第256話 花の国フルフローラへ 7 アンリーナの地の利デート様


 ホテルローズ=ハイドランジェ。



 世界で五本の指に入る高級ホテル。


 設備、サービス全てにおいて世界トップクラスを誇る。



「──特に女性の支持が強くて~雑誌でも何度も特集が組まれるぐらい人気があるね~。値段は高いけど、それ以上のサービスを受けることが出来きて~満足度は最高クラスの評価を毎年得ているとか~」


 とりあえず十四階全て貸し切りということで、各個室に荷物を置いてきた。


 愛犬ベスもカゴから出して部屋に開放。ホテル内は歩かせられないので、俺の部屋で存分に走ってくれ。


 部屋は個室なのだが、広さはおそらく十畳はあるリビングに寝室、シャワールーム完備。部屋内は置いてある物に触るのが恐ろしくなるぐらい高級品で溢れていた。


 とりあえず落ちやすい物や壊しそうな物は収納に入れたが、掘り出して壊すなよ、ベス。



 十四階の何箇所かに共有スペースあり、海側の方向に大きな窓があるところのソファーに座る。


 そこで一旦集まって会議。


 水着魔女ラビコにホテルローズ=ハイドランジェについて聞いてみた。


 つーかここからの景色がもはや絵葉書。


 本当に絵に描いたように美しい景色が眼下に広がっている。ホテル内は冷房がバッチリ効いていてとても快適。



「いや~すっごいね~さすがに数百年続く名家ハイドランジェ家だ~。住む世界が違うね~あっはは~」


 ラビコが立ち上がり窓から景色を楽しんでいる。


 いつものロングコートは脇に抱え、水着一丁。うーん、いつ見てもいい身体してるなぁラビコ。



「ほ、ホテルということで、ジゼリィ=アゼリィでも参考に出来るところはないかと思っていたのですが、そういうレベルじゃないです……」


 左に座る宿の娘ロゼリィがメモ帳を放棄した。


 うん、これはマネ出来るとかそういうレベルじゃない。ペルセフォス王都の高級ホテルでも思ったが、こういう高級なところはジゼリィ=アゼリィとは路線が違う。



「お褒めの言葉、ありがとうございます。嬉しい悲鳴となりますが、こちらのホテルは毎日予約で満室で泊まることすら難しい状態です。ですが会員システムがありまして、会員になれば予約の優先権が得られ、少し泊まりやすくなります」


 商売人アンリーナがパンフレットを見せてくれ、会員システムを説明してくれる。


 そんな状態のホテルの最上級クラスの十四階を全て貸し切ったってかい。


 いつから準備していたんだ、アンリーナ……。


「宿泊だけでなく、日帰り利用の出来るレストラン、ホテル裏にある巨大プール、豪華な温泉施設などもありまして、ご宿泊されなくても当ホテルを楽しむことは出来るようになっていますわ」


 パンフレットを開き、お勧めの施設のページを指してくる。


 すごいな、ホテルに巨大なプールがあるのか。温泉にエステ、遊技場にレストランにカフェ。一日じゃ全部なんて楽しめなさそうだ。




「それでは皆さん! これより自由行動になります! お手元のロイヤルフリーパスを存分に使い、このカエルラスター島とホテルローズ=ハイドランジェをお楽しみ下さい!」


 アンリーナが元気に立ち上がり俺の手を引っ張る。


「では行きましょう師匠。早くしないと夢の時間はあっという間に終わってしまいますわ。いざ、若さゆえの過ちを……!」


 え、悪いことすんの? アンリーナが俺をぐいぐい引っ張りどこぞへと行こうとする。


 バニー娘アプティがついてこようとするが、アンリーナが威嚇。


「ヌッフフ……皆様、チケット……ですわ。くれぐれも愛の園へ旅立つ二人にはお近づきにならないようにお願いしますわ」


 アンリーナが不気味に笑い、女性陣が持つチケットを指す。





「ああ、行ってしまいました。ど、どうしましょうラビコ……」


「ん~……うちの社長はあれでもそこそこ常識あるし、大丈夫じゃないかな~。南の島でテンション上がってアンリーナを襲うとかは……ないでしょ~。結構そういう時はヘタレっぽいし~あっはは~、あ、でも最近社長~欲がたまっているかも~?」


「そ、そうでしょうか……。欲でしたら私に言ってくだされば……」






 俺はアンリーナに引っ張られ、ホテル裏の巨大プール施設へ。


 水着はレンタルで借り、飲み物売り場の前で待つことに。



「あっついなー。ラビコ達はどうしてんのかな……」


 プールはもう大混雑。


 子供と付き添いの親達、カップルなどで休憩スペースの椅子は満席。プールも近寄りたくないぐらいの混雑っぷり。



「師匠ー! お待たせしましたわ!」


 アンリーナが可愛らしい赤いワンピースタイプの水着を来て走ってきた。そして後ろからホテルのスタッフ達が走ってきて、ざざっと素早く白い椅子とテーブルを並べる。


「アンリーナ様、こちらをどうぞ」


「ありがとう。師匠ーお飲み物は何がいいですか?」


 忍者のように現れ、作業が完了するとざざっとスタッフ達が消えていった。


「あ、ああ……オレンジジュースあるかな……」



 アンリーナと二人で楽しむのはいいんだけど、忍者のようなホテルスタッフ達が気になって落ち着けないんですが……。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る