第262話 花の国フルフローラへ 13 到着花の国様


「それではこれより花の国フルフローラへ向かいます。このカエルラスター島よりさらに南に四時間ほど進みますと、フルフローラ最大の港街ビスブーケに到着となります」



 翌朝七時、俺達はホテルローズ=ハイドランジェを出てアンリーナご自慢の豪華高速魔晶船、グラナロトソナスⅡ号に乗船した。



 商売人アンリーナが海図を交え解説。


 今いるカエルラスター島から下が国境で、それを超えるとすぐにある花の国フルフローラ最大の港街ビスブーケというところに向かうそうだ。



 結局あんまりカエルラスター島を満喫出来なかったなぁ。


 船からホテルに移動するときにチラっと水着様達を見れた程度。そんなんじゃあ俺の柔肌神様はご満足されない。


 ロゼリィ達の水着も見れんかったしなぁ……ラビコはいつも水着だけど。というか海に行かなかったか。



「あれれ~? 社長が不満気だな~ビーチの水着美女が見れなかったからね~あっはは~」


 ラビコが俺の柔肌神様を察知したようで、ニヤニヤと笑う。


 しかしまぁ……ラビコの裸を間近で拝むことが出来たし、その柔らかく美しいお胸様を顔全体で感じることが出来たので蒸気モンスターグッジョブと言っておこう。



 いや、嘘です。

 

 血まみれはもうご勘弁。



「水着天国は次の機会に期待するよ。でも今からさらに南の暑い地域に行くんだろ? じゃあそっちでもまだチャンスはあるじゃないか。なんせ俺の周りにはこんなに美女がいるんだからな、うへへ……」


 おっと、つい本音が。


 怪我をしている反動だろうな、うん。


「うっわ~……社長~命の危険を乗り越えた後だから子孫を残さなきゃ、みたいな本能出ちゃってるよ~……んん~? あれ、もしかして今チャンスなのかな~? ラビコさん、積極的に迫ってみよっかな~ホラホラ社長~女だよ~あっはは~」


 そう言いながらラビコが色目を使い俺に身体をすり寄せてきた。


 ほう、本能とな。じゃあ今の俺は何をしても許される……!?


「……ワケねーだろ。怪我治りかけで無茶はしねーよ」


「ちぇ~もう正気に戻ってるし。もう少し私達のおもちゃになってくれてもいいのに~」


 ちょっと微量にごくわずか妄想を表に出しただけで、普段の俺は人として日々真面目に生きているっての。おもちゃにはなりません。




 カエルラスター島を出て四時間後の午前十一時。


 船はペルセフォス王国の南にある国、フルフローラへと到着した。



「皆様御覧ください。あちらに見えてきましたのが花の国フルフローラ最大の港街、ビスブーケになります。船はこの街に停泊させまして、私達は魔晶列車にて紅茶の産地を巡ることになりすわ」


 アンリーナがデッキから街のほうを指し今後の予定を説明してくれる。


 このビスブーケから魔晶列車でアンリーナのホテルと契約をしている紅茶の産地、ローズアリア、ラベンダルに向かうそうだ。


 アンリーナの挨拶回りのついでにペルセフォスのカフェとも契約出来ないか交渉してみるつもり。



「なんか建物が赤いな。なんか違う国に来たって感じるぜ」


 港から見える建物のほとんどが赤みがかった石造り。


 空と海の青さに赤い建物と、ペルセフォスとは全く違う風景だ。


「あ~あれはこのあたりの山で取れる石が赤みがかっているからなのさ~。海風にさらされると、さらに赤みが強くなっていい感じの色になるのさ~」


 ほう。じゃあ古い建物ほどいい感じの赤になっているのか。


 ラビコはすでにロングコートは脱ぎ、水着一丁にカエルラスター島で買ったらしい麦わら帽子をかぶっている。俺もジャージのズボンは膝までめくり、上は半袖シャツのみ。というかこれでも暑い。


 さすがに世界でも一番暑い地域らしく、肌に突き刺さる日差しが強烈。


 アンリーナとロゼリィが日焼け止めクリームを必死に塗っている。アプティはいつものバニー。


 俺の愛犬ベスはまぁ元気。しかしケルシィや魔法の国の寒さや、この南国の暑さにもビクともしないなうちの犬。無敵過ぎだろ。



「おお……ロゼリィが薄着だ」


 いつもは厚めの生地の服で肌の露出はほぼさせないロゼリィだが、さすがに南国ではヒラヒラの薄着になっている。


 白い大きな帽子に白いワンピースタイプの服。靴も可愛らしい白い物を選んだようだ。


「あ、あまり見ないで下さい……は、恥ずかしいです……」


 俺が舐め回すようなエロい目でワンピースが風でめくれねぇかな、とお尻付近を見ていたらロゼリィがモジモジし始めた。


 港街ビスブーケの風は俺の声には応えてくれず、ワンピースはピクリともしない。


 ちぇ、何が千里眼だ。ロゼリィの下着一つ拝めやしないじゃねーか。


 あれ、マジで俺いつも以上にエロい方向に思考が向いているな。自重しよう。



「ヌゥゥ……このプレッシャー、弾き返さなくては……!」


 アンリーナが豪華な赤いワンピースに、赤い日傘をクルクル回しながら何やら唸っている。


 彼女にとってロゼリィの豊満なボディから放たれるオーラは、プレッシャーとなりその身に襲いかかってくるらしい。


 まぁ……比べる相手が悪い。


 ロゼリィ相手では全てが焼け石に水だろう。



 なんにせよ本来の目的地、花の国フルフローラに着いた。


 どうやら景色が美しいところらしいし、のんびり観光をしながらおいしい紅茶を探しますかね。








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