第126話 そうだ、王都へ行こう! 21 魔晶車とハイラの倍率様
「着いたら絶対に顔を出せと~他人には理解出来ない性癖を持った女に言われているから~都市観光は後回しでいいかな~?」
ラビコが何重もの頑丈な防壁に囲まれた背の高い建物を指す。
やっぱりあれがお城なのか。いいねーザ・ファンタジーだぜ。
力を授けてくれるクリスタルとか、今は持っていないけど、後半に手に入るなんたらの鍵で開けることの出来る宝箱とかあるんだろ? ないの……あ、そう。
「それ、俺達も行ったらダメなのかな。行けるんならラビコの特権生かしてついて行きたいんだが。こういうチャンス滅多に無いし」
こんな大きな都市の大きなお城になんて、凡人の俺なんかが二度と入るチャンスなさそうだし。
俺の提案にロゼリィが鼻息荒く頷いている。目がキラッキラしていて、憧れのお城オーラをばりばり感じる。
「ん~実はね、社長は出来たら一緒に連れてきて欲しいと言われていてね~そのつもりなんだけど~」
そう言ってラビコはバニー娘アプティに視線を送る。
う、そうか……アプティは色々問題ありそうか。
「アプティ、約束は覚えているな」
「はい……マスター……私の目的はマスターの側にいること、マスターを守ること。それ以外のことに興味はありません……」
ロゼリィが不思議そうな顔をする中、俺はアプティに釘を刺す。
「ま~社長との約束を破るようなことはしないか~。じゃあみんなで行こうか~」
「やりました! 憧れの王都のお城です……! 王様とお姫様にも会えるんですか!? すごいすごい……! 一般人の私がこんないい目にあえるとか奇跡です」
ロゼリィのテンションの限界が突破。嬉しそうだなぁ、ロゼリィ。
公園から大通りに出る。
しかしどこ見ても人人人……もしかして王都に人口集中してんのかね。
そりゃーそうか、明らかに文化レベルが違うもんな。ホラ、見ろよ車が走っている……車!? 俺は目を疑ったが、馬車ではなく車が走っている。
馬車の人が乗る部分をもう少し縦長にして、四輪が安定するようにしている。
馬車よりスピードが出るからだろうな。なんとなく千九百年代初頭のガソリン車が出始めた頃の、アンティークなデザインに近いか。格好いいな、あれ。どうやって動いているんだろうか。
「ラ、ラビコ。車が走っているが……」
「あっはは~そうさ~王都では魔晶石をエネルギーに走る車があるのさ~驚いたかい社長~。ホラ、魔晶列車の車版さ~個人で買うには相当にお高いけどね~」
へぇ……乗り物、いいなぁ。この異世界は免許とかなさそうだし、俺の年齢でも運転してもいいのかなぁ。欲しいなぁ……高いのかぁ。
商店街を通ると、ソルートンでは見たことのない物がたくさん売っているな。値段はソルートン感覚より倍近いか。
食べ物、雑貨、家具、本、服……これは旅行で来ても一日程度じゃ全部は見れないような数のお店だな。もうロゼリィがヨダレたらす勢いで口を開け、キョロキョロ見回している。
食材のお店あったら見て行きたいな。
新たなメニュー開発のきっかけになるかもしれんし。
食べ物の露店もありあちこちからいい匂いがする。もうすぐお昼か……ベスがカゴの中でお腹すいたアピールを始めた。もうちょい待ってくれ。
「ラビコ、街のあちこちに貼ってあるポスターのなんたらリッターってなんだ?」
駅にも多く同じ物を見たし、公園でも宣伝ポスターを見た。
街の各所に貼ってあるこれが車輪のレースのやつなのだろうか。
「ん~それがハイラが出る飛車輪レースさ~。ウェントスリッターっていう毎年開かれている歴史あるレースさ~過去にはあの変態性癖女も優勝しているよ~。あのレースで勝つことは騎士にとってものすごい名誉なことなのさ~」
へぇーあのお姫様も参加するようなレースなのか。都市全体が盛り上がっている雰囲気もすごいな。
「このレースはね~国公認で賭けが行われているのさ~。たまに波乱のレースになると、一攫千金なんてのも出るんだよ~あっはは」
金賭けやってんのか、そりゃー住民は盛り上がるわな。
トラブルも起きそうだけど、それ含め盛り上がる大会ってことか。
「へー俺も賭けてみようかな……」
「私……あちこちの予想屋さんで一番倍率がすごいんです……わ、私に賭けないほうが……いいですよ……すん」
やっべぇ……ハイラの悪い話踏んじまった……。
チラと予想をしている人の持っている新聞みたいのを見たら、『ハイライン=ベクトール 倍率一万』と書いてある。い、一万……一Gが一万Gになるのか……それぐらい可能性が低いってことか。
「歴史上最高倍率らしいですよー……はは……悪い意味で私の名前、有名になっちゃいましたーははははは……」
一番人気は一.二倍、二番は三倍、そしてハイラは一万倍……こりゃー特訓のしがいがあるってもんだ。
俺はラビコに金借りてでもハイラに賭けるぞ。
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