第127話 そうだ、王都へ行こう! 22 お城とハイラを見下す男様


 お城に近づくにつれ、白を基調とした装備をした騎士達が増えてきた。




「なぁ……ラビコ。すっげー怪しい人を見る目が俺に向けられているんだが」



「あっはは~そりゃ~ね~。もうここは一般人は入れないところだからね~」



 俺達は街を抜け、お城の敷地に入っている。




 まず驚いたのが、遠くから見えていた巨大な防壁。


 これが間近で見ると圧倒されるぐらい巨大で分厚いものだった。


 高さは五階建ての学校の校舎ぐらいあり、頑丈そうな石と鉄のような金属で出来ている。これが二百メートルぐらいの間隔で建てられていて、合計七枚の防壁がお城を覆っている。


 防壁の門を一つ抜けると、次の防壁の門はぐるっと向こう側に回らないといけない。なんか迷子のネズミのような動きをしないとお城にはたどり着けない。



 一つ目の防壁を抜けたところに巨大な建物があり、歳の若い人がたくさんいるなぁと思ったら、それが学校なんだと。騎士になる為の訓練を日々繰り返し、才能のある者だけが採用されるとか。それはそれは厳しい世界だそうだ。俺には無理。


 ハイラはこの学校で優秀な成績を収め、見事お姫様率いるブランネルジュ隊に抜擢されたそうだ。


 なんかハイラって見た目すごそうに見えないが、相当のエリート様なんだなぁ。






「ハイラ、学校時代モテたろ?」



 見た目良し、頭脳明晰、才能あり、しかもこの国を代表するブランネルジュ隊に入隊。嫌でも男が寄ってきそうだぞ。


「え、えええ!? いえいえいえ! 全く全然微塵も兆しもありませんでし……た。うう、華やかな世界は私には縁遠かったですー」


 あれ、そうなのか。みんな見る目がねぇなぁ。


「こんなかわいいハイラが同じ学校にいたら、俺はどうにか仲良くなれないか画策しただろうなぁ」


「あ、ああ……そ、そんな……ひいっ!」


 ハイラが顔真っ赤でしゃがみ込んでしまった。


 あれ、どうしたんだ。



「はぁ……社長さ~何人の女の子にそうやって手を出すつもりなんだい~。とりあえずリング無し組には一歩引いてもらうけど~」


 褒めただけだろ……。


 あとリングを事あるごとにかざすのはやめろ、三人とも。


 なんの三銃士なんだ、お前等。






 一枚目の防壁の手前に検問所があり、一般人はまずここで止められる。



 俺達はラビコ特権で入れたけど、お城の敷地に入るって結構なことなんだな。


 ロゼリィはさっきから興奮しっぱなし。お城、お城! 呟いて不審者のごとくキョロッキョロ首を振っている。アプティは興味なし、無表情で俺の一歩後ろを歩いている。ベスはカゴの中、走り回られたら困るし。







「おや、ハイラ。なんだ逃げ出したのかと思っていたぞ。見たかあの倍率……歴史上最高だとよ! よかったな、歴史に名前が残ったじゃないか。ははは!」




 ハイラに男の騎士が話しかけている。


 ハイラは下を向き、怯えたような態度。



「これはラビコ様。こんな三下をお迎えにだしてしまい、申し訳ありません。たまたま遠征で出ていたものでご迷惑をお掛けしました」


 男はラビコに深々と頭を下げ、敬礼する。


「や~メラノス~出世街道驀進中かい~?」


「はいっ、幸運にも。本日はラビコ様のご機嫌もよろしいようで、このメラノス心が躍っております」


 男は俺にギンと目線を向けてきた。


 かなり敵意がこもっているなぁ。



「君は……どなたかな。一般人はお帰り願いたいが」



「あっはは~彼等は私の大事な友人さ~」


 ラビコの言葉に男は驚き、きつめに俺を睨んで来た。



「友人……それは失礼を。警備上、あまりウロウロされないよう願いたい」


 そう言うと、ラビコに深々と頭を下げ向こうへ歩いていく。







「なんだ、ありゃ。あからさまな男だな」


「あはは~態度はあれだけど、とても優秀な男さ~今回のレースの優勝候補だしね~」


 優勝候補、ようするにハイラのライバルになるのか。


 ハイラは下を向いたまま震えている。なるほど、あの態度、ハイラが苦手そうな人だよな。俺もああいう人を見下すやつ、好かんけど。



「ハイラ、顔を上げろ。戦う前から負け犬根性でどうする。お前は俺が必ず勝たせてやる、周りは気にするな俺を見ろ、俺を信じろ」


「は、はい……すいません。いっつも怒られてバカにされていたもので……」


 ったく、俺のハイラを悪く言う奴は許せねぇなぁ。


 このレースでハイラを見る目を変えてやる、みてろよ。



「彼~志望していたブランネルジュ隊に入れなかったんだよね~。そしてハイラが入隊、気に食わないんだろうね~。実力はあるのに小さい男さ~うちの社長のつめの垢でも飲ませてやりたいよ~あはは」


 水着魔女ラビコがニヤニヤ顔で言う。ほう、なるほど。プライド高そうな男だしなぁ。



「お願いします先生……! 私勝ちたいです……見返したいです……!……うう……」


 ハイラが泣いてしまった。


 その悔し涙、俺が笑顔の涙に変えてやる。



 俺を信じろ、あいつの鼻へし折ってやるさ。





「任せろ、俺のハイラを泣かせた男は絶対に許せねぇ。やるぞ、ハイラ。明日から特訓だ!」












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