【書籍化&コミカライズ】異世界転生したら愛犬ベスのほうが強かったんだが ~職業街の人でも出来る宿屋経営と街の守り方~【WEB版】
第305話 ようこそ、カフェジゼリィ=アゼリィへ! 4 オープン初日終了様
第305話 ようこそ、カフェジゼリィ=アゼリィへ! 4 オープン初日終了様
「いらっしゃいませ! 四名様ですか? はい、三名様以上のご来店で紅茶ポットがサービスでつきます! ではお二階へどうぞ」
「ご注文はコラボメニューのローゼオル野菜たっぷりシチューですね。はい、ありがとうございます!」
ついにカフェジゼリィ=アゼリィがオープン。
そしてすでに席が満席、接客スタッフさんフル稼働。
厨房は猫の手も借りたい状態なので、ナルアージュさんもパティシエとして参戦。
ローズ=ハイドランジェとのコラボメニューが結構注目されている。
お肌にいいローゼオルメニューに、血行をよくする効果のあるグルナロメニュー。そして髪に艶が出る効果があるというアロンジョーヌメニュー、どれも女性の支持を得られたようだ。
「アンリーナ、もう三階の大部屋開放しよう。お客さんにゆっくりは出来ない環境ですが、それでもよろしければ、と納得してもらえるならの条件付きで」
「分かりましたわ。長机に横並びに座ることになるので、それを納得してもらえるお客様を優先で三階にご案内いたしましょう」
大混雑の店内。
もはや耳元で話さないと声が聴こえないレベルの混雑。
商売人アンリーナに相談して三階の大部屋を開放することにする。
「ロゼリィ、すまんが三階の大部屋の椅子出しを手伝ってくれ!」
「わ、分かりました! す、すごい混雑ですね。王都ってすごいです」
宿の娘ロゼリィの手を引っ張り、接客スタッフさん一人連れて三階へ。
三人で手分けして倉庫から椅子を並べる。
「よし、これでまたかなりの人数入れるぞ。アンリーナ、準備完了だ! 受付スタッフさんに説明を……!」
ロゼリィに三階のお客さん誘導を任せ、俺は三階から一階へ急ぐ。
「みんな大丈夫か。無理しないでしっかり休憩は交代でとるようにな。水飲み休憩は断りいらん、体調管理はしっかりな!」
ホールを周り、接客スタッフさん全員に声をかけ、無理はしないように言う。
「はい、オーナー代理! 混雑で大変なんですけど、逆になんだかワクワクしてきて……この状況でウエイトレスをやっているのが楽しくなってきました!」
女性の接客スタッフさんが、汗を流しつつ、いい笑顔で応えてくれた。
はは、こりゃー本物のウエイトレス様だ。頼りになるぜ。
「いい笑顔だ。君はこの混雑でも通るいい声をしているし、出来たら長くこのお店にいてくれ」
女性の肩を優しく叩き、厨房へ向かう。
こうやって混雑し雑音が飛び交うお店で武器になるのは、よく通る声。
それだけで「え? もう一回」みたいな聞き直しのタイムロスとトラブルを防げる。
「シュレド! 食材は大丈夫か。足りないものがあれば仕入れてくるぞ……ってあれ、落ち着いてるな」
オーダーの多さに大混乱しているかと思えば、厨房は全員静かに落ち着いて作業をしている。
「おうよ、旦那! だって焦る必要がないんす。食材は足りているし、調理スタッフ全員で分業してオーダーこなしてんすよ。数十個単位で計算して仕上げれるんで、今のところ混乱は起きてないっすよ、うはは!」
そ、そうか。厨房が混乱してなきゃ大丈夫だな。
安定して料理が出てくるなら問題なし。
外にはドンドン増えていくお客さんの行列。
新しいお店に『ラビコ様とサーズ様にハイラさん、それにローズ=ハイドランジェのアンリーナさんがいるぞ!』と次々に情報が広まり、ラビコ達に会いたいお客さんが殺到。
これはトラブルも起きかねんか……と思っていたが、並んでいるお客さんが皆、静か。
「おぅ、お前等~三列できっちり並べ~。この混雑だ、トラブルを避けるためにこのラビコ様に従え~。従わないやつは消し炭にしてやんぞ~」
見て驚いたが、水着魔女ラビコが自ら外へ出て、お客さんを脅し……いや、誘導してくれていた。
さすがに国王と同権力を持つラビコ。彼女の言うことに都民は素直に従うなぁ。
お店入口付近でウロウロし、話しかけられたらしっかり答え、写真にも応じている。
ど、どうしたんだラビコ。いつもと別人みたいじゃないか。
「すまんラビコ、マジ助かる。こういうときはトラブルが付き物なんだが、上手く抑えてくれていたのか」
「お、社長~ラビコさん疲れちゃったな~あとでたっぷりマッサージしてもらうからな~あっはは~」
ああ、いいぞ。
思わず手が滑ってお尻とか触るかもしれんがな。
……って、そんな勇気あったら童貞こじらせてねーけどな。
ああ、勇気でするもんじゃないな。勝手に触ったら犯罪だし。
入り口はラビコと警備さんに任せ店内の物販カウンターへ。
お食事のお会計は、接客スタッフさんが慣れた手つきでこなしている。
そして物販カウンターのほうには、この国のお姫様であるサーズ様がいらっしゃる。半裸王子とともに。
「あ、せんせーい! もうナンバリング付き限定シャンプーとボディソープ売り切れました。すごい売れてますよ!」
