第215話 いざ魔法の国セレスティアへ 1 買い出しと勝利の握手様


 サーズ姫様と朝ご飯を食べたら、明日魔法の国に行くことになった。


 

 魔法の国セレスティアはペルセフォスの西にある国。


 陸続きなので魔晶列車で繋がっているのか。列車に乗っているだけで行けるなら楽そうだ。


 特急で一日で着くらしい。フォレステイから王都ペルセフォスと同じぐらいの距離ということか。



 明日行くことになる王都セレスティアは緯度的にペルセフォスより上にあるらしく、この時期は気温が三度を下回ることも珍しくないとか。以前行ったお酒の国ケルシィと同じ対策をすればいいらしい。




「気温がマイナスになることもあるから~寒さ対策しないとね~」


 ラビコが水着にロングコートを羽織り、言う。ああ、お前が一番対策が必要だ。あといつもバニー姿のアプティな。寒さ対策をすると揺れが見れなくなるのは大変残念だが。




 朝食を終え、明日の準備の買い出しに出かける。



 ペルセフォス駅直結の大型商業施設。ここならなんでも揃うだろ。


 買い物にはハイラも付いてきた、というか俺にくっついて離れない。格好もいつもの鎧に騎士の制服ではなく、ちょっとかわいらしいヒラヒラのワンピース。


「なんか~一人だけデートの雰囲気出しているんだけど~どういうつもりなのかな~」


 ラビコがピリピリしている。いや、ロゼリィとアンリーナも。アプティはいつもの無表情。ハイラには興味がないようだ。ベスはカゴに入れて持ち歩いている。さすがにお店の中にリードでは入れないしな。


「ちょっとくっつきすぎです、よね……」


 ロゼリィが自分のいつもポジション、俺の左腕をハイラに取られ不安そうにしている。ああ、今のハイラは鎧じゃなく薄いワンピースだから胸がモロに腕にくる。ロゼリィよりは小さめ、ラビコぐらいだろうか。


 そこそこ大きい。



「先生ーほら、あれかわいいですー。あ、お昼はどうします? 先生は何がお好きなんですか?」


「ちっ……小娘が」


 はしゃぐハイラにアンリーナが盛大に舌打ちを繰り返している。


 ま、まぁみんな落ち着いてくれ。ハイラは俺が王都にいるときしか甘えられないから、ここぞとばかりの行動なんだろう。



 何店かお店を周り、各自気に入ったコートやマフラー手袋などの小物も買い揃える。


 まさか魔法の国に行くとは思っていなかったし、ケルシィのときに買った服はソルートンの宿においてあるからなぁ。


 なんとこの費用も国で支払ってくれるとか。ラビコがサーズ姫様から預かったお金で会計を済ます。


「しかし人が多いな。ソルートンとは大違いだ」


「そうだね~人口はソルートンに比べて十倍以上あるだろうね~王都は。若者がどんどん田舎から出てくるからね~」


 会計を終えたラビコが俺の横を歩く。


 王都のこの都会な感じは、刺激が欲しい若者にはたまらなく魅力的だからなぁ。俺はソルートンのほうが好きだけど。


「王都はソルートンとは客層が少し違いますから、それも考慮してメニューや立地、内装なども考えないといけませんね」


 商売人の顔になるアンリーナ。その辺は頼りにしてるぜ。



「お昼は敵情視察とまではいきませんが、王都ペルセフォスで人気のスポットであるこの商業施設の人気のお店のメニューを少し食べ歩いてみましょう」


 アンリーナのその提案乗った。


 俺達は休憩スペースにある長椅子に座り、大型商業施設のパンフレットに顔を寄せ合いお店を周るルートを決める。



 最初に来たのはスープ専門店。


 客層は子供からお年寄りまで幅広い。ランチセットを頼み、他のお客さんの反応をチラ見。あまり美味しいとの声は聞こえないな。


「これはローゼオルだっけか。ピンクのやつ」


「そうだね~王都では結構安く手に入る食材だね~」


 ラビコがスプーンをくるくるさせながら答えてくれる。


 出てきたのはピンク色のスープ。食べてみるが、やはりこのローゼオルって食材は味が淡白だな。特徴が無いというか。


「うーん、やっぱりイケメンボイス兄さんの味には到底及ばないな」


「そうですわね……ただ煮て軽く味を乗せただけですわね。ローゼオルの特徴を生かしたわけでもなく、味も染みてもいない。ソルートンのあのシェフはすごかったですわね。しっかりダシを染み込ませ、味の淡白さを微量の辛味を足すことでうまくまとめていました」


 俺とアンリーナが王都に来る前にイケメンボイス兄さんが作ってくれたローゼオルシチューを思い出して比べていると、ハイラが不思議そうに言ってきた。


「え、これ普通に美味しいですよ? これ以上の物はもう高級レストランに行かないと味わえないと思いますが……」


 申し訳ないが俺の舌はイケメンボイス兄さんの味に心酔していてな。この程度では美味しいとは言えないんだ。



 その後も何店か周り食べてみたが、どれも普通かそれ以下だった。


「これは勝てるな」


「そうですわね。この勝負、楽勝かと思いますわ」


 俺とアンリーナが固く握手をし、勝利を確信した。



「うう、先生ーソルートンのロゼリィさんのお店ってどれだけ美味しいんですか? 私やっぱりソルートンに行って、先生のお側にいたいですー」


 どれを食べても首を縦に振らない俺達を見て、ハイラが不安そうに抱きついてきた。



 大丈夫だハイラ。カフェジゼリィ=アゼリィが出来たら、王都で美味いもん食わしてやるさ。









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