってきて、一体何してたの?」

バンズ「あー。皆んなおはよう。エンジャーに持っていく工具一式荷造りしてたんだー。」

ガルシア「あら、気が早いわねバンズ。ここではまだ幾つも話をしなきゃでしょ?」

バンズ「まあまあ、座ってください。夕べ、ラムルには来るように話したから、そろそろルイスさんと一緒に来るので。アタイの提案は、その時に話し始めますから。」


 いつものシートがそれぞれの近くに寄ってきた。


 ガルシア「あら?私にもシートが……。」

バンズ「そのシート。来客用だけど、ガルシアさんの体重と……お尻記憶してる。……っていうのは冗談でー、モニターテーブルのパネルに今指示したから生体認識で近寄ってくるんです。」

ガルシア「……ホ、ホントに体重とお尻のサイズが分かるのかと思ってビックリしたわ。」

ポートル「どのシートもそうなってるのよガルシアさん。まー、ものぐさなバンズの作った物よ。ね、バンズ。」

バンズ「ものぐさとは嫌な言われ方だなぁ。」


 3人が笑って話しているところにAnn達が戻ってきた。


 バンズ「皆んなご苦労様。ありがとう。たくさん動いてもらったから、待機する前にチャージ忘れないでねー。」


 Ann達はモニターテーブル脇のチャージャーに集まり、アダプターをセットの画。


 画面が3人に戻り、そこへピクが寄ってきた。


 ピク「おはようございます、バン。お飲み物はいかがですか?」

バンズ「うん、皆んなにもお願いね。」

ガルシア「あら、おはようピク。私、今朝は紅茶をもらうわ。熱めのお砂糖少し。」

ピク「かしこまりました、今朝はガルシア様は紅茶で……。」


 言いながらバンズとポートルにはカップが出て来た。


 ラムルとルイスが入ってくる画。


 ルイス「おはよう。」

ラムル「皆んな、おはよう。」


 テーブルの3人とピクの画に移る。

ピク「おはようございます。お飲み物はいかがですか?」

ピクは言いながら、ガルシアにカップを勧めた。

ラムル「おはようピク。お願いするわ。」

ルイス「おはよう。……ねえピク?私は朝はミルクなの。普通で少し甘めでいただける?」

ピク「かしこまりました。ルイス様は朝はミルク、普通で少し甘めですね……。」


 ルイスは感心して見ている。


 シートが寄ってきて2人が座った。


 ポートル「さっきはものぐさなバンズだからって言ったけど、ピクがいるからバンズが1人で過ごして来れたんだもんねー。」

ルイス「ものぐさでピクを作ったなら、食事まで出来る様にするでしょ?そうじゃないんだから、それはバンズの来客者への心遣いなのよ。しかもこのドックにラムルやポートルが入り浸るようになってピクも大忙しね。」


 バンズ小声「ルイスさん…。」


 バンズは、宇宙船ミクラットの推進機関に格納されていた、ジックの事を思い出していた。


 飲み物が出されてテーブルモードに落ち着くピク。


 バンズ「あ、それで早速なんだけど、アタイの提案を聞いて。」


 皆んなはカップを手にバンズの提案から話がスタートした。


 バンズ「ミクラットのカスタマイズの事なんだけど。……あの……その……。」

ポートル「どしたの?何か問題発生?」

バンズ「アタイ、ソディナとジックはミクラットから離してあげたい!……でも、これはガルシアさんやルイスさんの想いが有るから……。……無理は承知。時間も掛かるのも承知。なんならアタイだけでも時間掛ければ出来るから……だから……。」