お、ハイラもここにいたか。さすがにサーズ姫様の警護をしていてくれたか。
俺はハイラの頭を撫で、カウンターで笑顔を見せているサーズ姫様に声をかける。
ちなみにラビコと違い、サーズ姫様はお写真禁止だ。
そこは色んな事情があるんだ、我慢してくれ紳士諸君。
「本当にありがとうございますサーズ姫様。こんな状況なのに売り子をやっていただいて」
「はは、いや、私はすごく楽しいぞ。こんな活気のある中に居ると、実にワクワクしてくる」
サーズ姫様にひと目会いたいと、かなりの王都民が殺到しているが相手はこの国のお姫様。
皆さすがに自重してくれていて、大きな混乱は起きていない。
「こうですか? え、もっと足広げるといい? わ、分かりました。はいっ」
「きゃー!」
「リーガル様ー!」
サーズ姫様の後ろで異様な雰囲気になっているのが、王子リーガルを囲む会。
王都の若い女性が半裸イケメン王子に大興奮。
そしてリーガルが恐ろしいまでのサービス精神で、女性のリクエストに応じている。
あいつ、こんなキャラだっけ。
「……あの先生。リーガルさん、どうしちゃったんですか? いつもの冷静沈着クール騎士じゃなくて、おもしろエロお兄さんになっているんですけど……。こんなリーガルさん初めて見ました」
うーん、どうしたのかリーガル。
誰かに弱みでも握られてんのかな。例えば俺とか。
まぁ、たまにはキャラじゃない行動もいいだろ。
これをキッカケに新たな自分とやらに目覚めるかもしれんし。
目覚めたとして、その責任は取らんけど。
「リーガルさんって、女性騎士にすっごい人気あるんです。さっきも噂を聞いたお休みの同僚が何人か来て、よく分からないけど、なんでも言うこと聞いてくれるリーガルさんに大興奮していました」
うーん。
ここまでやるぐらい、サーズ姫様のお尻をエロい顔で見ていたのをバラされるのが嫌なのか。
悪いことしたかな……でもまぁ……うん、今後も利用しよう。
「うわぁ、かわいい」
「花が浮いてるー!」
お店に入り席に座ると、まずお水が出てくる。
それにはグリン農園さんから仕入れているスイートスターという食用花が浮いていて、見た目と香りを楽しみつつ飲めるお水だ。
これが王都女子に大好評。
王都ではスイートスターは珍しい物らしいしな。
「飲み比べ紅茶セットA、B一つずつですね。ありがとうございます!」
「本日の紅茶デザートセット、お待たせいたしました!」
なんとなく注文されている物を聞いていると、やはり紅茶の注文が多い。
三名様以上で紅茶ポットが一つ無料で飲めるのだが、それ以外の紅茶メニューもかなり出ているようだ。
これも花の国フルフローラまで行って産地巡った価値があったってもんだ。
飲み比べ紅茶セットAは、ローズアリアの銘柄の紅茶を小さなカップで三種類と小さなデザート一個のセットとなっている。
その名の通り、飲み比べて欲しくて作ったセット。
小さなカップなら、楽しみつつ飲める量じゃないかな。
ローズアリアのデイズアイ、ショコラメロウ、アランルージュが飲めるセットだ。
Bセットはラベンダル銘柄のタルタルレジェ、ベルデサウア、ミンダリノワールが楽しめる。
両方共お値段十五G。俺感覚だと千五百円ぐらいだろうか。
デザートもつくし、お得なセットだぞ。
「……」
そして三名様以上の来店で配られる紅茶ポットは、なぜかバニー娘アプティが運んでいる。
残像が残る速度で動き回り、それでいて紅茶をこぼすこともなく、実に丁寧に扱っている。
さすが紅茶の扱いはアプティの得意分野か。
アプティの高速配膳のおかげで、接客スタッフさんがかなり助かっているっぽい。
えらいぞ、アプティ。
ああ、ベスはお店入口の自分の像が気に入ったらしく、その足元で丸くなって寝ている。その光景は、並んでいるお客さんのちょっとした癒やしになっている様子。
そうだ、お会計レジの後ろには豪華な額に入ったサイン色紙が飾られているので、ぜひ見て欲しい。
お願いして書いてもらったサーズ姫様、ラビコ、ハイラ、アンリーナのサインがあるんだ。
この四名の連名サイン色紙はかなり貴重だぞ。
これが飾ってあれば、今後も多少なりとも集客の効果があるんじゃないかな、と期待している。
「ありがとうございました! これにてカフェジゼリィ=アゼリィ、オープン初日の営業を終わらせていただきます。またのご来店をお待ちしております!」
そして午後十時、大混雑の初日を乗り越えた。
オーダーストップとなる午後九時半まで行列は途切れず、入れなかったお客さんには次回使える半額券をお渡しした。
一体どのぐらいのお客さんが来たのか……。
サーズ姫様にハイラも最後までいてくれ、ご飯も昼、夕食とまかないで食べれて満足してくれていた。
「ははは、いやぁ楽しかったぞ。これが君のお店か、実にいい。明日もここでご飯が食べたいから明日も売り子をやるぞ」
少し疲れた様子だが、サーズ姫様が笑顔で俺の肩を叩いてきた。
え、明日も来るんすか……後ろで護衛のリーガルが机に突っ伏してピクリとも動かないけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます