第306話 ようこそ、カフェジゼリィ=アゼリィへ! 5 カフェ大好評と虚構の英雄様


 カフェジゼリィ=アゼリィ、オープン二日目。



 昨日と同じぐらいの混雑っぷり。


 初日に一日中行列が途切れなかったのが王都民の注目を集め、その噂を聞いた人達が昨日以上に訪れお店の前は大行列。



「ラビコ様ー!」

「おお、本当だラビコ様だ。サーズ様も中にいるとか、どうなってんだこの店」

「レースで優勝したハイラさんもいるんだと。近くで見たいなぁ」

「ローズ=ハイドランジェのアンリーナさんに会えるんでしょ!? サイン欲しーい!」


「リーガル様ー! 今日も脱衣ショー期待してまーす!」



 やはり知名度アタックは大成功だな。


 本日も昨日と同じく水着魔女ラビコ、サーズ姫様、騎士ハイラ、商売人アンリーナがいるぞ。



 まぁラビコとアンリーナは俺達と一緒に行動しているから今日もいるんだが、サーズ姫様が今日も普通に来てくれた。


 この混雑に並んで食べるのは一苦労なので、最初からお店にいれる売り子さんを今日もやってくれるんだと。


 サーズ姫様が言うには、多くの王都民と触れ合える貴重な場なのと、こういう接客業を今までしたことがなかったので、大変楽しいと笑顔。


 そりゃーそうだろうなぁ。

 

 あとハイラは俺が王都にいる間は有休だから、側にいてくれるんだと。



 王都では無名のお店だから、ゲストに有名な誰かが来ているらしいってのは大きな武器になった。

 

 サーズ姫様の人気がやはりすごいんだが、滅多に王都で見れないうえに、普段サービス精神の無いムスっとした顔のラビコが笑顔で写真に応じてくれるとのことで、ラビコマニアが大集結。

 

 ラビコ見たさにお休みをとり、一般人として普段お城に務めている騎士さんがかなり来ている様子。


 ハイラが「あ、誰々さんだ」とか結構見知った顔が来ていると教えてくれた。



 あと……女性がすごい。


 まぁ、ここカフェだから女性客が来てくれるのは嬉しいんだが。


 なんか知らんがイケメンフェイスの隠密騎士、リーガルが半裸ショーをしてくれると噂が一気に広まった様子。


 半裸で立っていろ、とは言ったが、半裸ショーをしろとは俺言っていないからな。




 三名様以上のご来店で紅茶ポットが無料提供されるのは昨日で終わったが、お得な紅茶飲み比べセットや、四~五杯は飲める紅茶ポットが十五Gであるので、当店自慢の紅茶をぜひ飲んで欲しい。


 千五百円感覚かな、十五Gは。


 ちなみにお値段設定だが、物価が高い王都に合わせソルートン価格の五割増しぐらいだろうか。


 紅茶ポットがソルートンでは十G、王都では十五Gといった感じ。全部ではないが、物価を反映させてある。


 それでも王都の他のお店のどこよりも安いぞ。味も保証する。


 以前魔法の国に行くときにサーズ姫様が言っていたが、この品質の紅茶をポットで飲もうとしたら、王都では五十G、日本感覚五千円以上は覚悟しないといけないらしい。




「はいっお待ちぃ! 外売り用デザート『フラロランジュ島オレンジとリンゴのはちみつ紅茶漬け』追加出来ましたっ」


 あと元パティシエ、ナルアージュさんが大活躍。


 昨日混雑で入れなかった人が多かったので、お店に入れなくても買えるように、お持ち帰り用パックを多く用意してもらった。


 おかずセット、おかずにパンセットにデザートパックなど多数用意した。


 見たら絶対迷うぞ、どれにするか。俺も迷うレベルの品揃え。


 そのデザート作りで、ナルアージュさんが元パティシエ力を発揮。


 これが王都民に大好評。


 その場で買って持ち帰りなので、大行列とはいえお店に入る列よりは待たなくてすむ。




「いいぞ、これは以前考えていた王都の駅でお弁当販売もいけそうだぞ」


 俺がお店の外でカウンターを作り販売している物販コーナーの大行列を見ながら呟くと、商売人アンリーナが近寄ってきた。


「やりましたわね師匠、お持ち帰りパックがもう大好評です。個数限定なのですが、午前中で完売ペースですわ。師匠が言う、駅でのお弁当販売もぜひやりましょう。しばらくは無理ですが、オープン記念期間が終われば出来そうです。人員増やして生産し、駅での販売も考えましょう」


 うむ。アンリーナが商売人の顔全開。


 そうなれば俺が一番嬉しい。なんせ魔晶列車の中で美味しくもないパンを買わなくてもすむからな。


 駅でジゼリィ=アゼリィのお弁当が買えるなら絶対そっちにする。



 あと、はっきり言って昨日一日で相当の売上を記録している。


 スタッフさんにオープン期間は二倍の日給を払うと言ったが、三倍、四倍払ってもいいぐらい。


 それぐらい皆頑張ってくれたし、おかげで売上もすごいことになっている。



 アンリーナ曰く、かなり多く予想していた売上の倍以上の金額だそうだ。


 やはりサーズ姫様にラビコ、ハイラ、そしてアンリーナ本人がお店にいることが大きいと思う。


 これで相当お客さんを呼ぶことが出来た。


 ローズ=ハイドランジェ商品も多めに用意していた在庫がなくなり、急遽駅直結の大型商業施設のお店からと、王都内の他店舗から商品を回してもらっている状況。


 ラビコがこのシャンプーとボディソープを使っていると宣伝してくれたんだと。


 そこから一気に売れだし、男性にも売れ始めたとか。


 これがラビコ様の香りか……と笑顔で買っていく紳士が多数。


 中には、あれ、アイツ駅でラビコと俺達に道を作ってくれた騎士じゃん、と見知った顔もいた。


 大事に使えよ、シャンプー。





 二日目も大盛況で終え、安くて美味しいカフェジゼリィ=アゼリィの名も広まってくれたようだ。



 さすがに三日目からはサーズ姫様は来れず、仕事を終えた午後六時以降に来てくれ、普通に売り子をしてくれた。



 


 四日目にはサーズ姫様が夜にご家族で訪れ、大騒動に。


 お姉さまであられる現国王フォウティア様に弟君であるリュウル様、それに前国王であられるサーズ姫様のご両親もご来店。


 マジびびった。


 さすがに三階の王族専用部屋開けたぞ。


 なにやらサーズ姫様が俺のことを変な形で紹介したらしく、ご両親に娘をよろしく、とか言われたが笑って誤魔化した。


 どういう紹介をしたんだ、サーズ姫様……。


 あとよく知らんが、弟君であられるリュウル様がやたらに俺に懐いてきていた。


 ソルートンでの銀の妖狐撃退とかの活躍をサーズ姫様に大げさに聞いたらしく、すごい憧れの目で見られていた。



「英雄さん、今度僕に魔法を教えてくださいね」


 うーん、そう言われましても……リュウル様、なんてサーズ姫様から俺のことを聞いているか分かりませんが、あなたはもう少しお姉さんを疑う気持ちを持ったほうがいい。


 絶対嘘が混じっています。


 九歳のあなたに夢物語とは違う現実を突きつけていいか迷いましたが、ここははっきり言っておきましょう。


 英雄なんて虚構の物なんですよ。



「あ、僕、魔法使えないっス」










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