 ルイスとガルシアは顔を見合わせている。


 しばらく沈黙、画はルイスとガルシアのまま。


 心の中でルイスとガルシアは話し合っている様にも見えた。


 お互い深くうなづくと、バンズに向き直り、声を揃えて言った。

ルイス、ガルシア「喜んで。」

ガルシア「その案は大賛成だわ。」

ルイス「ガルシアが許可するなら、私だって賛成だわ。」


 バンズは立ち上がり深く頭を下げて、

バンズ「ありがとうございます。お二人に感謝しますっ。元の様に離してあげて、元のソディナとジックに、必ず戻しますっ。」

ラムル、ポートル「バンズ……。」


 ポートル「バンズ、私も協力するわよー!手がボロボロになる位、頑張るっ。」

バンズ「いや手がボロボロじゃ協力出来ないだろうが……。」

ポートル「それは言葉の綾じゃない、もー。」

ラムル「私ももっとソディナとジックと仲良くしたいから、バンズに協力しちゃうよっ。」


 ガルシア「さて今日1つ目のバンズの提案、ミクラットのカスタマイズは、ソディナとジックを離してあげるところから始める事に決定!次の提案は?」


 ルイス「ガルシア、私が少し話していいかしら。……夕べ、ラムルのRJの疑問の話をしたけど、私も夕べ寝るまでに考えてたの。ノアーナのRJ計画。……最近、実行者が減ってきたのが有って法規制が緩くなったのは知ってると思う。危険が伴う事が有るから実行者が減ったって言う理由も有るだろうけど、色々疑問が出ているのも事実なのだわ。……次期長官には女性で初の長官としてラムルが任命されることになるでしょう。……ラムルの疑問を隠す事なく伝えてもらって、皆んなの知恵を聞きたいの。どうかしら?」

ガルシア「ミクラットのカスタマイズとは規模の違う話に発展するけど、次の世代はラムル達。方向性は見極めておいて無駄にはならないわね。」

ポートル「いきなりの話ですが、私はラムルを親友として見てきたし行動してきたので、100%支持出来ます。」

バンズ「アタイもポートルに同じ。逆に言えば、ラムルが長官の職務に就いた時、一般目線の考えを遠慮無く言えるのは私達だけだと思ってる。ラムルにはそれを分かってもらって職務に就いて欲しいと思ってるよ。」

ラムル「今の父上の職務に疑問っていう訳じゃないけど、軍も管理部もあまりに機密が多すぎて、それをノアーナの人々が反発したり疑問が爆発してクーデターなんて。……そんなノアーナにはなってほしくないから……。それに、逃げ隠れしながら今後も暮らしていけるかどうか……これも疑問なの。」

ガルシア「ブロントの後を継承するのは重責なのは分かる。カーレイ家が代々してきたのだし。……でもラムルの行動力なら打開出来る事は多いと思うわ。そこは自信持って良いと思うわよ。そうよね、ルイス。」

ルイス「そうね。無茶は有っても功を奏してるのだから、それは運では無くてラムルの持ってる力かも知れないわ。あなたの思ってる事、自分でまとまったら皆んなに話してみることね。」

ラムル「ええ、自分で考えただけで即行動は控えるわ。」

バンズ「ひ、控えるだけなの?ラムル……。それってもしかして、先が思いやられるってヤツー?」

ラムル「そうね、なるべく控える。」

バンズ「だぁ〜〜〜、ウチらの姫様には……。」

ラムル「2人共、これからも十分、先が思いやられてね。考えがまとまったらエンジャーにいる時にでも話すわ。」


 いたずらに微笑むラムル。


 ポートル「何でも話してきたのは私達だけだもん。今後もそうさせてもらう〜宣言!」


 微笑ましい3人を優しく見守るルイスとガルシアであった。


 ディゾルプ。



ストーリー113:回想…そして回想


登場人物

ルイス、ブロント、、若い頃の回想のルイス、同ブロント、同ガルシア、回想のラムル、同ジャン(台詞無し)



 ガルシアがエンジャーに戻って数日後。


 皆んなでエンジャーへ向かう計画が進み、カーラントに皆同乗して向かう事に決まった。


 ルイス、3人娘達、全てのAnn達で向かう準備が進んでいる。


 ポートルのフローターでAnn達とカーレイ邸へ合流し、カーラントで向かう段取りは整った。


 Ann達へのチャージはもとより、ピクの材料補充も済ませた。


 ラムルは、ブロントから借りた重い書籍を荷物にまとめた。


 ルイスは、ブロントにジックの存在やミクラットからの切り離しの事を話し、承諾を取り付けた。


 カーレイ邸リビングのブロントとルイス。


 ルイス「あなたには反対されるかと思ってました。」

ブロント「ガルシアがいつの間にか船に格納したなんて。あの時はAnnを引き取るからとしか言わなかったが、格納の話を聞いて驚いたよ。まさかジックを元に戻しているとは……。」

