第216話 いざ魔法の国セレスティアへ 2 ラビィコール研究所様


「うっふ~いっぱい食べちゃったな~太らないように気をつけないと~あっはは~」



 買い物、昼食を終え大型商業施設を出る。


 敵情視察とあちこちのお店を食べ歩いたので、みんなお腹がパンパン。


 ラビコが自分の体のラインを手でなぞり、謎のアピールをしてくる。


 そういうエロアピールって、食後のお腹いっぱいのときにするもんじゃないだろ。



「そ、そうですね……浮かれてたくさん食べてしまいましたけど、体型維持に気を配らないと」


 ロゼリィもはっと気づいて軽く体操を始める。


「どうして私はいくら食べても胸に肉がいかないのか。これでは師匠の視線を奪えないですわ……!」


 周りのグラマラスなラビコ、ロゼリィ、アプティ、ハイラを睨みながらアンリーナが唸っている。



 アンリーナをなだめつつ、さすがにさっき買った五人分の防寒着はかさばるので、お城の部屋に帰ることに。





「そうだ~私の研究所がお城の横の道から行けるけど、案内するかい~? 何にもないからすぐ見終わると思うけど~あっはは~」


 街を抜け、ハイラとラビコがいるので顔パスで警備を抜け、お城の敷地に入る。


 お城を囲うの七枚の防壁をぐるぐる回っていると、ラビコが思い出したように言う。


 ああ、そういえば研究所があるんだっけか。


「おお、行ってみたいぞ。もしかしたら泊まるかもしれなかった場所だしな、ぜひ見ておきたい」


 サーズ姫様がいなかったら、ラビコの研究所に泊まるしかなかったもんな。





 お城の大きな正門に入る前に右の方を見ると、整備された石造りの道が続いている。


 警備をしていた騎士さんからカギを受け取り、ラビコを先頭にその道を歩いて行く。



「うわー綺麗……」


 ロゼリィの顔がほわーっとほころぶ。


 しばらく進むとその石造りの立派な道に鉄で作られた大きなアーチが現れ、それをつたうようにバラが生えていた。


 見た目はバラの門。


 脇には花壇が綺麗に整備され、男の俺でも綺麗だなーと見とれてしまうレベル。



「……ひっさびさに来たけど~変わってないな~。よく整備してくれているね~」


 ラビコがちょっと嬉しそうに笑う。


 さすがに久しぶりに訪れた自分の研究所が、整備もされず雑草もっさりだったら悲しいだろうしな。


「はい、ここはサーズ姫様がしっかり管理するようにと騎士達に念を押していますから。私もお花の植え替えをしたことがありますよ」


 ハイラが花壇の一つを指し、自慢してくる。どうにもそこがハイラが植え替えを行った場所らしい。


 サーズ姫様は本当にラビコのことを大事に想っているんだろうな、というのが伝わってくる。


「ふん、あの変態がね~……今度お礼ぐらい言っとくかね~」


 さすがのラビコもいつものように毒を吐かず、照れくさそうにしている。




 綺麗な花達を楽しみながら歩いていると、先に大きな建物が見えてきた。


 石造りの大きな門に、綺麗な彫刻がたくさん入った立派な建物。高さは三階建だろうか、かなり大きいな。


 門の上には立派な鉄のプレートがかけれれていて、ラビィコール研究所と読める。


「なんだよラビコ、かなり立派じゃねーか。一瞬図書館かと思ったぞ」


 落ち着いた周りの雰囲気や建物の感じは、なんとなく図書館を想像させられた。


「あっはは~なんか申し訳ないね~年に一回来るかどうかなのにな~」



 カギを開け中に入ると広く、綺麗な玄関。


 しっかりと管理され、ホコリが全くない。生花も豪華に飾られ、毎日手入れされているのが分かる。


 廊下の先にガラスで覆われた小さな部屋があり、そこにはプランターが並べられ、キャベツが育てられていた。


「キャベツだ……」

「キャベツですね」

「キャベツですわね」

「はい、毎年植えていますよ。うう、さっきから犬が……」


 俺、ロゼリィ、アンリーナが鸚鵡返し。


 本当にキャベツが育っていた……。アプティは全く興味なしのご様子。ベスもキャベツには興味無しで、ハイラの足にまとわりついている。




 キャベツゾーンを抜けると、バスケットコート二面分はありそうな天井の高い広い空間になっていた。


 そうか、外から見たとき三階建てぐらいの高さはあったもんな。本当に何もなく、大理石みたいな豪華な床のひっろい空間。端っこの壁際に申し訳程度にソファーとテーブルがある程度。


「何もねぇ」


 俺が思わず言ってしまった。


「だから言ったろ~何もないって~。何を期待していたんだい~? せいぜいこの広い空間を生かした屋内のレクリエーションが出来る程度かね~」


 突如ベスが大興奮。


 俺はリードを外し自由にしてあげると、元気に広い空間を走り回りだした。犬にとっては何もないのが最高らしいな。



 みんなにはソファーに座って、ベスの気が済むまで待ってもらうことに。


「ベスーそーら取ってこい」


 カゴに入れておいた小さなボールを投げ、ベスと少し遊ぶ。




「かわいい犬なんですねー先生の言うことが分かるんでしょうか」


「どうだろうね~たまにそうとしか思えない行動取っているけど~」


 ハイラとラビコがなにやら話している。離れた場所にいる俺には聞こえないが。



「ペルセフォスにも動物部隊はいますけど、先生とベスちゃんなら部隊のエースになれる実力ありそうですよね」


「あっはは~それどころじゃないよ~。あの二人の実力は今や私を超えているよ~。銀の妖狐より上じゃないかな~なんせ魔王……あ~なんでもないなんでもない。あっはは~」


「ぎ、銀の妖狐!? ラビコ様よりお強いんですか!? そんなふうには見えないですけど……え、魔王?」




 いい感じにベスも疲れたようなのでみんなのところに戻ると、ハイラが何やら驚いている。


「どうしたハイラ。目が丸いぞ」


「い、いえ! お疲れ様です先生!」


 お疲れ様です? 満足気に疲れているのはベスだけだが……はて。



「あっはは~さ~て、もう戻ろうか~明日の準備もしたしさ~」


 何やらハイラがビシっと姿勢を正す。


 俺を見る目が変わったような気がするが、なんだろうか。












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