ルイス「私はガルシアに感謝してる。格納されたとはいってもそのまま残してくれたんですもの。」

ブロント「しかし今は若い頃の君では無い。ジックに頼らずともいいはずなのに、今頃になってジックを戻したいと?……。それはラムルに影響されたからかな?」

ルイス「いえ、バンズの提案です。それに今後のラムルに協力出来るかも知れないからですわ。ガルシアはジックのあるじは私そのままで格納したんです。だからミクラットから離すのには私も側にいたい。何か指示が必要かも知れませんからね。」

ブロント「確かにそうかも知れんな。しかし当時のジックの認識フィルターは厳しすぎたんじゃないかな。若い頃は私にさえ無愛想だった……。」

ルイス「でもそれは当然よ。ブロントの事をまるで敵の軍人のように見ていたのだから。」

ブロント「……ジックはケイドの事は記憶しているのだろうか……。ジックは私を許してもらえるのだろうか……。ジックが戻ってきたら、私はどんな顔で迎えたらいい、ルイス。」


 回想シーン…。


 婚姻を間近に控えたブロントとルイス。


 カーレイ邸リビングでは、


 ブロント「ルイスにはすまないとは思っている……。が、あのケイドは解体することが決まった。同乗していたガルシアについては上手く弁解出来たんだが、リターナにおいて君の行動は少し無謀過ぎたよ。」

ルイス「でもあれは軍も悪いのではと感じてます。だから逃げたのであって、船が追尾するのもフローターが寄ってくるのも分からなかった。分からなくなるくらい追い回したのは軍の船です。フローターで接近して来るのに気付かずにいたのは嘘じゃありません。……そのまま旋回してフローターと接触、墜落……。私が軍の通信を無視して行動したのには責任を感じてます。それから重傷を負った数名の軍人にも慰謝の意に絶えません。」

ブロント「君の言い分は理解しているよ。だが本部長の私からでもこれ以上弁解の余地が無くなった。……ジックもリターナでのデータを消去させる事という処理に決定した。」


 ルイスはうつむき、唇を噛み締めた。

 ……口を開くと、

ルイス「仰せの通りの処分で結構です。」


 足早にリビングを出るルイス。


 ストーリー16の一部回想。


 ラムル「今後父上はそうされるのですね。……分かりました父上。仰せの通りで構いません。」


 ラムル、ジャンを近くに抱き寄せる。


 うっすらと涙さえ浮かべているラムル。


 ストーリー16の一部回想。


 ラムル「……美しい青き惑星ほしでした。とても素敵な惑星ほしでした。……私も、水の惑星ほしが悪い方向へ発展していない事を望んでいます父上……。」


 その後は何も語らず、ジャンを連れてカーレイ邸を出て行く画。


 ラムルとルイスの姿がover-upする画。


 ドックに駐機中のケイド。ハッチが開いていて、その前で待機モードのジック。

 手前からルイスが駆け込んでくる。


 ジックを抱きしめるルイス。

 ブロントもドックに入って来ると、

ブロント「ルイス、諦めてくれ。ジックも操縦をになっていた以上、データ消去又は解体になる……。力になれなくてすまない……。」


 ジックは待機モードながらブロントの声を聞いていた。


 ブロントは肩を落とすとドックを去った。


 ルイスはジックとケイドに入っていく画。


 ルイス「ジック、よく聞いて。あの日のリターナの行動データは消去が決まったって……。そしてこのケイドは解体されてしまう……。」


 ジックは黙っていた。……が、通信を始めた様だった。すると、


 ガルシア「ルイス?聞いてるの?」

ルイス「ジック、あなた……。」

ジック「ガルシア様に繋がりました。」

ルイス「ジック……。……ガルシア、聞いて!ケイドが……ケイドが解体される。」

ガルシア「ジックは?」

ルイス「ジックのあの日の航行データは消去だと……。多分ジックは一旦初期化されるに決まってる。」

ガルシア「ルイス……。私にもその責任はある。私がリターナに連れ出さなかったら……。」

ルイス「あなたのせいではない。仕方ないわ。……もう婚姻が近いし、私はカーレイ家に入る。ジックは手元に置きたいけど……それも諦めるわ。」

ガルシア「ちょっとちょっとー。話が急過ぎる。あ、ちょっと待って。また直ぐ連絡する。」


 しばらく待つとガルシアから再び通信が入った。


 ガルシア「ルイス?今フローターでそっちに向かう!ドックで待ってて。IDのセットお願い。」通信が切れる。


 ルイス独り言off「ガルシア……。あなたが来ても結果は変わらない。もう決定してしまったわ。」


 カーレイ邸ドックに入り着陸のフローターの画。


 出て来るガルシアとソディナ。


 ガルシアはかがみ込んで、

ガルシア「ルイスはケイドの中のようね。……ソディナ、名案があるの。中に入ったら直ぐにジックと同期、それからジックの全てのデータをダウンロードよ。出来る?」

ソディナ「同期はいつもの事です。ダウンロードはなぜ必要ですか?」

ガルシア「ケイドはもう解体されるの。だからジックからケイドのデータもジックのダウンロードも全てやって。あなたのメモリーが一杯で動けなくなっても私があなたを運ぶ。……だからお願い。その間の時間稼ぎはちゃんとするわ。終わって倒れててもいいからっ。これはルイスには黙ってて。……じゃ、行きましょ。」


 ケイドのメインルームでルイスはジックを抱えて泣き崩れていた。


 ガルシア「ルイス……。私が来るまでずっと泣いていたの?」

ルイス「そうよ。悲しくてこうしている他ないでしょ!…あぁガルシアー。」

ガルシアにしがみつくルイス。


 ガルシア「ソディナ、ジックをお願いね。」


 ソディナはジックに寄ると同期を始めた。彼等の中で会話が成立しているようにジックからソディナへダウンロードが始まった。


 ガルシア「ルイス、立てる?……ブロントはリビングにいるでしょ?」

無言のままうなずくルイス。


 ガルシア「私もブロントにお詫びしなきゃ。弁解してくれていたのだし、話がしたい。行こ、ルイス。」


 ルイスはガルシアに半ば身体を任せてリビングにやって来た。


 ガルシア「こんにちはブロント。上手く弁解してくれてありがとう。感謝するわ。」


 ブロントは本から視線を変えず、

ブロント「君は守れたんだが、ルイスの処分は免れなかった。……いくら管理部本部長とて軍の上層にも父にも……声が届かなかった。」


 読んでいた本の手元、ページが徐々に千切れていく画。


 画面がブロントに戻ると、

ブロント「ガルシア、ケイドは守れなかった。ジックは航行データを消去だと言われたが……初期化も覚悟しなければ……。」

ガルシア「もういいわブロント。ルイスはこのまま少し1人にさせてあげて。」

 そう言うとルイスを抱え、ルイスの部屋に入っていった。


 ルイスとベッドに座るガルシア。


 ガルシア「ルイス、ジックは私に引き取らせて。全て忘れてしまったジックが側に居てもあなたが悲しくなるだけ、あなたが辛くなるだけよ。……名操縦士ジックはあなたの心の中にいるわ。」


 ルイスの部屋を出るガルシア。


 帰り際にブロントに言った。


 ガルシア「ブロント、ジックが初期化されようと、どうなろうと、私が引き取るわ。全て済んだ時、ルイスから連絡よこさせてください。ジックを引き取りに来ます。」


 翌日、ケイドは解体され、ジックは案の定初期化されてしまった。


 ジックはカーレイ邸のドックに戻されたが、ルイスはそのジックを迎える事はなかった。


 ブロント「ルイス、ジックが戻ったが……。」

ルイス「分かりましたわ、あなた。今ガルシアに連絡して、ここへ来てもらいますから。」


 この頃から、ルイスの反発なのかブロントに対しての言葉使いすら変わってきたのだった。


 引き取ったジックを乗せたガルシアのフローターからルイスのモニターテーブルに通信。


 ガルシア「ルイス、あなたが元気になるまで、私からの連絡は遠慮する。あなたが連絡を取りたいと思うまで待ってる。」

ルイス「……ありがとう。ガルシア……元気で……。」


 エンジャーに向かうフローターの中でガルシアは、ルイスの状態と反応から、今後ルイスと会えないのかも知れないなと覚悟を決めたのだった。


 元の時節のリビング。


 ルイス「ブロント、ジックの認識フィルターは今後はジック自身に委ねるわ。当時の認識フィルターが厳しく指示していて正解だったかも知れないわ。よそよそしくて、あなたに対して厳しいジックだったけれど、今の私達と過ごせば消えていくんじゃないかしら。私はそう願ってるわブロント。……あなたがかつてカウルに接してきた事を思い起こしてジックに接してあげてくださいな。」

ブロント「すまなかった、ルイス。」

ルイス「あなた!(上がる声のトーンから普段のトーンへ)その気持ちでジックに接してくださいね。」


 ディゾルプ。

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